ナツメロ喫茶店/うたノートvol.5


ナツメロ喫茶店

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  こころに残るあのうたを、力をくれるそのうたを、ちょこっと綴っておきました。

vol.5

多感日記/清水由貴子

(作詩・阿久悠/作曲、編曲・三木たかし EP「多感日記」1978)


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 あの頃くらいからでしょうか。真面目に頑張ることはダサイだとか、人に譲ったり、一歩引いてしまったりするのは損することだとか偽善だとか、何でも言ったもん勝ち、声の大きいもん勝ちで、思いやる気持ちは単なる建前であってホンネを露わにした方がカッコイイとか、迷惑かけなきゃ何やったっていい、騙したとしても騙される方が悪いんだとか言うようになって、それまで日本人の美徳とされてきた生き方が明らかに主流でなくなってしまったのは…。

 物が心を支配し、目に映ることだけが価値基準になってしまった端境期であったような気がします。そしてワタシは今になって、ユッコが売れなかったことの一因に思い当たります。

 ワタシも流され、時代の主流である考え方に惑わされながら生きてきましたし、こんな世の中になってしまって…なんて言う資格はないのですが。

 ユッコの、ほのぼのとしてるように聴こえるけどすべてを受け入れて生きることの大切さを説く、このカントリーポップを聴いてたら、これまでの日々をしみじみ悔い改めるとともに、今を変えるために大層なことはできなくても、これからの世代のために何かをやっていかなければ、という気持ちが湧いてきます。

 すべては「多感日記」が告げるように“そんな仕組み”であって、太古から繰り返し、永遠に解き明かせない哲学なのかもしれないけど、「うた」という目に見えないものの存在に導かれ、助けられ、力を与えられて、生きてこられた以上は、その存在とパワーを伝えてゆくことぐらいはできそうな気がする。

 なんていう風に、「多感日記」を聴いていたらホント多感になって、いろんなことを考えてしまうのです。

(2007.4.16)


note:EP「多感日記」1978.6.1発売
 ピンク・レディーを抑え「スター誕生!」第16代グランドチャンピオンに輝き、77年3月「お元気ですか」でデビューした清水由貴子。久々の大型新人として、阿久悠らが万全の体制でデビューさせようと慎重に準備をしましたが、それが裏目に出て、歌手として大成できなかったような印象が残ります。このうたは第5弾ですが、本人のキャラクターに最も似合っているように思います。


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