ヨシリンのソニー移籍作、再CD化のリベンジ!
日本の芸能史に残るビッグアイドルぞろいの80年組が、デビュー35周年を迎える今年。現役で活躍中の人が目立つのと、とっくにCD化が進み何度も再発しているケースも多いので、リイシューものとしては河合奈保子(こちらで紹介)ぐらいしか出ておりませんが、ここに来てヨシリンこと岩崎良美さんの復刻企画が出てきました。
といっても、周年記念でもないし、アンソロジーでもなし。ヨシリンの場合、ベスト盤はBOXをはじめ、ポニキャンA面コンプリート+αのお手頃な「 「岩崎良美」SINGLESコンプリート 」やAB面コンプリートのドーナツ盤仕様「岩崎良美/ゴールデン☆アイドル」(こちらで紹介)、オリジナル・カラオケ付きの「 ザ・プレミアムベスト 岩崎良美 」など数多出ていますし、アルバムBOXもぼくらのベスト2に加え、30周年時の紙ジャケ「岩崎良美 Debut 30th Anniversary CD-BOX」(こちらで紹介)と2回も出ていますからね。
ということで、今回持ち上がったのはオーダーメイドファクトリーで2007年に候補に挙がるも不成立に終わったアルバム。実現すれば26年ぶりの再CD化となる、89年の「 月夜に GOOD LUCK+5 」です!
ヨシリンのアルバムでこれまで唯一復刻されなかった1枚となりますが、まあ、それはオリジナルがCDだったせいもあるので仕方なかったのかもしれませんけど、前回臍をかむ思いだった皆さんにとっては、まさに待望のリベンジということろでしょう。
ひもとくと87年の「床に、シンデレラのTシャツ。」を最後に、デビュー以来所属していたキャニオンを離れて心機一転。89年にはCBS・ソニーに移籍し、まずシングル「硝子のカーニバル/言い訳 -A GOOD EXCUSE-」をリリースしたヨシリン。
「硝子のカーニバル」はダイアン・レインを起用した銀座ジュエリーマキ・カメリアダイヤモンドのCMソングという鳴り物入りの大型タイアップがついたのですが…。大量スポットが打たれたわりには、残念ながら大きなヒットには結びつきませんでした。
で、次に出たのがこのアルバムだったのですが、それまでのテイストとはガラッと変わっていたし、ファンの間でも今ひとつ再評価が低いアルバムだったりして。
確かに、当時はバンドブーム全盛期。加えて女性ボーカリストにもメッセージ色が必要で、アイドルも歌謡曲も思うようにヒットが出せず、世代交代が進んだ頃でした。ヨシリンも例外ではなく「タッチ」というアニメ系のヒット曲がある分、メインストリームからは外されてしまっていた印象があります。
巷でよく似ていると言われた小比類巻かほる(このアルバムのジャケットは特に!)がクローズアップされた頃など、世間からは半ば終わった人扱いされていたのも事実です。
あと、前回不成立に終わったのは、再評価のムーブメントがこの時代まで行ってなかったというのも大きかったように思いますね。
しかしですね、時代はめぐり歴史が繰り返す中、8年前には聴くのがキツかった89年という時代の音も、今ならすんなり聴けるようになったのじゃないかと思います。実は今、コレを書きながらオリジナル盤を聴いているのですが、これが不思議。前に感じていた印象よりずっといい感じに聴こえていますから。
ということで、これまでスルーしていた人にも今だからオススメしたい、AORアルバムと言えそう。
一言で言えば、アーバンメロウなシティポップスという感じで、当時オシャレだったダンス系のサウンドっぽい雰囲気もあって、やはり89年らしいデジタルサウンド満載。
日本のジャズ・フュージョンを牽引した名プロデューサー・伊藤八十八(残念ながら昨年亡くなられました)さんが国内制作に移った頃で、エグゼクティブ・プロデューサーとして関わっておられますが、ソニーのスタッフ陣は翌年出た渡辺真知子さんの「TAHIBALI」と同じで、いろんな血を入れて新しい日本のポップミュージックを創ろうという意気込みが伝わってくるよう。
その証拠に、作家陣にはルーファス&チャカ・カーンのベーシストとしても知られるボビー・ワトソンをはじめ、クインシー・ジョーンズやポール・サイモン、スティーヴィー・ワンダー、マイケル・ジャクソンらと関わってきたというクリストファー・カレルに、八神純子や長谷川孝水(OMFでは唯一のアルバム「 日々の泡 」が復刻)と異色の顔合わせ。
ヨシリンもそれに負けじと、あの鈴を鳴らすような声とお姉さんにはない天性のリズム感で軽やかにグルーブしております。
収録曲の中で「硝子のカーニバル」と並び知られているのはタイトル曲「月夜にGOOD LUCK」でしょうか。シングルカットはされませんでしたが、ヨシリン自身が主演した昼ドラ「HOW TO 結婚」の主題歌となり、毎日毎日お茶の間に流れておりましたから。
もっともサウンドとドラマのイメージは全然合ってなかったような…。
というアルバムですが、今回はブルスペ2に格上げされ、「硝子のカーニバル」のシングルバージョン*のほか、4曲のオリジナルカラオケもボートラ収録されるとか! 八神純子作品の「君の傍らの月」「Prologue」もその対象となっていますので、コアなヤガマニアの皆さんもお見逃しなく!
また、商品化決定するまでに予約するとヨシリンの直筆サイン色紙ももらえるそうなので、お早めにどうぞ。
と言いつつ、もしキャニオン時代のヨシリンを聴いてないという人がいらっしゃいましたら、ぜひそちらを先に。
また、最新アルバム「THE REBORN SONGS~シクラメン~」(こちらで紹介)をはじめ「 色彩の主人公 」といった近年のカバーアルバムや、「 岩崎良美ヴォーカルアルバム 赤と黒から・・・・・I 」「 岩崎良美ヴォーカルアルバム 赤と黒から・・・・・II あなた色のマノン 」「 赤と黒から・・・・・III 愛してモナムール 」などのセルフカバーアルバムもとても素晴らしいので、そのへんもスイセンしたいと思います。
(2015.6.8)
*ボーナストラックとして収録が予定されていた「硝子のカーニバル」のシングルバージョンは、アルバムバージョンと同一だったということで収録が見送られ、オリジナルカラオケに差し替えられることになりました。