30周年のヨシリン、傑作ぞろいの最強アルバムBOX!
1980年デビューで、怒濤の30周年アニバーサリーリリースが続発したのは松田聖子。ポニーキャニオン所属だったアイドルで、怒濤の紙ジャケ&HQCD復刻が実現したのは斉藤由貴。
聖子も由貴ちゃんもみーんな大好き!だけどやっぱり良美だね!というワケではありませんが、なんと発売が決定しました!
1980年、キャニオンレコードからデビューした岩崎良美の30周年記念、ハイクオリティな紙ジャケボックス「 岩崎良美 Debut 30th Anniversary CD-BOX(仮) 」。
80年のファースト「Ring-a-Ding」から87年の「床に、シンデレラのTシャツ。」まで、キャニオン時代に出た12枚のオリジナルアルバムを紙ジャケット&HQCDで復刻。プラスαのメモリアル特典も付いた豪華仕様になる模様です。
ヨシリンのキャニオン音源は、おなじみのオニピー発、文句なしのぼくらのベストBOXシリーズで2002年と04年に完全復刻済みですが、今となっては入手困難になっておりますし、今回のボックスとは趣が全く異なりますので、買い逃した人はもちろん、ファンならばぜひとも入手したいところ。
紙ジャケ復刻ならでは、オリジナルのままの雰囲気が漂うパッケージですし、魅惑の高音質ディスクですしね。
しかも、アルバム未収録曲やバージョン違いなどもボーナストラックとして収録され他、キャニオン時代のコンプリート仕様になるのだとか。
さて、時代劇の「江戸の鷹」や欽ちゃん劇場「とり舵いっぱーい!」などのドラマ出演を経て、ヒロリンの妹として鳴り物入りでレコードデビューしたヨシリンですが、アルバムもホントに上質な力作ぞろい。
最初の2枚には、ヨシリンの歌唱力を生かし、なかにし礼さんが指南したやや大仰な文学路線を含みつつ、歌謡曲とシティポップス寄りのニューミュージックをうまく取り入れた佳曲が詰まっています。
デビュー曲「赤と黒」や、第2弾にして資生堂シャワーコロンのCMソング「涼風」を含む(涼風はNew Version)ファースト「Ring-a-Ding」は、デビュー当初のヨシリンのファンデのテカリ具合と比例するように、70年代を引きずったようなモタっとした雰囲気も残っていますが、作曲は芳野藤丸さんを中心にミッチー長岡さん、全曲アレンジを大谷和夫さん担当と、かのSHOGUNのメンバーがバックアップ。あのラジも1曲書いてます。
余談ですが、藤丸さんは、ヒデキのバックバンドでもおなじみでしたし、ある時期までは南沙織の義弟でいらしたので、とても親近感がありました。コッテリもアッサリも、いろんな曲をお書きになるので大好きでしたね。
ただ、マチルドにマノン・レスコー、ローレライなど、なかにしさんがヨシリンに投影した世界はとっても濃くって、フツーの中高生にとっては難しいものだったので、来生さんが詞を書き藤丸さんのコーラスもピッタリだった「涼風」の爽快なフィーリングがもっと前面に出ればなあ、などと思っていましたっけ。
特に、新人賞レースの勝負曲が「あなた色のマノン」になってしまったのが今も残念です。いい曲ですしソラで歌えるほど好きなのですけど。79年にデビューするべきだったという近田春夫さんの言葉を思い出したりして。
篠山紀信さん撮影でもヨシリンの場合、ドキッとする写真が少ないようなのですが、これだけは例外、ジャケットが幻想的なセカンド「SAISONS」。藤丸さん作のポップで最もアイドル的な「You Love Me,I Love You」が入っているもののSHOGUN色は薄れてしまい、ヒロリン風と言いますか、前作より一歩後退の歌謡ポップス的な曲が多し。
でも「田園交響楽」とか「愛情物語」とか、ヒロリンが歌うとかなりコッテリしそうなドラマチックナンバーでもヨシリンが歌うとそうでもなくって、とってもイイ感じなのですよね。
そういう意味では、歌謡曲のエッセンスが強いナンバーこそヨシリンの魅力が発揮されるのかもしれない、なかにしさん的ヨーロピアンは間違いではなかったのかもしれない、なんて思ったりします。このへん、伝統のアイテムを取り入れても新しく見せるニュートラ的コーディネート、みたいな。
あと、このアルバムでずーっと気になっているのがオープニングのほのぼのポップ「Waiting For You」。「辛い」を「つらい」ではなく「からい」と歌ってるのは正解なのだろーか…。
ところで80年代アイドルのアルバムというと、歌謡曲とニューミュージックの理想的な融合という形が顕著ですが、どうしても同期のノリこと松田聖子だけがクローズアップされがちです。でも、声を大にして言いたいのは最初からハイクオリティだったのは良美ちゃんの方。
キャニオン直系、金井夕子の流れをくむものだと思っているのですが、金井夕子−ヨシリンの連立方程式は、一般にはとても難解だった。それを一発で解く公式を導き出し、ヨシリンを後追いしつつ追い越して単純明快な正解を普及させていったのが81年後半からの聖子だったとワタシは思ってます。
疑問に思う方は、その最高峰と呼べるサードの「Weather Report」をぜひ聴いてみて。カラリと晴れたA面も、曇り空や雨模様のB面も実に爽快で、ヨシリンのボーカルも抜けきった感じ。個人的には30年近く初夏には必ず流しているアルバムなのです。
亜美ちゃんとの出会いをはじめ、南佳孝さんやブレッド&バター、ケン田村など作家陣も新鮮ですが、サウンドがナウかった。ニューミュージックを通り越してフュージョン系のイメージも満載です。
オープニングの疾走感や「東海岸(イーストコースト)」のヒネリ、悩殺的な名曲「アビ・ルージュの息づかいで」などなど、すべてが聴きどころと言えそう。シングル収録曲をリテイクしているのもウレシイ配慮でしたね。
そして亜美ちゃん提供、コーラスまで入っているシングル「ごめんねDarling/ふれて風のように」や、当時はクリスタルシングル付きだった「心のアトリエ」もこれまた名作。
一段と軽やかに、上質ポップスに弾けるヨシリンが心地いいんです。チャー作の「あの時…」みたいな実験的世界もものともしない実力も堪能できる仕上がりです。
82年にはのシングル「愛してモナムール」「どきどき旅行」をリリース。ハワイであってもフレンチやイタリアンといったヨーロッパ。デビュー当時とは比べ物にならないほど洗練された欧州的エッセンスを振りかけ、金井夕子作詞のシングル「Vacance」ではあのパンタが曲提供するなど、より独自の世界を構築していきましたが、その路線の到達点が「セシル」でしょう。
ズズ+トノバン、大貫妙子らおフランスにふさわしい作家陣が集結、ノブさんアレンジということもあって小粋なムードがいっぱいであります。
イメチェンととらえる人も多いようですが、ヨシリンの場合、当初からヨーロッパの匂いがテーマとしてありましたので、それがバージョンアップしたと見るべきでしょう。
また、このアルバムがポニキャン初の邦楽CDだったことも忘れてはならない事実です。
卓越したポップセンスを持っていたせいで高度な方しか向かえなかったのかもしれませんが、83年初頭には日清サラダ油の豆乳ソングにしてハイレベルな名曲「恋ほど素敵なショーはない」が久々のスマッシュヒット。この曲、ラジオのオンエアがすごくて、業界の人たちがこぞって応援してくれたような印象がありますが、ヨシリンにしか歌えない名曲ではないでしょうか。
コレを含むのがタイトルも素敵な「唇に夢の跡」ですが、シングルの洒脱な世界を今一つ広げきれなかったのが残念。この時期のシングルって、「ラストダンスには早過ぎる」にしても「月の浜辺」にしても「オシャレにKiss me」にしても、それぞれにクオリティが高いのですが、アルバムではその感じをなんとなく生かし切れてないように思います。1曲1曲は小粒で良いのですが。そのへん、次作の「Save me」もしかりです。
スマッシュヒットは続けるものの、イマイチ伸びきれず、翌年にはあの「タッチ」へと至り着いてしまい、それがヨシリンの代名詞になってしまうのですけど、その前に出た8曲入りアルバムを聴くと口惜しい限りになるのです。
それが、シングル「愛はどこに行ったの」「くちびるからサスペンス」を含む傑作「Wardrobe」。康珍化+林哲司のシティポップス満載で、オトナのアルバムです。「くちびるから〜」のB面であった「10月のフォト・メール」は3本の指に入る傑作だと思っています。
アルバムには入っていませんが、「愛は〜」のB面「ジャスミンの頃」は個人的ナンバー1ですし、地味でもこういうOL的シティポップスを続けほしかったというのが、古くからの良美ファンの要望ではないかと思います。
後はマジでスルーしたい「タッチ」系の「half time」(「タッチ」のサントラもプラスされそう)と「cruise」、圧巻のメドレーやコムロサウンドに本格挑戦した「blizzard」、ユーロビートやミュージカルナンバーを取り入れたコンセプチュアルな「床に、シンデレラのTシャツ。」と続いていきます。
というのがキャニオン時代12枚のオリジナルアルバム。 このほか、83年のライブ盤(CD化済み)や、CBS・ソニーに移籍した89年の「月夜にGOOD LUCK」(残念ながらオーダーメイドファクトリーでは不成立)、近年インディーズから出したフレンチ系のアルバムなどもありますが、何をどう歌っても鈴を鳴らすように軽やかで爽やかな美声とリズム感は健在。
なのでファンとしては、「タッチ」以降に変わってしまったパブリックイメージがなんとも不完全燃焼的なんですよね。またまた繰り言になってしまいますが、「タッチ」の檻に幽閉されているのがやっぱり残念でたまりません。
確かに、自身の最高ヒットではありますし、一時は遠ざかっていた歌の世界へ呼び戻したのも「タッチ」の再評価だったようですし、アニメソングNo.1として多くの人に愛されているのは素晴らしいことだと思いますが…。
であるからして、このボックスを機に「タッチ」以前のヨシリンを確認してくださる方が少しでも増えればなあ、なんて思っています。
なお、このボックス発売まで、デビュー30周年記念プロジェクトを展開中のヨシリン。記念コンサートも11月と2月にあるようですし、ジョイントツアーをしているカズンとのコラボシングル「ココロの色」を発表したり、暮れには7年ぶりのミニアルバム「赤と黒から・・・・・I」をリリースしたり、精力的な歌手活動を続けている様子。
それを支えているのはずっと応援し続けてこられた皆さんだと思いますが、今後ますますの活躍のためにも、ヨシリンのシンガーとしての才能と実力を知りつつも「タッチ」で離れてしまった往年の良美ファンの皆さんが、1人でも多くカムバックしてくださることを祈っています。
ホントはヒロリンの協力を得て岩崎シスターズとして、復活を全国くまなくアピールしていくのが、最も効果的に返り咲く最高の手段だと思っているんですけど…。
(2009.10.5)
*その後のアナウンスによりますと、アルバム未収録曲やヴァージョン違いなども、もれなく各アルバムのボーナストラックとして収録し、本人によるアルバム紹介コメンタリーも新録。岩崎良美のキャニオンレコード時代の音源が全て揃う、永久保存用豪華BOX付き、最強のコンプリートBOXとなる模様です。
さらに特典として、LPの帯や封入ポスターを当時の紙質まで再現する「帯・ポスター復刻自作キット」(この付録はスゴイ!)が付くほか、プレデビューバージョンの「赤と黒」や、30年前の自身とデュエットした「赤と黒」も収録予定のボーナスCDもプラス。これは必携ですね!
(いずれも予定につき変更になる場合がありますのでご注意ください)
*この超充実BOXの特長と魅力をじっくり確認できる特設サイトもオープンしました!ぜひご覧ください。