ポプコン入賞曲集の側面も持つ、初ベスト!
1970年代から80年代にかけて、フォーク・ニューミュージックのアーティストの登竜門となっていたヤマハのポプコン(ポピュラーソングコンテスト)。
来春には同窓会的なスペシャルライブ「僕らのポプコンエイジ~Forever Friends, Forever Cocky Pop~」が開催され、なんと石川優子(東芝EMI時代の復刻盤はこちらで紹介)の復帰が決定するなど、巷ではまたまた再評価の兆しが高まっているようです。
とにかく多彩な面々を世に送り出したポプコンですが、ビッグなアーティストが多かっただけにその影に隠れ、復刻モノでも日の目を見ていなかった人がいるのも事実。
しかしですね、ここに来て、復刻を切望しているマニアの多かったあの女性歌手のベストがついに登場します!
そう、ヤマハでは珍しい歌謡フォーク系といいますか、70年代前半に活動したブッチーこと岩渕リリの初ベスト「 ゴールデン☆ベスト 岩渕リリ(SHM-CD) 」。
フォーク全盛期の当時、女性ソロというジャンルでは森山良子が独走していましたけど、歌謡曲っぽいナンバーもこなす彼女に追いつけとばかり、歌謡曲の匂いもするフォロワーっぽい歌手が相次いで登場した記憶があります。
その代表が本田路津子やデビュー当初の天地真理という面々でしょうが、ブッチーもそんな1人だったのではないでしょうか。
71年の第3回ポプコン(当時は「’71作曲コンクール」という名称)に譜面歌手として出場。歌唱曲「あなたを夢見て」は入賞を果たし、もう1曲歌った「失恋」は理事長お墨付きの川上賞も受賞した彼女。
その流れで翌72年3月には、ビクターのフォーク系レーベル・SFシリーズより入賞曲「あなたを夢みて」でデビューを果たしています。
続く第2弾シングルも、同じ回のポプコン入賞曲にして大競作の「サルビアの花」になったのですから、やっぱポプコンの申し子と言えるでしょう。
美人のお姉さんっぽいルックスで、爽やかな美声なのに歌謡曲的な歌い回しをしていたブッチーですが、本命盤ではなかったワリに「サルビアの花」はヒット。
ビクターでは同期デビューでガムシリーズの麻丘めぐみ、同じSFシリーズのチェリッシュに次ぐ3番手としてプッシュされていましたが、アイドルのカコちゃんとフォークの悦ちゃんのちょうど中間という感じで、どっちつかずの印象が否めなかったのかもしれません。
で、今回の初ベストCDは、「あなたを夢みて/風と涙」「サルビアの花/遠い処へ行きたい」「隣の男の子/おさな友達」「日曜日の午後/道を求めて」という4枚のシングルに、72年5月リリースのファーストアルバム「あなたを夢みて/サルビアの花」を加えたSFシリーズでのオールソングス・コレクション。
最大ヒットの「サルビアの花」は言わずもがな、その他の曲もソフトロック・ドライヴィンのコンピやポプコンのBOXなどでちょこちょこCD化されていましたので、初CD化は3分の2ほどではないでしょうかね。
歌謡曲ファンには、有馬三恵子先生が作詞したメロウな「隣の男の子/おさな友達」をオススメしたいところですが、やっぱりポプコン入賞曲集という感じですので、当時コッキーポップを聴いていた初期のポプコンファンこそ必聴ではないかと思います。
彼女が出場した第3回ポプコンは、実はポプコンという名前ではなく前身の「作曲コンクール」で、自作自演のコンテストではなく、応募曲を歌手が歌って競い合うというスタイルでしたが、彼女のレパートリーはそのコンクールへの応募曲&入賞曲だったワケですしね。
デビュー曲「あなたを夢みて」と「失恋」は、本選会で彼女自身が歌ったナンバー。第2弾シングル「サルビアの花」はオフコースが歌っていますし、そのほかデビュー曲のB面「風と涙」(本選では竹本恵美子が歌唱)にしても「あなたの手紙」(大木康子)や「愛の始め」(藤田とし子)、「罪と罰」(麻生レミ)にしても同様です。
グランプリを獲得した「Please Please Please」はヒデとロザンナが歌唱。じゅん&ネネがシングル化し、ウィッシュもレコーディングしていますので、コッキーフリークには「サルビアの花」と並びよく知られたナンバーと言えるでしょう。
ちなみにラストシングル「日曜日の午後」はポプコン常連姉妹のデュオ・チューインガムがカバー、そのB面「道を求めて」は73年のポプコン入賞でデビューを飾った高木麻早の作品で彼女自身もセルフカバーしています。
というポプコン名曲集という側面も持った岩渕リリのG☆B。やっぱりマニアックな歌謡ファンよりも、ポプコンやコッキーポップのファンにオススメしたいと思います。
なお、今回のビクターG☆Bのラインアップには、ほかに「 ゴールデン☆ベスト 秋本奈緒美(SHM-CD) 」「 ゴールデン☆ベスト 岡安由美子(SHM-CD) 」「 ゴールデン☆ベスト 金子美香(SHM-CD) 」も入っていまして、年代も毛色も異なりますがいずれもレア系満載。売れるかどうかは正直難しいとは思いますけど、興味がおありの方は次につながるという意味でもぜひご予約を。
(2015.10.28)