風街的ファーストがタワレコ限定再発!
震えている様子までが見て取れる席に座れたおかげで、暗転の舞台にスタンバイしているときからその緊張は手に取るように伝わって、観ているこちらもドキドキしてしまったほどですが、歌い終わった時の表情と、袖へと捌けていく姿はとってもチャーミングで、とても同世代とは思えないほど。
堂に入ったお芝居の時とは別人のごとくデビュー当時の恥じらいの雰囲気も漂わせていて、まさに1984年へとタイムスリップしたかのような感覚になったのでした。
そんな彼女のファーストアルバムといえば、そのものズバリのタイトルでおなじみ、高橋幸宏プロデュースによる「安田成美」ですが、このたびタワーレコードのTower To The Peopleレーベルからボーナストラックや特典が付いた「 安田成美<タワーレコード限定> 」として、リマスタリング再発されることになりました。
ジブリ映画「風の谷のナウシカ」のイメージガールに選ばれ、同名イメージソングでレコードデビューを飾った彼女ですが、このアルバムは、その映画が公開されヒットを記録し、シングルのセールスもピークを迎えるという絶好のタイミングでリリースされたもの。
当時を振り返ると、オーディションには岡田有希子も参加していたという主演映画「トロピカル ミステリー 青春共和国」の主題歌シングルと同時発売という展開でプロモーションされていたのですけど、個人的にはカドカワ3人娘を成功させた角川商法をまんまコピーしたような徳間の手法に、最初は否定的な感情(当時のヤングの間ではそのやり方に批判的な声が大きかったと思います)を持っていたのは確かです。
映画の原作は赤川次郎だし、成美さんの歌声もいかにも原田知世の二番煎じ的な印象がありましたしね。
知世ファンとしては応援してなるものかという思いもありましたが、フタを開けたら、楽曲の素晴らしさと歌番組で見た成美さんのイノセントな魅力に、すっかりファンになってしまったりして。
アルバムは松本隆+細野晴臣コンビをはじめ、売野雅勇、鈴木博文や鈴木慶一、白井良明のムーンライダース勢も参加するという豪華な布陣で、クオリティが高かったこともあり…。
何より、不安定さが逆に功を奏した透明感たっぷりの成美ボーカルは中毒性が高かったですからね。
松本作品としては「風の谷のナウシカ/風の妖精」「トロピカル・ミステリー/月のミューズ」という2枚のシングル曲が収録されておりますが、89年にCD化されてからも91年の廉価盤、2000年のテクノ歌謡シリーズ盤と再発を繰り返してきましたし、ジャケ写が同じ現行のベスト盤「 安田成美 コレクション 」にも全曲が収録されておりますので、今さら…という人や、大貫妙子プロデュースのセカンド「ジィンジャー」を先に再発してという人も多いかも。
でも、今回はボーナストラックとして「風の谷のナウシカ/風の妖精」「トロピカル・ミステリー/月のミューズ」のオリジナルカラオケに、松本+細野コンビによる4枚目のシングル「銀色のハーモニカ」をプラスするという特別盤。さらにはジャケットと同絵柄でデザイン違いのB4サイズポスターを封入という特典付きですので、既発盤をコレクションしている人もチェックをお忘れなく。
もちろん、風街フリークの方でまだ持っていないという方も、この機会にどうぞ。
(2016.1.6)