追悼盤として22年前のベストを一新し、SHM-CD再発!
今年の3月末、潤子さんの無期限休養のニュースに続いて、俊さんの突然の訃報…。とにかく愕然とするばかりでしたが、哀悼の意を込め俊さんの曲の中でも大好きな「フィッシュ・アンド・チップス」や「ファッショナブル・ラヴァー」を聴いていると、悲しくともやっぱり心が躍り出してしまったり。
ハイ・ファイ・セットが遺してくれた素晴らしいうたたちは永遠なのだから、これからも大切に次代へと聴き継いでていこうと誓ったことでした。
赤い鳥の解散とともにスタートし、75年にレコードデビューを果たしたハイ・ファイ・セットは、92年までの長いキャリア(正式な解散は94年)で、アルファ、東芝EMI、CBS・ソニーと3つのレコード会社に在籍。
アルファのレコードは東芝EMIから販売されていたので、当時は移籍した感覚は薄かったのですけど、アルファがソニーから販売されている今となっては、この認識の方がイロイロと分かりやすいと思います。
旧譜もいったんはすべてCD化されておりましたし、アルファ時代の大ヒットアルバム「ファッショナブル・ラヴァー」(こちらで紹介)や「ラブ・コレクション」は単品ブルスペ2でも再発。
現在でもハイ・ファイ・セットのシングル曲は、AB面がソニーの通販BOX「 ハイ・ファイ・セット GIFT BOX 」やMEG-CDで聴けたり、A面のみだと「GOLDEN☆BEST コンプリート・シングルコレクション」(こちらで紹介)で網羅されたり、いつでも入手可能です。
アルバム曲にしても、アルファ時代はオール・ソングス・コレクションの「アルファミュージック編 1975〜1978」(こちらで紹介)でコンプリートされ、ソニー時代も前述のBOXなどでちょこちょこ聴けていたのですが、約5年の東芝EMI時代だけはユーミン作品が「 GOLDEN☆BEST/ハイ・ファイ・セット 荒井由実・松任谷由実・杉真理作品集 」で聴けるぐらいで、ダウンロードでは入手できるものの正規パッケージ盤はすべて廃盤になっていたのです。
そこに今回、追悼盤として92年の「ベスト・コレクション」をSHM-CDの「 ベスト・コレクション 」としてリニューアル。デジタルリマスタリングの上、新装ジャケットでリイシューするというニュース。
コレもiTunesなどでダウンロードできるワケですけど、22年ぶりの再発ですし、市販品でEMI時代の単独ベストはそれ以来となるものですから、とても喜ばしいことではないかと思います。
東芝時代のハイ・ファイ・セットは、メンバー自身がアルバムプロデュースに携わり、一層ソフィストケートされた世界を展開。当初からのニューミュージック路線もありますが、休養を経てコーラスグループの原点へと回帰。ジャジーな方向へと本格的に進んでいった時代です。
「燃える秋」「ラブストーリーはこれから」といった東芝時代の代表曲と言える映画主題歌やCMソングをはじめ、ユーミンの名曲カバー「DESTINY」「最後の春休み」「緑の町に舞い降りて」、尾崎亜美作品「流れ星」や南佳孝作品「キャサリン」も素敵ですが、特筆すべきはヴォーカリーズスタイルをメインにした4ビートジャズ。
マンハッタン・トランスファーからランバート・ヘンドリックス&ロスを意識した4ビートジャズは、唸るほど本格的で「日本にもこういう素晴らしいコーラスグループがいます!」と胸を張って言える仕上がり。
「ハロー MR.TELEPHONE」「過去からのディスタントコール」 「NOVEMBER RAIN」「心離れるころ」「MISS YOU」などリカット曲中心ではありますが、佐藤允彦プロデュースの4ビート3部作アルバムからのナンバーこそ東芝EMI時代の真髄、ハイ・ファイ・セットの真骨頂でありましょう。
ただセールス的には成功したとは言えず、この後ソニーに移籍し売れ線シティポップスへのイメージチェンジを図ってしまうワケで、ステージ以外ではこの路線が薄れてしまったのが残念なことでした。
というような流れもあり、音盤的にも埋もれてしまったような東芝EMI時代のハイ・ファイ・セットですが、この追悼盤を機に正当な再評価が進み、ソニー時代も含めアルバム再発へとつながればいいなと思っております。
売れなければどうしようもないことではありますが、カタログに生き続けてほしい名盤ぞろいですのでね。
(2014.5.14)