78年を席巻した“虹のデュエット”の音源をコンプリート!
今年は畑中葉子ソロデビュー35周年ということでなんとBOX「 後から前から BOX[ソロデビュー35th Anniversary Special] 」のリリースが決定するなど、巷では結構な盛り上がりを見せているようですが(今回「悪女」「すずめ」といったカバー曲も初CD化となりますので、中島みゆきサンのコレクターの方は要チェックですぞ!)、ついに平尾先生とのデュエット作品もコンプリートになるそうです!
それが、めでたく連名でG☆Bシリーズに加わることになった「 ゴールデン☆ベスト 平尾昌晃/畑中葉子 」!
2007年に出た「 GOLDEN☆BEST 」では、当初「カナダからの手紙/揺れる二人」「エーゲ海の旅/恋ごころ」 「サンフランシスコ行き/赤いレインコート」「ヨーロッパでさよなら/東京ラブ・ストーリー」というデュエットシングルの両面の収録が予定されていましたがフタを開けるとA面のみ…。ぬか喜びしてしまった分、非常に残念な気分になったものでしたが、ここに来てようやく実現するのですね。
アイドル人気を博したロカビリー歌手を経て、作曲家として活躍。歌謡曲を中心に大ヒットを連発させ、若くしてレコード大賞作家となったことでも知られる平尾先生ですが、新たなジャンルを切り開いた小柳ルミ子や、自ら発掘したアグネス・チャンをはじめアイドル系にも強かったんですよね。
当然ルックス的にも普通のオジサン作曲家とは一線を画していましたし、いろんな番組の審査員席でもひときわ目立っていた平尾さんですが、歌謡教室の門下生であった畑中葉子さんのデビューに際し、ともに歌ったのが「カナダからの手紙」でした。
日本アレンジャー協会主催「第3回空の音楽祭」でグランプリを受賞したという触れ込みでしたが、78年初頭に発売するやいなや有線放送やラジオで火が付くとともに、テレビ出演を重ねるごとにチャートを上昇。またたく間にオリコン1位を獲得。それもあのピンク・レディーの「UFO」から奪取したのですから、どれほどスゴかったのかが分かるでしょう。
まだ清純派だった葉子さんの艶やかボイスと、もみあげとともに男の色香を放つ平尾先生のハーモニーは、ホントに斬新でしたけど、そういえば平尾さんは同時期、百恵ちゃんの臨発シングル「赤い絆-レッド・センセーション-」を作曲していて、それもデュエットヒットの大きな後押しになった気がします。
さて、当時は大ヒット曲と言えばまさに流行歌で、大人も子どもも知っているのが当たり前という歌謡曲黄金時代。しかもカラオケが酒場から家庭へと普及したはしりの時期で、家庭用カラオケ機も続々登場するなど、日本中で大ブームとなっていた頃です。
特にカラオケ機に参入したビクターは力の入れようがハンパなくって、ビクター・オーケストラによる淳子やヒロリン、PLら所属歌手のオリジナルカラオケ(と言ってもガイドメロディー入り)のLPやシングルを出していたほどですから、平尾昌晃・畑中葉子というコンビは戦略的な意味でもカラオケヒットを前提に登場したと言えるでしょう。
女性用(唄・平尾昌晃)、男性用(唄・畑中葉子)という“あなたもスターと夢のデュエットが出来るカラオケ・レコード”のシングルが出た時にはビックリして思わず買ってしまったほどですが、個人的な思い出を振り返っても、当時は高田みづえが宣伝していたパナピックをお年玉で買うべきかどうか本気で悩んでいましたし、小学生の間でも石川さゆりの「津軽海峡冬景色」や「能登半島」(地元ではご当地ソングの「暖流」も大人気でした。)をお楽しみ会で歌う女子がいたり、男子の間でも「演歌チャンチャカチャン」が大流行していたり、この年の差デュエットを受け入れるにも十分な土壌があったんですよね。
というワケで国民的ともいえる大ヒットを記録し、1作限定だったというデュオは1年限定に延長。
橋本淳さんが自らの代表作「ブルー・ライト・ヨコハマ」と同じ書き出しにした第2弾「エーゲ海の旅」は、世を席巻する電通仕切り企画の最初だったのか、単なる偶然だったのかよく分かりませんが、なかなかの佳曲だったのにスマッシュヒットで終わってしまいました…。
それでも1年間にシングル4枚、オリジナルアルバム2枚のレコードを残し、海外シリーズ旅情四部作はレコード大賞の企画賞を受賞。活動のフィナーレを飾るように紅白歌合戦にも出場。いまだに人々の記憶に残るデュエットとして、カラオケでも親しまれています。
今回の2枚組ベストはその2枚のアルバム、すなわちシングルの大ヒットを受けた「カナダからの手紙」と、昭和53年度文化庁芸術祭参加作品「サンフランシスコ物語」をベースに構成。
それぞれのディスクにシングル曲、カラオケなどを散らして盛り込むほか、「生命ある限り 吉田正大全集」「君の唇に色あせぬ言葉を 阿久悠1968-1978」というLP-BOXのためにレコーディングされた「いつでも夢を」「また逢う日まで」も収録されます。
コンプリートいうことなので、95年にJ-POPS Dance Re-Mixシリーズの1枚として出たマキシシングル音源「カナダからの手紙(CANADUB)」「カナダからの手紙(JUPITER MIX)」も入るはずですから、コレはやはりコレクションしておきたいですね。
なお、2人は基本的に平尾先生の自作品をレパートリーにしていましたが、2枚ともアクセント的に他の方が作曲した作品も入っております。中でも注目したいのがファーストアルバムで歌ったブレッド&バターのカバー「傷だらけの軽井沢」「愛すべき僕たち」。
オリジナルの多くを作詞した橋本淳さんの縁で収録されたと思われますが、この2曲はそう、筒美京平作品なのです。であるからして、筒美フリークの皆さんもぜひ、この異色カバーをお聴きになってはいかがでしょう。
(2014.7.29)