あの素晴らしいレコード会社を愛する人たちへ
村井邦彦さんのアルファといえば、赤い鳥、ガロ、荒井由実らの古いファンにとっては作詞家の山上路夫さんと設立した音楽出版社・アルファミュージック、そしてそこから制作部門を独立させたアルファ・アンド・アソシエイツというイメージでしょうか。
アルファについて個人的なメモリーをひもとくと、家にあったシングル「学生街の喫茶店」が初アルファということになるのでしょうけど、その頃はアルファはもちろんマッシュルームもアルファだなんて、知る由もありませんでした。
最初に認識したのは、ルネのレコードジャケットでしたが、CBS・ソニーなのに見慣れない“ALFA”のロゴに気づき、“制作/アルファ・アンド・アソシエイツ株式会社”というクレジットを見たのに、当時販売されていたチョコレートのことだと思っていたりして…。
ユーミンやハイ・ファイ・セットのLPだって東芝EMI・エキスプレスレーベルの発売でしたし、ハッキリと意識したのは、やっぱりアルファレコードが創立されてから。そう、第1号アーティスト・サーカスの「Mr・サマータイム」の大ヒットからです。
その後、ユーミンやハイ・ファイ・セットのLPもアルファレコードのレーベルから再発されるようになって、その歴史を知ったり、今で言うディストリビューターの存在など流通の仕組みを教えられたりしていくワケですが、YMOがいた頃は、最もオシャレなレコード会社として確固たるブランド性が感じられたりもしました。
また、当時はA&Mがアルファから出ていましたので、大好きなカーペンターズをはじめ洋楽のレコードもいろいろ出していた会社というイメージもあります。実は最も心を奪われたアルファは、やっぱり¥ENレーベル。HYSレーベルへと移行した戸川純だったりして。
思い出話はさておき、その村井さんも今年古希をお迎えだそうで、9月27、28日には東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールにアルファゆかりのアーティストが結集し、お祝いのライブイベント「 ALFA MUSIC LIVE 」が開かれるとのこと。
驚くなかれ、総合演出を松任谷マンタさんが手がけ、なんとユーミンがアルファ時代に戻って荒井由実として登場。
さらにガロの大野真澄、赤い鳥の後藤悦治郎&平山泰代夫妻(紙ふうせん)をはじめ、雪村いづみ、加橋かつみ、小坂忠、吉田美奈子、ブレッド&バター、サーカス、山本達彦、コシミハル、さらにはメンバーが欠けてはいるもののYMO(細野晴臣、高橋幸宏)やシーナ&ロケッツら、豪華なレーベルメイトが当時のエピソードを交え、アルファ時代のヒット曲を披露。
バッキングは、かのティン・パン・アレーと武部聡志バンドが担当し、赤い鳥&ハイ・ファイ・セットの俊彦さん、ガロのマークやトミー、シーナ&ロケッツのシーナら物故者にスポットを当てるコーナーも予定されているそうです。
なんだか松本隆トリビュートに続く奇跡のライブという感じですが、これはもう入手困難のプラチナチケット確定。96年の荒井由実復活コンサートみたいに、行きたくても行けない人がほとんどという状況になることでしょうが、行けない人はCDでお祝いをといわんばかりに、アルファレコードの軌跡をまとめた2枚組コンピ盤「 アルファレコード ~We Believe In Music~ 」がリリースされることになりました!
まさにライブの前哨戦という感じの内容で、“We Believe In Music”という、スローガンというか社是というか、ユーミンのLPにもよく書かれていたあの言葉のもとに、69年のフィフィ・ザ・フリー「栄光の朝」から86年の日向敏文「異国の女たち」まで、なんと村井さんをはじめ、当時のスタッフたちが選曲したというナンバーが時系列で勢ぞろい。
あくまで現時点での収録予定曲を見ますと、赤い鳥「The Last Trace Of Loving Has Gone」「翼をください」「竹田の子守唄」、ガロ「地球はメリー・ゴーランド」「学生街の喫茶店」、ルネ「ミドリ色の屋根」、小坂忠「ほうろう」、ハイ・ファイ・セット「スカイレストラン」「フィーリング」「海辺の避暑地に」、吉田美奈子「夢で逢えたら」サーカス「Mr.サマータイム」「アメリカン・フィーリング」、細野晴臣「はらいそ」、ブレッド&バター「あの頃のまま」、YMO「ライディーン」「テクノポリス」「君に胸キュン。」、カシオペア「ASAYAKE」、シーナ&ザ・ロケッツ「ユー・メイ・ドリーム」、坂本龍一「Thatness and Thereness」、いしだあゆみ「赤いギヤマン」、佐藤博「I Can't Wait」などなど、誰もが知っている大ヒット曲から、大プッシュしたけどヒットしなかったナンバーまで、アルファの歴史がざっくりわかる内容となっています。
選曲コメントも入っているそうですから、そちらも興味津々ですね。
個人的には、ルネのファンでしたし、赤い鳥やハイ・ファイ・セットはそれこそ40年以上にわたってずっと愛聴しておりますが、やっぱりゲルニカ「曙」&戸川純「蛹化の女」というチョイスに泣けます。
また、YMOをきっかけに席巻したスネークマン・ショー「咲坂と桃内のごきげんいかが1・2・3」、ビリー・バンバンの弟さんの菅原進「琥珀色の日々」やガンンバリマス!の流行語を生んだ三好鉄生「涙をふいて」というCMソングでヒットした曲もアルファだったんだと、あらためて驚いたりして。
現在のリスト*ではユーミンが漏れているようですが(ハイ・ファイ・セットやブレッド&バターへの提供作品は収録)、アルファのヒストリーには欠かせないアーティストなので、ライブと同じくサプライズを期待しております。というか、ライブに沿った選曲へと変わるかもしれませんね。
いずれにしても、アルファって一本貫かれた姿勢といいますか、その時代時代でスマートでオシャレな世界を築いてきた唯一無二のレコード会社だったなあと、感心する次第です。
それはやっぱり村井さんそのものという感じがしますが、村井さんの世界をじっくり味わいたい場合は、BOX「 The Melody Maker -村井邦彦の世界- 」(こちらで紹介)どうぞ。
(2015.6.22→7.1追記)
*収録曲が正式に決定し、荒井由実「海を見ていた午後」も収録されることになりました。詳しくは特設ページでご確認ください。