東芝から50年、超おトクな2枚組の女性アイドルコンピ!
EMIミュージック・ジャパン。かつては東芝系としておなじみだったレコード会社ですが、2007年に東芝の手を離れその名が消えてしまった時は軽いショックを覚えたものです。
旧譜を愛する者といいますか、黄金時代を知る皆さんなら、東芝音工、東芝EMIという名前やロゴ(東芝レコードがスキでした)に知らずと愛着を覚えていたことでしょうし、イロイロ事情も変わってしまうと旧譜のカタログが出にくくなるんじゃないかとか、そういう不安もあったのではないでしょうか。
でも蓋を開ければ、マニアックなアイドルものまでが充実していた紙ジャケのEMI名盤プレミアム・シリーズとか、由紀さおりさんのシングルBOXとか、きちんと出してくださっておりますし、そんな心配は杞憂に終わりました。
そんなEMIですが、なんでも今年はアニバーサリーイヤー。1960年の東芝音楽工業としての創業から数えて、50周年なんですと。今回、これを記念し、“大人の音楽決定盤”となる2枚組のEMIプレミアム・ツイン・ベスト・シリーズ全50タイトルが、なんと2,000円ポッキリの超廉価で一挙リリースされるそうです!
周年の感謝還元か、ビックリするほどの記念プライスですから、気になるタイトルや音源があれば、おさえておきたいもの。
洋邦とりまぜた50タイトル、高度成長期の昭和歌謡や、エキスプレスレーベルに代表されるフォーク勢の実績が群を抜いているEMIですから、そういうモノにも惹かれますが、ココではやっぱり70年代〜80年代アイドルの「 プレミアム・ツイン・ベスト 昭和のアイドル・ベスト 」をご紹介しましょう。
50周年企画という名の通り、他社音源はなく東芝EMIに所属した女性アイドルがずらり。
まずは70年代前半のティーンエイジアイドル全盛期の東芝代表選手といえば、やっぱり伊藤咲子。中3トリオとは一線を画す大型新人として一心の期待を集め、EMIのコネクションも駆使したロンドンでレコーディングという華々しいデビューを飾りました。今回は初のトップテンヒットや「木枯らしの二人」や紅白出場曲「きみ可愛いね」という2大ヒットではなく、サッコの代名詞である「ひまわり娘」と三木たかしさん作の名曲「乙女のワルツ」が収録されてます。
スタ誕出身では、歌よりも一度も瞬きしなかったことが印象的だった片平なぎさ「純愛」も忘れられませんが、歌手としてはあまり実績を残せなかったのが残念でしたね。
今回は昭和歌謡ポップス・ベストの方に入れられている小林麻美しかり、デビューが3年早ければ絶対売れてたと思った五十嵐夕紀「えとらんぜ」、シンデレラガールの郁恵ちゃんのワリを食ってしまったホリプロの三谷晃代「絶交」、ポストキャンディーズのフィーバー「悪魔にくちづけ」、CBS・ソニーから移籍してきた相本久美子「5つの銅貨」などなど、70年代の東芝系アイドルって逸材は多いのに抜けられないイメージがありました。時代とリンクできていなかったというべきか…。
トーゼン外国人もやっていまして、マリーンのアイドル歌手時代、マリリンとして歌った「LOVE ME」、サンディー&サンセッツのサンディー・アイがサンディ・オニールとして歌った洋画「ナイル殺人事件」の主題歌「ブルー・ナイル」なども入っていますが、この流れでオススメはアグネスの留守中に香港から来たロウィナ・コルテス。ヤマハ系アイドルならでは、谷山浩子作の「銀の指環」はカワイイ名曲ですけど、何より日本語の正確さに脱帽したものです。
そんな中にあって、目立ったスマッシュヒットといえるのがナベプロが第二のピーナッツをめざしたザ・リリーズ「好きよキャプテン」。そして、人気の面では榊原郁恵や石野真子と渡り合い、70年代後半の東芝を支えた大場久美子であります。NM全盛期のためか、人気とレコードセールスは比例しなかったアイドル冬の時代ですが、クーミンはもう少しお歌の方がちゃんとしてたら、もっとイケてたような気がします。そういう残念な思いを胸に「スプリング・サンバ」を聴いてみると、感慨深いものがありそうです。
とはいえ、基本的に東芝ってその前は昭和歌謡の中心にいて、黛ジュン、奥村チヨ、小川知子、由紀さおりらを輩出してきた会社ですから、歌のウマイ人が好きなんですよね。
それが証明されるのが、80年代初頭に向かって展開された東芝EMIタレントスカウトキャラバン。ここからは第1回優勝の石坂智子、第2回の川島恵、第3回桑田靖子と、ビジュアルよりも歌唱力重視のアイドルを送り出します。どの人も安心して聴いていられる上質なポップス歌謡だし、強力なタイアップやプロモーションのもと売り出されたのですが、やっぱりここでも時代とはリンクしなかった…。
そのへん、社側でも認識してるのか、石坂智子のデビュー曲「ありがとう」や、桑田靖子の名曲「マイ・ジョイフル・ハート」は入っているものの、メグが漏れてます。
タイミングの悪さという残念感は、つちやかおり「恋と涙の17才」にも通ずるところがあるように思っています。金八先生のイメージが残ってるうちにデビューしたらきっと違ってたはずだし、82年組でデビューすることなくフッくんとも出会っていなかったかもしれませんね。
それはともかく、不遇の時代を経て、80年半ばに巻き返しを図った東芝EMI。その起爆剤となったのが、角川のお嬢さんお2人、薬師丸ひろ子と原田知世の移籍でしょう。今回は薬師丸さんが「メイン・テーマ」「WOMAN」という映画主題歌、知世ちゃんがミュージカル主題歌「ダンデライオン」、バースデイアルバムで再録音した「時をかける少女」というユーミン作品です。
ほかに女優系では沢口靖子の「FOLLOW ME」、映画主題歌では広田玲央名の「だいじょうぶマイ・フレンド」も久々のコンピ収録となるようです。
そして、85年にはついに本田美奈子が登場します。大ブレイクを果たした「1986年のマリリン」や、これに次ぐ大ヒット「Oneway Generation」を聴いていると、やっぱり類い希な才能を持ったアーティストだったことが確認できますね。
この成功が後進を大きく牽引し、立花理佐「疑問」、相川恵里「純愛カウントダウン」というロッテ枠、坂上香織「レースのカーディガン」、田村英里子「ロコモーション・ドリーム」といった正統派で一定の成功を収めていったのだと思います。
あれ、そういえば今回、西村知美が入っていませんが、なにゆえ…。
というEMIミュージック・ジャパンの歴史がわずか2000円でわかる好シリーズ、EMIプレミアム・ツイン・ベスト。ぜひ全50タイトルをチェックして、お気に入りを見つけてください。
(2010.5.17)