80'sアイドル再燃! 映画&ドラマ主題歌コンピ2種!
記憶に新しいNHK朝ドラ「あまちゃん」の一大ブーム。あれ以来、一般の人たちの間でも80年代アイドルの魅力が見直され、公式コンピ「春子の部屋」(こちらで紹介)が何とオリコンでトップ10入りを果たす大ヒットになるなど、このクラスでは異例ともいえる実績を記録しました。
その余波を受け、さまざまなメディアで80年代アイドルの特集が組まれたり、VTRだけでなく現在のナマ歌を披露する機会が与えられたり、その勢いはまだまだ続いているようで、アイドルファンにとっては近年まれに見るウレシイ状況となっております。
とはいってもCD市場では、昔から根強く支持されてきたい80年代女性アイドル。ブームになるずっと前から需要が高く、ビックリするようなマイナーなアイドルでも復刻が進んでいましたから、取り立てて騒がれてはいない様子ですが、決して無関係というワケではなく、ここに来てひと工夫されたアイドルコンピの発売が相次いでいます。
コアファン向けの要素も加わったビクターの「アイドルポップス黄金時代」(こちらで紹介)もオススメですが、今月発売のソニーの2タイトルも手前ミソながら見逃せません!
そう、80年代女性アイドルに欠かせなかった映画とドラマという2大要素を切り口にした「 アイドル・ムービー・ヒッツ 」「 アイドル・ドラマ・ヒッツ 」のリリースです。
「あまちゃん」では、小泉今日子と薬師丸ひろ子というアイドルでも極端な異端児2人が中心でしたが、ここでは王道路線のアイドルがメイン。主演作で主題歌も歌うという作品を中心に、正統派アイドルや、女優系アイドルがそろい踏みですので、イチオシの映画版を中心に、簡単にご紹介しましょう。
まずは「 アイドル・ムービー・ヒッツ 」。80年代アイドルNo.1と言えばやっぱり松田聖子ですが、演技ではレコード会社の先輩・百恵ちゃんや事務所の先輩・淳子のようにはいかず、大根ぶりが批判されたものです。
しかし、ここに収録された「プルメリアの伝説~天国のキッス」「夏服のイヴ」ともに映画も歌も相乗効果で大ヒット。もう1人の女王・中森明菜が80年代は「愛・旅立ち」だけの出演に終わった(共演者と歌った劇中歌は未レコード化)こともあって、聖子が連綿と続くアイドル映画の系譜を絶やすことなく孤軍奮闘したことに異論を唱える人はいないでしょう。
なお、淳子、聖子と続いたサンミュージック制作映画は後輩の有望株・早見優に引き継がれ「キッズ」(ここには主題歌「PASSION」を収録)が公開されましたが、二人ほどに成功しなかったのが残念な限りです。
また、1枚看板というより、セットでのプロモーションやユニット、シリーズものが多かったのも80年代アイドル映画の特徴ではなかったでしょうか。
メディアミックス、セット売りに定評があった角川家からは、長女のドル箱・薬師丸さんこそ入っていないものの、薬師丸作品との同時上映でブレイクした原田知世のナンバー1ヒット「天国にいちばん近い島」と、デビューシングルからしてアニメ主題歌だった渡辺典子の手塚アニメ主題歌「火の鳥」を収録。
一方、3人娘でも欠けずにコンプリート収録となったのは「スケバン刑事」シリーズ主演の3人。初代の斉藤由貴は映画版はありませんでしたがさすが東宝ですので映画女優としての実績多し。このCDでは「恋する女たち」から「MAY」がチョイスされています。 2代目の南野陽子は映画版の後、映画女優としても花開き、ここには少女漫画の名作「はいからさんが通る」(阿部ちゃんの俳優デビュー作でもあります)を収録。3代目の浅香唯だけが「スケバン刑事」の主題歌「Believe Again」が入っています。
また、3人娘でも女たのきんと呼ばれ鳴り物入りのデビューを飾ったパンジーからは三井比佐子が漏れておりますが、パンジー唯一の主演作「夏の秘密」の主題歌として真鍋ちえみ「ナイトトレイン・美少女」、北原佐和子が歌った大林宣彦監督の尾道三部作第一作「転校生」のイメージソング「マイ・ボーイフレンド」が選ばれております。
尾道三部作といえば、三作目は「さびしんぼう」(名作です!)ですが、その映画に主演し1人何役もこなしていたのが富田靖子。ここではショパンのピアノ曲をベースにした同名主題歌が聴けます。
そんな富田靖子のデビュー作といえば「アイコ十六歳」ですが、そのオーディションにも参加した岡田有希子が当初は出演予定だったといわれる映画が「青春共和国」。主題歌は主演の安田成美で「トロピカル・ミステリー」が入っています。
なお、このCDで「あまちゃん」フリークに注目してほしいのが、沢口靖子のデビュー曲「潮騒の詩」(「刑事物語3 潮騒の詩」)と、唯一70年代となる百恵ちゃんの「少年の海 -出逢い-」(「潮騒」)。
前者はその歌唱力やタイトルから鈴鹿ひろ美の本当のモデルではないかと言われておりますし、後者は天野アキと種市先輩によるオマージュシーンもありましたし、それは「潮騒のメモリー」の冒頭の歌詞の元になっていますのでね。
もう1つの「 アイドル・ドラマ・ヒッツ 」は文字通りテレビドラマの主題歌、挿入歌をコンパイルしたものですが、有料につき全部見るのは難しかった映画に比べると、ぐんと親しみやすいものなので、懐かしがる人が多そう。
別格として、70年代ではありますが百恵ちゃん(「赤い衝撃」)も入っていますが、斉藤由貴、南野陽子の「スケバン刑事」(「白い炎」「悲しみモニュメント」)から松本伊代の「私は負けない! -ガンと闘う少女-」(「時に愛は」)、まで、主演も主題歌もこなしたアイドルに加え、松田聖子「蒼いフォトグラフ」(「青が散る」)、本田美奈子「Oneway Generation」(「パパはニュースキャスター」)といった主題歌に徹したアイドルも多く、映画の方とはやや異なる印象。
ドラマとリンクした伊藤智恵理のデビュー曲「パラダイス・ウォーカー」(「キスより簡単」)のような80年代っぽいタイアップや、立花理佐「疑問」(「毎度おさわがせします III」)のような性教育かエロかで物議を醸したホンネ系ドラマ、レコード界のみならずドラマ界も席巻して常識を変えたおニャン子クラブなど、この時代ならでのキャスティングや主題歌も堪能できるのではないかと思います。
あと、百恵ちゃんもそうでしたが、ドラマのタイアップヒットの概念が薄かった80年代頭までは、主題歌をレギュラーシングルとしてリリースするケースが少なく、三原順子がJUNKO&CHEER LEADERSで出した「Let's go! 青春」のように、歌は結構知られているのにレコードとしてはヒットはしなかったかったことも思い出されます。
マニアの皆さんにとっては2タイトルとも音源的に珍しくはないでしょうが、こういうコンピ盤なら、背景にまで思いを馳せられたり、当時の流行や傾向にまで気づけたりすることもありますので、ぜひお聴きいただければと思います。
ここに収録された映画やドラマも結構DVD化されていますから、気になったものは映像も併せて楽しんでみるのもオススメですが、まずは映画もドラマも最も成功したアイドルNo.1・百恵ちゃんからスタートしてみてはどうでしょう。
今刊行中の「 隔週刊 山口百恵「赤いシリーズ」DVDマガジン 」なら詳細な解説も満載で、リアルタイムを知らない人もバッチリ楽しめること請け合い。ドラマで百恵ちゃんの魅力と魔力を実感したら、お次は超豪華な「山口百恵 映画全集 1974-1980 Blu-ray BOX」(こちらで紹介)へとお進みください!
(2014.3.4)