そんなことは分かっているけど、このうたを聴くと心だけは、初めて聴いた日−いつか訪れるであろう青春に憧れ、胸はずませていた時代−へとまっしぐらに向かいます。
楽しい日々は夢のように過ぎ去ってしまうことも、喜びと同じくらいの悩みが訪れるということも、何も知らずに、ただ青春を待っていたあの日へ。
そんな憧憬は、やはりヒデキによるところが大きくて、ヒデキがこのうたを歌っていなかったら、この胸に存在していなかったかもしれません。ワタシにとって、ヒデキは、まだ見ぬ青春の象徴だったのです。
モリケンよりはるかにオシャレで、不良っぽくてカッコいいのに、その実とても正義で、がむしゃらな中に大きな優しさを持っていた人がうたう、どこまでもまぶしいうた。
そんなヒデキも、大病を患い、もう五十代となり、あの精悍で溌剌とした面差しはなくなってしまったけれど、このうたの中では、若く優しい兄貴のままで、二度と来ないからこそ美しい青春を語ってくれます。
苦しみに満ちていた大きな蹉跌も、やがて甘い想い出に変わることを知ったいま、ノスタルジーではない希望の力を、このうたに見出し、今日も救われているワタシです。
(2007.4.27)
note:EP「青春に賭けよう」1973.2.25発売
デビュー2年目に発売された第4弾シングルで、ワイルドタッチの多かった初期ヒデキ作品では珍しく爽やかな青春賛歌。次作「情熱の嵐」での本格ブレイクの引き金をひきました。これをきっかけに、チャートアクションでは先行していたゴロー、ひろみと肩を並べるようになり、新御三家が定着。女性アイドルはどんどん入れ替わっていきましたが、3人の不動の地位は80年になるまで微動だにしませんでした。
◎いまCDで聴くなら… GOLDEN☆BEST 西城秀樹 シングルコレクション