ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#1155
イルカ アーカイブ Vol.8「JULIA」「LOOP CHILD」「Heart Land」
2023.8.23発売、CRCP-4066870、¥4,500<税込>) *3枚組CD

第8弾は、80年代新境地のイルカ!

 昨年は、デビュー50周年の締めくくりとして記念のオリジナルアルバム「 うた の こども」を発表したイルカさん。
 コロナ禍でもライフワークであるコンサート活動を続け、近年は太田裕美さんとのジョイント「ラブリー♡コンサート」も各地で大好評。ソングライターととしても、NHK東北温泉地応援プロジェクトとして純烈は発表した「とうほくであったまろう」の作曲を担当するなど、半世紀を超えても精力的な活動を続けています。
 
 そんな彼女の軌跡をたどる企画といえば、2013年にスタートした「イルカ アーカイブ」シリーズ。
 単なるリマスタリング復刻ではなく、ボーナストラックや自身が明かす秘話満載のライナー付きとあって、コアなファンを大喜びさせている好企画です。
 これまでにVol.1「イルカの世界」&「夢の人」とVol.2「イルカ・ライヴ」&「植物誌」( こちらで紹介)、Vol.3「我が心の友へ」&「FOLLOW ME」とVol.4「ノエルの不思議な冒険」( こちらで紹介)、 Vol.5 「いつか冷たい雨が」「あしたの君へ」( こちらで紹介)、Vol.6 「BIG CHALLENGE」( こちらで紹介)、Vol.7「冬の贈り物」( こちらで紹介)が発売。
 
  いずれも好評を博してきましたが、2年ぶりに第8弾の「 イルカ アーカイブVol.8 「JULIA」「LOOP CHILD」「Heart Land」」( Amazonではサイン入りメガジャケ付きも!)が登場!
 今回は、1982年から85年にかけて発表されたアルバム3タイトル、「JULIA」「LOOP CHILD」「Heart Land」となっております。
 
 ソロデビューした70年代はノエルのイラストに代表されるようにメルヘンタッチで、アコースティックなほのぼのフォークを展開していたイルカも、次第にその延長線上にあったウェストコーストサウンドのエッセンスを加味したニューミュージックへ。
 80年からは、初期のイメージは保ちつつも、ぐっと洗練された大人っぽいサウンドが主流となって、シティポップやアーバンなロックのムードへとシフトしましたが、まさに今回の作品群は、その路線上で新境地を開拓していった意欲作。
 
 まず、82年6月リリースのLA録音盤「JULIA」は、鈴木茂アレンジで中学1年でビートルズの洗礼を受けたというロック少女・イルカの音楽への思慕にあふれたアルバム。
 結婚10周年を記念して夫君でありプロデューサーでもあったカメ吉君(神部和夫さん)に贈った「吟遊詩人(マイスタージンガー)」も含め、自身の音楽ルーツへと回帰したような印象が漂いますが、その筆頭がオープニングのタイトル曲。ビートルズのカバーであり、ジョン・レノンがオノ・ヨーコへの思いを亡きママに重ねて作ったというナンバーですが、当時のイルカはママにちなんで命名されたジュリアン・レノンのエピソードも含めて語っていた記憶があります。
 ちなみに、LP盤の特典だったソノシートには前年の武道館ライブより、これまたビートルズのカバー「 P.S. I LOVE YOU 」が収録されていましたが、今回はボーナストラックとして収録される模様です。
 なお、このアルバムからのシングルカットはありませんでしたが、ラジオでは、プロモーションリカットされた「愛の飛行士/僕のラストソング」がヘビロテされていました。
 
 続く「LOOP CHILD」は83年9月発表。レコーディングは日本ですが、LAでミックスダウンしたアルバム。
 当時大きな話題を呼んでいたのは、音楽ではなくTBSドラマ「オサラバ坂に日が昇る」への出演。イメージにぴったりの救護院の寮母さん役をナチュラルに好演し、劇中に流れた70年代の名曲「風にのせて」で新たなファン層を獲得したイルカですが、その直後にリリースされたのがこのアルバムです。
 当然「風にのせて」は入っていませんが、リードシングル「LOST LOVE」をはじめ、イメージキャラクターを務めていた梅丹本舗のCMソング「ひぃふぅみぃのよ」、メナード化粧品のCMソング「インディゴブルー」、妹分・沢田聖子に提供した「ドール・ハウス」「青春の光と影」のセルフカバー、幼児だった冬馬君の詞に曲をつけたものまで、バラエティー豊かな構成。
 ただ、アレンジには初期からの石川鷹彦さんのほか、シティポップを構築した井上鑑さんや伊藤銀次さんが担当していたため、「風にのせて」路線を求めて聴いたらサウンドが違っていてショックを受けた人もいたようです。
 
 さて、オーバーオールにギターの弾き語りスタイルもあってか、シンガー・ソングライターのイメージが強いイルカですが、最大ヒット「なごり雪」をはじめ人気曲は正やんらの提供曲が多く、ボーカルの魅力に秀でているのですよね。
 85年4月発売の「Heart Land」は、そんなイルカのボーカリストとしての魅力をクローズアップ。林哲司さんがサウンドプロデュースした、まさにシティポップなAORアルバムです。
 従来のフォーク・ニューミュージック系アーティストのプレゼント曲ではなく、秋元康+林哲司コンビなど歌謡曲系(当時は林さんもそういう括りでした)作家ということも話題となりましたが、その代表曲は、先行シングルとなった「もう海には帰れない」。秋元+林コンビによるナンバーで、リリース後、安田成美がヒロインを務めたTBSテレビ小説「愛の風、吹く」主題歌に起用され、じわじわとスマッシュヒットしました。
 イルカの自作曲であっても来生えつこさんらが作詞していますので、アーバンな印象。その中での注目は、同時期に曲提供して話題を呼んだ美空ひばりさんも歌った「ビロードの夜」に尽きるでしょう。
 ともあれ大半が林哲司作品につき、林さん50周年を迎えた今年、いつシティポップの名盤として火がついてもおかしくありませんから、今回のリリースはグッドタイミングといえますね。
 
 歌謡曲系ボーカリストに徹したといえば、89年から91年にかけて、荒木とよひさ+三木たかし作品「悲しみの証明」「時の子守唄」や「終恋」(作詞中村ブン)という三部作をシングル発売したイルカですが、今回はそれらと新録音のカバー楽曲がボートラ収録されるとのこと。
 いずれにしても、今回の3タイトルは、新展開という意味でも、イルカというアーティストを創り上げ、その魅力を知り尽くしたカメ吉君の手腕がより発揮されたアルバムといえそうです。
 果たして、イルカの書き下ろし解説とメッセージにはどんな秘話が掲載されるのでしょうか。購入特典も検討されているとのことですので、どうぞお楽しみに!
 
 

(2023.5.29)

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