ナツメロ喫茶店/うたノートvol.12


ナツメロ喫茶店

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  こころに残るあのうたを、力をくれるそのうたを、ちょこっと綴っておきました。

vol.12

いつも心に太陽を/郷ひろみ

(作詩・阿久悠/作曲、編曲・ミッキー吉野 EP「いつも心に太陽を」1979)


 明日という希望。たとえ今日が絶望に終わっても、生きている限り、心に太陽を持っている限り、希望という明日はきっと訪れる。だから、生きる。


 言動だけでなく、奇抜なうたやコスチュームのせいも多々あると思うのですが、郷ひろみのことを奇人変人だと思っていたワタシ。誤解なきように申し添えると、ワタシは子どもの頃から、周りを気にするフツーの人より筋の通った変人に惹かれてやまなかったりしますので、ひろみのことが大好きでした。

 特に79年のひろみは、転機だったのでしょうね。筒美先生の手を離れいろんな楽曲に挑戦したり、ロスアンゼルスへと単身渡米してみたり、新たな自我が首をもたげてきたようで、その変人ぶりはとても際立っていたように思います。

 そんな中で発表されたのが、このうた。変人どころか、ミッキーさんのとても真っ当で心晴れやかな王道ポップスに、これまたひたむきな阿久さんの詞。ゴダイゴファンだったワタシを大いに刺激したのは言うまでもありません。詩や映画のタイトルでも有名な、真理とも言えるタイトルも素敵ですが、ワタシは珍しく明朗快活でストレートなひろみのうたに驚きを覚えたと同時に、初めて聴いたその時から曲に合わせてハンドクラッピングしてしまうほど、大好きになっていました。

 生というものを大きく肯定し、ひたむきに生きる人間だけが持つ美しさ、素晴らしさを謳ううた。阿久さんの熱い熱いメッセージが込められ、ヒデキが歌ってもおかしくないような青春賛歌だけど、きっとひろみのような深さは出なかったような気がする。

 それは「君の明日は君しか知らない」「ぼくの明日は君には見えない」という、それまでの青春ものと決定的に違う自立心の存在です。人間は最終的にはひとりで、自分だけの道を歩いていくもの。それはけして哀しいことではなく、真の思いやりや愛は、孤独を知って初めて生まれるものだから、むしろ喜ばしいことなんだよ。このうたを聴くたび、ひろみを通して、そんな風に阿久さんが語っているような気がするのです。

 耳年増キッズだったワタシも、三十年近く経ってやっと実感が伴ってきた現在。青春期は過ぎてしまったし、今さらLookin’for Tomorrowなんてと笑われそうだけど、やはり明日という希望を胸に、今日という一日をひたむきに生きていきたい。もちろん、唇にはうたをのせて。

 そして、同じ時代を生きるみんながこのうたを聴いて、大好きな誰かのことを、一人しかいない自分のことを、もっともっと大切に思ってくれたらいいな。もちろん、いつも心に太陽を昇らせて。

(2008.8.7)


note:EP「いつも心に太陽を」1979.6.21発売
 オリコン最高12位。ニューミュージックのあおりを受けてか、78年9月の「ハリウッド・スキャンダル」からこの曲まで、レギュラーシングルではデビュー以来初めてオリコントップ10入りを逃す不本意な1年を送ったひろみ。でもそのおかげで作家陣を試行錯誤し、ニューミュージックとも新たな出逢いを果たし、こんなに素敵な曲が生まれました。ノリにノッてたゴダイゴのミッキーさんの書き下ろしは、ハンドクラッピングが印象的な底抜けに明るいポップス。ひと足早く出た布施明の「君は薔薇より美しい」の兄弟と言えますね。そして忘れてはならないのが阿久さんの詞。一見ヒネリがないように見えて、この時期のひろみの生き方をズバリ示しています。

◎いまCDで聴くなら… Single Collection of Early Days vol.3  


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