ナツメロ喫茶店/うたノートvol.11


ナツメロ喫茶店

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  こころに残るあのうたを、力をくれるそのうたを、ちょこっと綴っておきました。

vol.11

フレンズ/ピンク・レディー

(作詩・阿久悠/作曲・都倉俊一/編曲・萩田光雄 LP「星から来た二人」1978)


 巨星、墜つ。

 ここ数年、テレビで拝見する阿久悠さんはめっきり弱々しくなられ、かつて「スター誕生!」で毎週のように見た雄姿とは重ならなくって、どうしようもない歳月の重みを感じていたものでした。とはいえ、作詞家生活40周年を迎えられ、新たな抱負も語っていらしたので、まだまだご活躍されるものだと信じて疑わなかったワタシだったのです。

 尾崎紀世彦、森田健作、山本リンダ、森昌子、桜田淳子、フィンガー5、伊藤咲子、黒木真由美、岩崎宏美、沢田研二、西城秀樹、新沼謙治、清水由貴子、石野真子…子ども時代から、阿久さんが紡いだ言葉の数々をいくつ口ずさんできたことでしょう。コピーライターでいらしたせいなのか、タイトルや歌詞でのハッとする言葉の選び方、字配りの仕方。放送作家でいらしたせいなのか、音声に出した時に映える言葉の選び方。歌であるがゆえの、歌い言葉としての魅力。ワタシは知らず知らずのうちに、阿久さんから大きなものを教えていただいたような気がします。

 最も鮮烈で、最もよく聴いて、最も歌った阿久さんの詞は、やはりピンク・レディーのうただったように思います。詞を読むたびに、うたを聴くたびに、踊りを見るたびに胸が躍った強烈なシングル曲も大好きですが、ふと思い浮かんだのは、素朴でかわいいこのうたでした。

 ご存じ、アニメ「ピンク・レディー物語〜栄光の天使たち」のエンディング・テーマ(番組で流れたのはヤング・フレッシュのバージョン)ですが、ワタシはこのうたの二人の関係にとてもあこがれていました。いま改めて詩を読むと、同じ夢を持ち、同じ道を歩み、ともに生きていこうとする二人の関係は、絶望の多い今の時代だからこそなのか、とても心に響きます。

 元来子ども向けのこのうたには、お互いを思いやり、よりかからずに、ともに生きている。そんな人間の絆が、とても平易な言葉で描かれています。それは、友だちや仲間だけでなく、家族であっても、恋人であっても、それぞれの関係の中で、同じ世にともに生きる者同士という意識。馴れ合いや依存し合うことなく、お互いを尊重した上に成り立つ、大切な結びつきのようにも思えます。

 近年、日本の美しい文化の崩壊や荒廃した親子関係について、阿久さんの懺悔にも似た手記を目にしたことがありました。時代を創ってきた阿久さんにしか言えないであろう一文を読んだ時、ワタシはその文意にいたく共感するとともに、ビックリするような世の中になってしまった原因と責任は、すべて阿久さん世代ら戦後ニッポンを好きなように牽引していった人たちにあるのだと思いこんでしまいました。

 けれど、このうたを改めて聴き、改めて口ずさんだ時、それは間違いだったと気づいたのです。たとえばこのうたのようなメッセージは数限りなく発信されていたのに、鈍感にも気づかなかったのは、ワタシたちだった。いや感じていたのかもしれないけれど、楽しいことだけに夢中になってしまってきたのは、ワタシたちだった。カッコ悪いとか、ダサイとか言っちゃって、そういった大切なものをきちんと見つめようとも、受け継いでいこうともしなかったのも、ワタシたちだった。そう、先達だけが悪いんじゃなく、連綿と続く時代を生きているみんなの責任ではないかということに気づいたのです。

 そういえば、阿久さんが育てた2人の天使は、件のアニメで「遠い、遠い道です。でも、努力すれば誰でもたどれる道です。この遠い道を私たちは一生懸命に歩き続けたいと思います」と語っていました。

 残されたワタシたちにできることは何だろう。このうたのように、同じ世の中を生きる者同士、信じ合うことかな。みんながいい方へ進んでいけるよう、それぞれにできることを少しずつ実行していくことかな。絵空事のように思えて気が遠くなってしまうけど、いま世の中で起こり続けている過ちの数々をただ責めたり、ただ嘆いたりするのではなく、ありのままをきちんと受け止めて、自分にできる何かの役割を果たしながら歩いていきたい。まだ間に合うのかわからないけど。もう同じ夢を見合うのは無理なことかもしれないけど。

これが、阿久さんが最後に教えてくれたこと。このうたを口ずさみつつ、小さな決心に涙を流すワタシです。

(2007.8.1)


note:LP「ピンク・レディーの星から来た二人」1978.11.5発売
 全盛期もピークを過ぎた78年11月のリリースであり、オリコン最高10位のLP。シングル以外はレコーディングする時間も取れなかったというPLにとって、スタジオ録音盤としては2枚目となるオリジナルアルバム。といっても、数多の冠番組の主題歌、CMソングなどを歌い飛ばした即席盤という印象は否めません。このうたは、本文中にもあるようにリリース時にスタートしたアニメのエンディング・テーマでした。

◎いまCDで聴くなら… 星から来た二人  


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