たとえば、ひとりで泣く夜に
背中をさすってくれるうた。
「からたち野道 花ふく小道 泣いたらだめよと虫の音小唄」
あるいは、彼岸のひとにさえ
また会えるよと諭してくれるうた。
「からたち野道 はるかな小道 あのひとのもとへと続く道」
大好きなこのうたを口ずさむとき、
決まって思い出す小さな文章があります。
それは、このうたをつくったMIYAからのメッセージ。
読みながらちょびっと涙して、それから何度もうなずいて、
かみしめるうち、すっかり覚えてしまった言葉です。
「ちょっとした神さまのいたずらで
いつかオモチャや本やTVや車なんかがすべて取り上げられた日が来たら
みんな毎日いらいらして家をこわしたり人を殺したりするでしょうね。
でも僕はだいじょうぶ。
カバンの中にしまっておいたステキな歌をひっぱりだして毎日毎日歌うでしょう。
あなたにもわけてあげたい。」(宮沢和史/「JAPANESKA」ライナーより)
もう20年近くも前、これを読んで、
はたと気づいて、自分のカバンの中を探ってみたのです。
そしたらば、びっくりするほど、たくさんのステキなうたが詰まっていました。
いつの間にこんなにしまっておいたかと、あきれるほどに詰まっていました。
もちろん、どれも小さな頃から、その時々に大好きだったうたばかりです。
どんなときであろうが、どこへ行こうが、いつも心のどこかに流れていたうたばかりです。
かつてはみんなに愛されて、聴かれ、歌われていたはずだのに、
やがて忘れられ、もはや廃れてしまったうたたち。
できることならもう一度、思い出してほしい。すべがあるなら誰かにつたえたい。
なぜなら、人生を歩く時、うたは必ず大きな力になってくれるのだから。
美しくて頼もしい、道連れになってくれるのだから。
そう信じつつ時が流れ、いろんな偶然が重なり、このサイトを立ち上げました。
それが10年前の今日、1999年4月1日のことでした。
何からかの役割を果たしたいという思いを抱いていたものの、
出会ったり別れたり、傷つけたり傷ついたり。
やめることだけを考えて過ごしてきた10年のような気もするし、
それぞれの1日をただひたすらに積み重ねるうち、
いつのまにか訪れていた10年のような気もします。
それでも、なんとかここまでこられたのは、
たくさんのステキなうたをつくって、歌って、届けてくださった方々と
こうしてお読みいただいている皆さんがいたからこそ。
このうたにのせて、心からの感謝を捧げます。
春の野道を歩きながら、中崎あゆむ
(2009.4.1)
note:CD「JAPANESKA」1990.9.21発売
80年代末のバンドブームの中で、違った輝きを放ったバンド。それがTHE BOOM。これは、矢野アッコちゃんとのコラボ「釣りに行こう」でファン層がさらに拡大した後に出て、オリコン最高4位をマークしたサードアルバムです。日本の島唄を紡いでゆく始まりのような一面も持った作品で、これまた名曲の「中央線」も入っていますが、ベストはやっぱり「からたち野道」。心霊レコード(!)として話題になったことでこのうたを知った人も多いとか。92年のCDブック・SAKANA BOOKSや、93年のソニーミュージック25周年シリーズ企画盤でシングル化。近年に発表された、山弦が参加し奄美島唄のRIKKIとデュエットしたバージョンも素敵ですね。
◎いまCDで聴くなら… JAPANESKA