発売40周年を記念して、名盤の今昔2 for 1!
今年は松本隆さんの作詞活動四十五周年、ということで記念のトリビュートアルバム「風街であひませう」(こちらで紹介)もリリース間近。
「 ミュージックマガジン 2015年 07 月号 」や「 BRUTUS(ブルータス) 2015年 7/15 号 [雑誌] 」といった雑誌でも特集が組まれるなど、風街詩民以外からも大きな注目を集め、あらためて松本さんの歌詩の素晴らしさがクローズアップされていますが、今夏のお楽しみは、何と言っても超豪華なライブ「 風街レジェンド2015 」。
これまでにも節目ごとに記念のライブが開催されていましたが、今回はかつてないスケールでかつてない出演者となっているため、奇跡の2日間と称されておりますが、コレに両日出演するメンバーのお1人がご存じ小坂忠さん。
松本さんやホソノさんがいた伝説のバンド、エイプリル・フールのメンバーであり、本来ならはっぴいえんどにも入っていたであろうというエピソードでも知られておりますが、そんな忠さんの名盤といえば1975年にリリースされた「 ほうろう 」。
ちょうど発売40周年にあたるということで、そのオリジナル盤と2010年のボーカル新録音盤「 HORO2010 」(こちらで紹介)を2 for 1でカップリングしたスペシャルパッケージ盤「 ほうろう 40th Anniversary Package 」が、ナイスプライスでリリースされることになりました!
風街的グッドタイミングでもありますし、松本隆作品もリメイクを含む3曲が含まれておりますから、この名盤を未聴だという詩民の皆さんがいらっしゃいましたら、ぜひ風街レジェンドの予習を兼ねてお聴きください。
「ほうろう」をあらためてカンタンに紹介しておきますと、ティン・パン・アレーをはじめ、ソロデビュー前の矢野顕子、吉田美奈子、山下達郎、大貫妙子ら錚々たるメンツが顔を並べたアルバムとして、日本のR&Bやソフトロックを語る時には必ず挙がるアルバム。
ホソノさんのナンバーであるタイトル曲や、忠さんの代表曲である「機関車」、それらを好んでカバーしている矢野顕子作の「つるべ糸」(アッコちゃんは「やませ(東風)」と改題してセルフカバー)など、名曲がテンコ盛りですが、松本作品でのナンバー1は、何と言ってもソウルフルなリカットナンバー「しらけちまうぜ」(こちらで紹介)。
桑名正博をはじめ、オザケン&スカパラ、最近ではCKBの横山剣がリメイクしていますし、松本さんの「 風街図鑑 街編 」やホソノさんのアンソロジーにも収録されていましたので知名度は高いはずですよね。
なお、松本作品としては、ほかにはっぴいえんどの「氷雨月のスケッチ」、エイプリル・フール時代のナンバーを元にしたという「流星都市」が入っています。
そして、この75年の「ほうろう」のバックはそのままに、ボーカルを新録音して2010年にリリースされたのが「HORO2010」。
ソニーの吉田格さんと2009年発売のBOX「Chu’s Garden」を制作していた際、16chマルチトラックが発見されたことに端を発する企画で、20代に録音したアルバムを35年後の60代に改めて歌い直すという画期的なリメイク盤として注目を集めました。
75年盤と聴き比べるとキーが同じというのにも驚きますが、とにかく歌声が素晴らしい。「ほうろう」で見せた20代という若さゆえの危なげなスピード感やハリ、みずみずしさも素敵であることに間違いないのですが、それらと引き換えに得た、60代ならではの深みやまろやかさ。何より、小坂さんの人生からにじみ出る慈愛の響きには、心打たれること請け合いです。
時々、聴き比べてみたりしていますが、今回手軽に、それもブルスペ2に格上げされたCDで聴けるようになるのがウレシイ。音楽に限らず、文学でも映画でも、本当の名作って、長年繰り返し鑑賞してきたとしても、自分が成長するにつけ解釈が異なってきたり、新しい発見があったり、年を取るごとに味わいが深まるもの。
それが聴き手だけでなく、歌い手側からも新しい提示があるなんて、リスナー冥利に尽きるというものです。松本さんのトリビュートもそうですが、単なるアンソロジーではない企画は、齢を重ねるファンにはたまらない贈り物。
特にずっと応援してきたファンにとっては、今を生きるうえでこの上ないメッセージになることを確信しています。
(2015.6.17)