うたの力が感じられる、2枚組の定番名曲コンピ!
この世で生きている限り、いろんなことが起こります。いっとき、それぞれが良く見えたり悪く思えたりしても、すべてはみな同じ。流れてゆく車窓の景色のように映っては消え、この世で生きている限り通り過ぎてゆくもののような気がします。
だから一つ一つを精一杯やったのならばそれでいい、うれしいことも悲しいこともいちいち気にしないと決めてはいるのですが、それでもつらいことや苦しいことが続いてしまうと、ついネガティブな思いにとらわれそうになったり、心ない出来事に傷ついたり。同調はせずとも、やりきれなくなってしまうときがあります。
そんなときに心がけているのが、ただ一人、そっとこころをすませてみること。そうすれば、あの大好きなうたたちの旋律が流れてきて、しくしくと痛む傷を包み込んでくれるのです。胸の奥の方にたまった澱を取り払ってくれるのです。
逆に、楽しいときやうれしいときにそうすれば、よろこびは倍になってくれますけれど、多かれ少なかれ、ほとんどの人がそういう経験をお持ちではないでしょうか。
さて、そんな心に流れる旋律が広く知られたヒット曲の場合、その思いは個人の思いを飛び越え共有、共感、共鳴という広がりを生み、心のつながりや結びつきを強くしてくれます。
同じ学舎で一緒に聴いたうた、同じ時代に聴いていたうた、世代を超えて聴き継がれてきたうた…数多ある流行歌の中でもスタンダードや名曲と呼ばれ、多くの人の胸に残るうたは、時には知らない同士や、亡き人と結ぶ架け橋になったり、奇跡のような離れ業をやってのけたりするのです。
その思いは年を重ねていけばいくほど、別れが多くなれば多くなるほど、実感を増してゆくようですが、そういう思いをはっきり認識できるのが、心の琴線に触れる40曲を収録したという2枚組の名曲コンピ「 心に響く旋律 」。
生協などのチャネルではかなりの売れ行きを記録しているという「心に響く唄」(こちらで紹介)に続くシリーズ第2弾です。
内容は、前作同様に70年代から80年代が中心。60年代も一部入ってはいますが、ヴィレッジ・シンガーズ「亜麻色の髪の乙女」、ザ・タイガース「花の首飾り」と歌い継がれているナンバーばかりなので、幅広い世代の心に響く選曲となっています。
メインと言えるのがフォーク系で、よしだたくろう「旅の宿」、かぐや姫「神田川」、山本コウタローとウィークエンド「岬めぐり」、グレープ「精霊流し」、ふきのとう「風来坊」、小椋佳「めまい」、因幡晃「わかって下さい」、丸山圭子「どうぞこのまま」、松山千春「旅立ち」といったシンガー・ソングライター勢の自作自演曲が勢ぞろい。中には、アリス「今はもうだれも」や五輪真弓「さよならだけは言わないで」、岸田智史「きみの朝」のようにヒットを狙って成功したカバーや路線変更ソングもありますし、フォークの流れを発展させたニューミュージック系では渡辺真知子「迷い道」や八神純子「思い出は美しすぎて」みたいに新時代の女性シンガー・ソングライターも押さえられています。
また、当時はまだ職業作家の先生方が主流の時代でしたが、その方面からは堺正章「さらば恋人」、ペドロ & カプリシャス「ジョニィへの伝言」、松崎しげる「愛のメモリー」といった歌唱力抜群の面々に加え、あべ静江「みずいろの手紙」、太田裕美「九月の雨」、キャンディーズ「微笑がえし」などのアイドル勢も華を添えています。
みんながお茶の間でテレビを見ていた時代、岩崎宏美「聖母たちのララバイ」、中村雅俊「心の色」といったテレビ主題歌から生まれたメガヒットも忘れてはなりません。
これらフォーク・ニューミュージックと歌謡曲という2つの流れは次第に融合していくわけですが、そこからは小椋佳による布施明「シクラメンのかほり」、中島みゆきによる研ナオコ「かもめはかもめ」、谷村新司による山口百恵「いい日 旅立ち」、桑田佳祐による高田みづえ「私はピアノ」、ユーミンによる松田聖子「瞳はダイアモンド」というカバーも含めたラインアップ。なお、本来から作家志向だったというユーミンの力量は、ハイ・ファイ・セット「海を見ていた午後」やブレッド&バター「あの頃のまま」でも確認できるでしょう。
個人的には、ミュージックフェアのような南沙織「哀愁のページ」とよしだたくろう&かまやつひろし「シンシア」の同時収録がヒジョーにウレシイのですが、それはさておき、どんなチャネルでもこういうコンピ盤が一般の人々の目にとまるとともに、うたの力を思い出すきっかけになってくれることを願っています。たったそれだけの自助努力で、この世はもっと生きやすくなれると思っていますから。むろん動画サイトではなく、定番CDや正式な配信のもとで聴かれることが前提ですけどね。
(2014.2.27)