百恵から薬師丸、聖子&明菜までの提供曲集!
小椋佳、井上陽水に続くキティの大型アーティストとして、1976年に「浅い夢」でデビューしてちょうど40年。
昨秋には歌手活動40周年を記念した2枚組のセルフカバー・ニューアルバム「 セルフカバーベスト~夢のあとさき~ 」をリリースし、ツアーも行っている来生たかおさん。
実姉の作詞家・来生えつこさんとのコンビを中心に、シンガー・ソングライターとしても根強い人気を持っていますが、多くのヒット曲や名曲を世に出した作曲家としての実績たるや、相当なものがありますよね。
シャイで朴訥とした雰囲気そのままの繊細でメロディアスな作品群は、女性シンガーによく似合っていて、アイドルには品格のベールを被せたものでしたけど、最大のヒットを記録した提供曲といえば、薬師丸ひろ子の歌手デビュー曲となった「セーラー服と機関銃」でしょうか。
厳密に言えば提供曲ではありませんが、近年歌手としての活動を再開させた薬師丸さんもことさら大切にしていますし(昨秋は1回のコンサートで2度もやったほど)、今春には角川映画40周年記念作品として公開された新作「セーラー服と機関銃 –卒業–」の主題歌として主演の橋本環奈がカバー(「 セーラー服と機関銃 」)するなど、時を超え歌い継がれている名曲となっております。
むろん近年のカバーブームで取り上げられる率も高い来生作品ですし、そういう背景やタイミングもあってのことのでしょう、このたび来生さんの40周年企画として、提供曲を集めた作品集「 来生たかお40周年企画コンピレーション2“WORKS” 」のリリースがアナウンスされました!
歌手としては40年のキャリアを誇る来生さんですが、裏方志望で実は作家デビューの方が2年先だそうで、今回のアルバムには42年の作家生活の中からオリジナル歌手の音源を厳選。
提供曲の初レコード化となった74年の亀渕友香「酔いどれ天使のポルカ」から、2001年に松たか子に提供した「another birthday」まで、カバーも含む16曲が収録される予定とのことです。
振り返れば、作曲家・来生さんの初ヒットといえば77年、車のCMソングに起用され紅白初出場も果たたしばたはつみ「マイ・ラグジュアリー・ナイト」ですが、しばらくは業界ウケの高い新進気鋭の作家という位置づけで、79年には山口百恵(「おだやかな構図」)や高橋真梨子(「さよならのエチュード」)、太田裕美(今回は収録ならず)らビッグネームに相次いで書いてはいたものの、ひっそりとしたアルバム収録曲の作家さんという印象でした。
であるからして、一般に知られるようになった出世作は、やっぱり前述の「セーラー服と機関銃」と見るのが正解ですよね。
本来は来生さんの歌ったバージョン「夢の途中」が主題歌になる予定が、相米慎二監督の一声で薬師丸さんが歌うことになったのは有名なエピソードですが、当然オリコン1位をマークし、共作みたいになった来生さんのバージョンもトップ10ヒットを記録したのですから。
この成功で来生姉弟は一躍脚光を浴び、オファーが殺到。間髪を入れず、大橋純子の「シルエット・ロマンス」もヒットし、さまざまな歌手に提供していきますが、特筆すべきは松田聖子と中森明菜という80年代のツートップにそろって提供していること。
聖子には82年のアルバム「Pineapple」が最初ですが、今回は今もコンサートの定番曲として歌い続けている83年の名曲「マイアミ午前5時」を収録。初期のメイン作家となっていた明菜はデビュー曲「スローモーション」と初のオリコンNo.1獲得曲「セカンド・ラブ」の2曲が入っています。
86年には来生さんが前年にシングルとして出した「はぐれそうな天使」を、同じCMソング枠を継承した岡村孝子がカバー。リレーというCMらしい手法で名曲化に一役買いましたが、今回はこの曲もしっかりチョイス。
さらに、88年に斉藤由貴とデュエットした映画主題歌「ORACION~祈り」、「セーラー服と機関銃」以来のシングル&競作となった89年の薬師丸ひろ子「語りつぐ愛に」と黄金の80年代を締めくくります。
ということで、90年代はあのギルバート・オサリバンに提供した91年の「出逢えてよかった」のみ、2000年代は前述の松たか子のみという選曲ですが、そこは1枚ものでありますので致し方ないところ。
ほかにも河合奈保子の「ストロー・タッチの恋」や西村知美「夢色のメッセージ」などのトップ10ヒットはもちろん、風間三姉妹の「Remember」やナンノの「楽園のDoor」といったNo.1ヒットもありますし、美空ひばりの「笑ってよムーンライト」などなど、BOXとして提供曲だけのアンソロジーが編まれてもおかしくないほどの実績です。
さほどヒットしなかった曲の中にも伊藤麻衣子のデビュー曲「微熱かナ」や、桑田靖子のイメチェン曲「マイ・ジョイフル・ハート」を筆頭にイロイロな名曲がありますし、太田裕美「星がたり」や須藤薫の「LITTLE BIRTHDAY」、各人の傑作に入ると思う薬師丸ひろ子の「バンブー・ボート」や松田聖子の「Silvery Moonlight」などなど、隠れた名曲もふんだんに収録した続編にも期待したいと思います。
(2016.4.12)