オススメ復刻盤「岡田有希子 復刻アルバム5タイトル」


ナツメロ喫茶店

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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#761

岡田有希子 復刻アルバム5タイトル

シンデレラ(PCCA-50212)、FAIRY(PCCA-50213)、十月の人魚(PCCA-50214)、ヴィーナス誕生(PCCA-50215)、プレゼント(PCCA-50216)
*2015.9.16発売、各¥3,500+税、UHQCD

ユッコのオリアルがEPサイズで紙ジャケ復刻!

 ユッコが命を絶ってから、もう30年近くの歳月が流れました。
 個人的にはまったくもって同い年、誕生日も2日違いという身上ですので、思い出すにつけ無常感や寂寥感など、いろんな感情にさいなまれてきましたが、ここ数年はCDもごく自然かつ冷静に聴けるようになっており、歳月というものの温もりすら感じたりしています。

 振り返ると、社会問題化したせいで、ユッコ作品のリイシューは長いこと封印され、口に出すのもはばかられるほどタブー視されていた時代がありました。それが99年のメモリアルBOXで解かれ、2002年にはコンプリートなぼくらのベストBOX(2010年に再発、こちらで紹介)とリクエストベストも発売。ユッコの再評価も高まっていきましたが、いずれも独自企画という感じで、やはり腫れ物にさわるような感じは否めなかったのも事実です。

 それが2012年のシングル&カラオケのベストシリーズ「 ザ・プレミアムベスト 岡田有希子 」(こちらで紹介)や、昨夏スタートしたメーカー5社合同企画のゴールデン☆アイドルシリーズ(こちらなどで紹介)の「 ゴールデン☆アイドル 岡田有希子 」というように、近年は他のアイドルたちと一緒のラインアップに加わるようになり、ひと頃を思えば夢のような状況が続いています。

 しかもユッコの人気は根強くて、ゴールデン☆アイドルでは、初回シリーズでは最高となるオリコン79位を記録。後発の百恵ちゃん(こちらで紹介)が38位だったので抜かれはしましたが、別格の百恵ちゃんに次ぐセールスですから。封印された時代の溜飲を下げたファン少なくないと思います。

 そんな中、昨今のハイレゾブームに乗るように、9月にはユッコが遺した9枚のシングルと4枚のオリジナルアルバム、すなわち全56曲のハイレゾ配信(96kHz24bit)スタートが決定。

 同時にCDパッケージとしても、「 シンデレラ 」「 FAIRY 」「 十月の人魚 」「 ヴィーナス誕生 」というオリジナルアルバム4枚に、アルバム未収録集「 アルバム未収録集「プレゼント」 」をプラスした全5タイトルが復刻されることとなりました。

 封印の印象が強かったユッコのアルバムですが、長年オリジナルのCDがカタログに生き続けていたもので、アルバム単品としては今回が初の復刻。
 高音質CDの進化版・UHQCDになる上、「ゴールデン☆アイドル」シリーズと同じくEP盤サイズのダブル紙ジャケット仕様で、歌詞カードや帯までも忠実に再現されるとのことです。
 これはBOXを持っている人でもぜひともコレクションしたい感じですよね。

 現時点の予定では、4枚のオリアルには、各アルバムに収録されたシングル曲に対応するB面曲(ファーストは「そよ風はペパーミント」「恋のダブルス」、セカンドは「PRIVATE RED」、サードは「恋人たちのカレンダー」、ラストは「恋のエチュード」)をボーナストラックとして追加。

 そして「プレゼント」には、その他のシングル曲「-Dreaming Girl- 恋、はじめまして/気まぐれTeenage Love」「Summer Beach/星と夜と恋人たち」「 Love Fair/二人のブルー・トレイン」に、ベスト盤「贈りもの」シリーズのみに入っていたナンバー「Believe In You」「小羊NOTE」、そして発売中止となったラストシングル「花のイマージュ/秘密のシンフォニー」を含む全11曲を収録予定だそうです。

 ユッコのアルバムはさすが渡辺有三プロデューサーが手がけたとあって、きっちりとしたコンセプトが貫かれていて、アイドルというよりれっきとしたボーカリストのアルバムみたい。
 竹内まりやを筆頭に、尾崎亜美、かしぶち哲郎をはじめとするムーンライダーズ、松任谷正隆、坂本龍一、大貫妙子、EPO、清水信之、財津和夫、小室哲哉、杉真理、堀川まゆみ、山口未央子、そしてサンミュージックの先輩であった松田聖子などなど、豪華な作家陣もさることながら、ユッコの上品かつ丁寧で落ち着いたボーカルの魅力といったらどうでしょう。レベルの高かった80年代アイドルのアルバムの中でも、群を抜く仕上がりではないかと思います。

 ステキの国のリトル・プリンセスさながら、「シンデレラ」「FAIRLY」のひたむきで可憐なたたずまいや、つとめて明るい歌声も素敵ですが、今から聴き始めるのならばやっぱり後期がオススメ。
 はかない繊細さを引き立てた「十月の人魚」から、懸命に大胆なアプローチをこなしていくアルバム「ヴィーナス誕生」の流れは素晴らしいのひとことです。

 特に「十月の人魚」は、デビューの頃の快活さがなりを潜めたまりや作品、大ブレイク前の予兆を感じさせる小室哲哉作品、聖子ソングの系譜といえる財津和夫作品も粒よりですが、コアとなるかしぶち哲郎さんの方向性がユッコの中に定まっていく様は、まるで妖精の儀式のよう。
 硬質で透き通るような声の存在感など、この世のものとは思えない雰囲気も漂っています。

 ちなみにラストの「ヴィーナス誕生」は初のオリコン1位を記録したCMソング「くちびるNetwork」が目立ってはいますが、サカモト教授に加えター坊やEPOらミディ系アーティストが集合、かしぶち哲郎渾身の仕上がり。
 サカモト教授の同時期作品「Ballet Mecanique」にEPOが日本語詩をつけた「WONDER TRIP LOVER」(後に中谷美紀も別歌詞でシングル化)をはじめ当時のオシャレさが全開。
 この後のユッコの展開を期待してしまうだけに、聴けば聴くほど、歳月を経れば経るほど口惜しくなってしまいますが、今またこういう形でユッコのうたが残っていくことを素直に喜びたいとおもいます。

 往年のユッコファンのみならず、新たな世代も気軽に買える感じのパッケージが出ることこそ、ユッコのうたが現世で生き続ける証となるワケですし。
 これを機に再び、ユッコがあの出来事ではなく、うたで正当に再評価され、楽曲に恵まれた伝説のアイドルとして大切に聴き継がれていくことを祈っています。


(2015.7.15)


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