サンミュージックの実力派、サードが初CD化!
この年の新人女性アイドルはポテンシャルの高い個性派ぞろいでしたが、歴史に残る花の82年組の翌年とあって、あおりを受けてしまったのも事実。
幼少の頃からコンテスト荒らしとして有名だったという桑田さんも同様で、ビジュアルよりも歌唱力重視のアイドルを輩出した「東芝EMIタレントスカウトキャラバン」第3回優勝者として、事務所のみならずレコード会社からのプッシュも大きかったのにもかかわらず、思うような成果が残せませんでした。
新人ナンバー1と呼ばれた歌唱力を引っさげ、成功が約束されたアイドルCMの王道・グリコという強力なタイアップもついていたのですが…。
とはいえ、近年はCDでもちゃんと聴けるようになっていて、ベスト盤「 ゴールデン☆ベスト 」が再発されているほか、シングルはMEG-CD化。
EMIがユニバーサルに吸収された後も、かつて単品で紙ジャケ化されていた最初の2枚のアルバムがお買い得2for1シリーズ(こちらで紹介)の「 ファースト・キス+ときめき 」としてリリースされるなど、ワリと順当な復刻がなされ、当時よりも高い再評価を得ているようです。
そんな桑田さんですが、個人的には、売れなかったのは楽曲のせいだと確信してたりして。同感だという人はきっと多いのではと思いますが、ちょっと当時の思いを語っておきますと…大多数の人と同じく桑田さんのルックスはタイプではなく、最初に「明星」のグラビアで見た時はむしろ掟破りのキワモノのように感じたものでした。
しかしですね、そのクールな歌声に触れてからは「すわ、高田みづえの再来か!」と釘付けになったのですね。
かつてティーンエイジャーだった頃のみづえさんには、歌の上手さを鼻にかけたよう雰囲気があり、それが歌うときの姿勢に出ていて、少女的なエゴと重なりいい意味で独特の魅力を放っていました。当時はまだみづえさんも現役でしたが、落ち目も経験した後は殊勝になっていて、そういう魅力は失われていたのです。
それが桑田さんには見事にある! そう感じてコーフンしたものでした。ルックスを歌でカバーできる実力派アイドル、初期の高田みづえ路線でイケルと思ったのですが、残念なことに楽曲が合っていなかった…。
確かに、イメージ的にはブリッコとは対極に位置する少女のホンネ路線で行くしかなかったのでしょうが、中森明菜の出世作「少女A」を手がけた売野雅勇+芹澤廣明コンビによるマイナー調の踏襲作では、桑田靖子を魅力的に見せられるとは思えませんでした。しかもそれが3部作も続いてしまうなんて…。
それでもセカンドアルバムでは来生えつこ+来生たかおの姉弟ヒットメーカーを起用し、明るく颯爽としたイメチェンの片鱗を見せ、2年目の84年新春に放った第4弾シングル「マイ・ジョイフル・ハート」で大きくシフト。
この来生姉弟による爽やかな大名曲で大きくジャンプアップできると思いきや、年度が変わったサンミュージックでは桑田さんのプッシュは終了し、期待の正統派・岡田有希子に社運を賭けていたのでした…。
なんだかとてもザンネンですが、そういうこともあって2年目の露出がぐんと減少してしまった桑田さん。
シングルもアルバムも世の印象には残ってないようなのですが、ここに来てその「マイ・ジョイフル・ハート」を含む84年のサードアルバムが初CD化となります!
アルバム未収録だった「たそがれステーション」「愛はひとつだけ」というシングルB面2曲をボーナストラックとして加えた「 バケーション +2 」として!
ただしラグジュアリー歌謡シリーズ(こちらで紹介)のラインアップなので、タワーレコード&ディスクユニオンの限定販売。であるからして、ちとお高い価格設定となっていますが、永年待ち望んでいたファンからすれば痛くもかゆくもないというところでしょうか。
このアルバム、ラグジュアリー歌謡として出ることでも分かりますが、それまでの桑田さんとはひと味違う違うポップなイメージ。ジャケットもビックリしますけど。何しろ“YASUKOと過ごすフレッシュカラーのポップ・バケーション”ですからね。
相変わらず売野、芹澤両氏の作品が多いのですが、「マイ・ジョイフル・ハート」「あいにく片想い」というシングルを提供した来生姉弟をはじめ、国安わたる、濱田金吾といったシティポップス系のシンガー・ソングライターが参加。後に杏里作品で知られるようになる作詞家・吉元由美が「優しくされたい」「17タイフーン」の2曲を書いていますが、吉元さんにとってはこれがデビュー作なのだそうです。
いずれにしても桑田さんは安定のボーカルですから(現在も活動中で昨年にはアルバム「 アナタノウタ 」もリリース)、靖子ファンでなくても歌の上手いボーカルアルバムを聴きたい人なら楽しめそうに思います。封入特典として収録シングル曲のジャケットが付くそうですし、ぜひこの機会に。
なお、今回のラグジュアリー歌謡のラインアップはユニバーサル系で、小川知子「 Milky Way +2 」、斉藤とも子「 ありがとう あなた 」「 たけくらべ +2 」、つちやかおり「 BLACK&WHITE +3 」という新旧バラエティー豊かな面々が並んでいますよ。
(2014.7.30)