吹きすさぶ風に、ただ一人よるべなく立ちつくす時。
私ならこのうたを胸に、空を見上げることでしょう。
それが冷たい雪空であってもいい。
体の奥底から、生きる力が湧いてくる気がする。
願わくば天に火をくべたような茜色が、なおいい。
このうたは、そんな風にやさしく強くとても厳しく、いつも気高い愛に満ち満ちて、見守っていてくれるような存在なのです。
詩もメロディーも夢のように一流で美しいけれど、この上なく崇高に思えるのは、やはり山本潤子さんのボーカルの賜物。
松崎しげるさんやサーカスとの競作でしたが、彼らのうたにはそこまで胸打たれることはありません。
あの火の鳥が羽ばたいてゆく先は、過ぎ去った思い出の向こうか、まだ見ぬ美しい未来か。
それとも、あの懐かしいふるさとか。
いずれにしても、私はこのうたに見守られながら、今日も人生の細道をただひたすらに歩いています。
(2007.3.28)
note:LP「SWING」1978.6.5発売
赤い鳥を経て、74年に結成されたハイ・ファイ・セットが「フィーリング」を大ヒットさせた77年の翌年に発表したアルバム。タイトル通りスウィング感にあふれたアルバムの中でも異彩を放つのがこの「火の鳥」です。手塚治虫原作、アルファの村井邦彦が制作した同名映画のために、ミシェル・ルグランが書き下ろした曲に谷川俊太郎が詩をつけたもの。シングルカットはされませんでしたが、松崎しげる、サーカスとの競作が話題となりました。ハイ・ファイ・セットのバージョンは、ピアノとストリングスにのせた山本潤子の歌声が崇高さを感じさせる素晴らしい出来ばえです。
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