廃盤再プレスの女王、キンラメPOPS全配信へ！

　1976年に開催され、あの榊原郁恵さんを生んだ「第1回ホリプロ・タレントスカウトキャラバン」への出場をきっかけにホリプロ入り。苦節4年の下積みを経て、81年2月、EPIC・ソニーから「東京チーク・ガール」でデビューした河合夕子さん。
 
　デビュー曲をスマッシュヒットさせ、83年までに3枚のアルバムを発表した後、ホリプロを離れてからは楽曲提供やアニソン、バックコーラスなどでも活躍。現在もコーラスのプロフェッショナルとして活動なさっていますが、ソニーミュージックのオーダーメイドファクトリーでは、久保田早紀さんと並ぶ廃盤再プレスの女王（？）として知られる存在です。
 
　何せ「 リトル・トウキョウ 」（ こちらで紹介）、「 フジヤマ・パラダイス 」（ こちらで紹介）、「 不眠症候群（ふみんシンドローム） 」（ こちらで紹介）という3枚のアルバムは、2008年から翌09年にかけ、候補に挙がるやいなやすぐさま復刻。
　復刻されたらされたでオークションで高騰し、転売ヤーたちに投機対象アイテムとして認定され、その後も何度もアンコールプレスを繰り返すなど、現役時代を知る者には信じられない人気ぶりを見せつけたのですからね！
 
　その3枚のアルバムは、OMFではまだCDとしての入手が可能ですが、このたび、ボーナストラックそのままに、「 リトル・トウキョウ」「 フジヤマ・パラダイス」「 不眠症候群」として配信開始となりました！
 
　夕子ちゃんといえばタレント性も高く、「たのきん全力投球！」や「笑って！笑って!!60分」などのテレビで、東京タワーが乗ったキーボードを叩きながら弾むように歌ったり、津村順天堂提供の「カックラキン大放送!!」でクールバスクリンのCMソング「バスクリン・ビーチ」を歌っていた姿が記憶に残っている人も多いでしょう。
 
　鶴瓶みたいなアフロパーマにアラレちゃんメガネというルックスや、アシスタントを務めた鶴光の「オールナイトニッポン」のせいでイロモノ的なイメージを持っている人や、コピーライター出身でまだ駆け出し作詞家だった売野雅勇さんと詞を共作していたため、摩訶不思議、奇妙奇天烈なキワモノ的なイメージを持っている人もいますが、自作した楽曲は、水谷公生さんがアレンジを担当したサウンドも含め、キッチュではなくポップスの王道。
 
　売野さんとの詞はまさにイマジネーションをかきたてるコトバのパッチワークでしたが（夕子ちゃんとのエピソードは著書「 砂の果実: 80年代歌謡曲黄金時代疾走の日」に詳しいです）、夕子ちゃん自作のエキゾチックなメロディーにのせると、下世話ではない和洋中折衷の上質ポップになるんですよね。今聴いても普遍的に思えるのは、コーラスを担当した元愛奴・町支寛二さんの力も大きいと思っています。
 
　ファーストアルバムは、東京、香港、ハリウッド。南へ回ってシンガポールと、環太平洋、世界各地をかけめぐる無国籍でトロピカルな80'sの雰囲気。
　セカンドは、よりオリエンタルに豪華絢爛、サクラ、フジヤマ、黄金の国・ジパングPOPSの饗宴。
　そしてサードアルバムは､絹の道を抜けて中近東、ヨーロッパへと移動。哀愁ヨーロピアン、ブリティッシュロック系のミディアムバラードがメインで、まさに陽から陰へのグラデーション三部作といった印象です。
 
　今回は、OMF復刻盤がベースということで、「リトル・トウキョウ」にはデビュー曲のB面「ルートB♭m」（名曲！）、「フジヤマ・パラダイス」には「ハリウッド・ラバーボール」のB面「スターライト・エアポート・ブルース」と「フジヤマ・パラダイス」のシングルバージョン、「不眠症候群」には、ラストシングルのB面「REDS AEROBICS（JAPANESE ENGLISH）」に加え、おもしろカセット「オールナイト・ホンコン」のダイジェスト版が収録されています。
　ちなみに「オールナイト・ホンコン」はレーベルメイトだったシャネルズの「ギャグ噴射～右手のマニキュア～」の姉妹編のような構成で、プロモーション用の非売品から市販品へと昇格した企画盤。ボートラ収録されているのは、イントロや曲間で繰り広げられた田代マサシや小林克也とのコントが入ったナンバーのみとなっております。
 
　アイドルフリークには、ホリプロの後輩・大沢逸美がカバーした「チャイナタウンでスクールデイズ（香港街学校日々）」「ヨコハマ・エナジー」「上海慕情exotica」などキャッチーでポップなナンバーがおなじみでしょうが、彼女の場合、バラードも秀逸。
　前述した「バスクリン・ビーチ」（タイアップは後から付いたもので、アルバム曲からシングルB面、そしてＡ面へと昇格）、セカンドの「太陽の下のラスト・ワルツ」「蝶々夫人のララバイ」、サードの「スノー・ビーチ」「ペルシャン・ルージュ」「避暑地の雨」「去年の夏、エーゲで」などなど。
　売野さんのキッチュで奇想天外なんだけど、それでいてデカダンでホロリとさせる歌詞も相まって、病みつきになる魅力がいっぱいです。
 
　OMFは通販限定だったので、配信でぐっと気軽に聴けるようになりますが、個人的にはやっぱり歌詞カードやビジュアルの付いたCDがオススメ。
　何と言っても売野さんと作った歌詞を、きっちり追いながら聴いていただきたいと思います。
 
　あと欲を言えば、一時リリースが検討されていたような気がする「GOLDEN☆BEST」が日の目を見ればいいですね。シングルカットの王様、EPIC・ソニーならでは、9枚（うち1枚は同内容ですが）もシングルを出している夕子ちゃんですから、シングルコレクションも出てしかるべきと思っております。