田舎から東京駅に着いたけど、都会はつらいことが多い。やっぱり田舎の方が自然に生きられ、きっと幸せになれるから、二人で帰ろうよ。はっぴいえんどの松本隆には珍しい、ハッピーエンドのストーリーが大好きだった。
それから二十年近く経って、そのうたの続きを聴いた時、胸が詰まって、少しだけ泣いた。いや、正確には続きではなく、勝手に「続・赤いハイヒール」と思った、うただけど。そこには、もはや希望はなく、やりきれないけれど甘い、無常感だけが漂っていたからだ。
あの淋しがりやの子は、うちあけ話をまだ続けていた。向かい合う相手は同級生の友達。おさげの少女だった日、一緒に東京駅に着いた男の子だった。
そこで語られるのは、付き合っていた彼が上司の娘と結婚してしまったこと。部屋代も大変らしいこと(ノックに怯えるほどだったかは分からない)。
忙しい日々。新しい人。変わる心。なくす夢…。ただモノローグのように話すあの子を置いて、友達は黙って席を立つ。そしてあの子は、哀しく咎めるように後ろ姿を見る…。
日記に挟む わすれな草
花言葉なら「忘れないで」
私は過去を わすれな草
押し花にして 生きていくの
同情も、救いようもないから、余計に哀れで泣けてくる。それは、いつも自分から孤独や厳しさを選ぶ人のような、そんな瞳をしてた裕木奈江のせいかもしれない。太田裕美だったら、どうだろう。この「続・赤いハイヒール」を昇華してくれるだろうか。
(2008.1.24)
note:CDS「わすれな草」1994.4.21発売
太田裕美ファンなら泣いて喜びそうなゴールデン・トリオによる名曲で、オリコン36位をマーク。裕木奈江ってシングルよりもアルバムが売れていたように思いますが(松本さん渾身の「水の精」は名盤)、そういうのも太田裕美っぽい。歌唱は浅田美代子を切なくさせたみたいですけど。酒井さんや松本さんを魅了しましたが、バッシングしていた人たちの色眼鏡からすると、表現者として一流なのではなく魔性のなせるワザとか言うのでしょうか…。しかし、才能ある人は必ずまた前に出てくることを身をもって証明しました。
◎CDで聴くなら… わすれな草