7曲追加で50周年ベストがヴァイナル化！

　振り返れば2022年、レコードデビューから50周年というタイミングでスタートしたユーミンのアニバーサリーイヤー。
　オールタイム・ベストアルバム「ユーミン万歳！～松任谷由実50周年記念ベストアルバム～」（ こちらで紹介）を皮切りに、約45分間の40曲メドレーを敢行した「SURF&SNOW in Naeba」、全国16都市で全54公演、57万人動員という自己最大規模となったアリーナツアー「The Journey」、「今だから」の初CD化が実現したコラボベスト「ユーミン乾杯!!～松任谷由実50周年記念コラボベストアルバム～」（ こちらで紹介）まで、さまざまな企画が目白押しでしたが、アフター50周年のタイミングで、「ユーミン万歳！」がヴァイナル化され、アナログBOXセット「 ユーミン万歳! [6LP+ブックレット]<数量限定盤/クリア・レッド・ヴァイナル>」として登場することになりました！
 
　CD盤「ユーミン万歳！」はオリコンチャートで１位を記録。1970年代から2020年代まで6つのディケイドで1位を獲得したことでギネス世界記録に認定されるという快挙をもたらしましたが、CDが3枚組だったのに対し、今回のアナログBOXセットは6枚組。
　もちろん音質重視のための措置でしょうが、今回はレコード盤の特性を考慮して曲順も変更。さらには、CD未収録の7曲を新たに追加したボーナスディスクをプラスという、単なるヴァイナル化とはいえないスペシャルセットになるようです。
 
　新たに追加された7曲の最大の目玉は、6分にもおよぶロングミックス・クラブversion「ダイアモンドダストが消えぬまにーGOH HOTODA 2024 remix 」。その他は、CD収録用にミックスマスタリングされたものの未発表だったversionがベースになるようで「BLIZZARD」 「14番目の月」 「COBALT HOUR」 「少しだけ片想い」 「12月の雨」 「Autumn Park」の6曲で、いずれも本編同様、GOH HOTODAさんが新規カッティング用マスタリングを施しているとのことです。
　ジャケットのイメージを映したクリアレッドのカラーレコードという仕様をはじめ、6枚それぞれシングルスリーブのジャケットが付いている上、 LPサイズ 豪華化粧箱入りで40Pのブックレット付き。高額商品ではありますが、CDを持っていても入手せざるを得なくなるような、コレクター心をくすぐられるLPｰBOXとなっています。
 
　ここでユーミンのアナログ盤をひもといておきますと、オリジナルリリースがアナログ盤だったアルバムは89年の「LOVE WARS」まで。
　先日、ユーミン自身がレコードの話題で自身のアナログ盤の再発はされていない旨の発言をされていましたが、実際は99年の松任谷時代の一挙リマスタリング再発が行われた際、「紅雀」から「LOVE WARS」までのLP17タイトルがアナログ復刻されております。
　また、近年のヴァイナルブーム以降のオリアル「宇宙図書館」「深海の街」は、LPが組み込まれた限定セットが出ておりますが、CDに完全移行しLPがリリースされなくなった90年の「天国のドア」から13年の「POP CLASSICO」まではアナログ未発売なんですよね。
　よって、今回のLPｰBOXは初アナログ化となる曲も多数。ミックスが施され、オリジナルとは別物も多数ではありますが、楽曲の初レコード化という意味では貴重だといえるでしょう。
 
　ちなみに、昨今のヴァイナル再評価という意味では荒井時代こそふさわしいのではとは思いますが、99年の松任谷時代アナログ復刻時にはまだアルファが原盤権を有していたせいか、13年にジブリ関連で「ひこうき雲」のLPセット（ こちらで紹介）が出たくらいではないかと思います。
　荒井時代の作品は、70年代に東芝盤が売れに売れたことや80年代にアルファが再発を繰り返したこともあり、入手困難なブレイク前のプレス盤以外は中古での入手が比較的楽な状況の影響があるのかもしれませんが…。
 
　個人的には99年のオリアル紙ジャケBOX「YUMI MATSUTOYA 1978-1989」をグレードアップされたみたいな形で、荒井時代からのオリアルを帯付きで紙ジャケBOX化していただきたいですし、何よりも純粋なシングル音源によるコンプリート・シングル・コレクションをジャケットブック付きで企画していただきたいと思っておりますが、全曲配信（ こちらで紹介）のみならず全曲ハイレゾ配信（ こちらで紹介）が完了している今、CDではもう難しいでしょうかね。
 
　なお、LPｰBOXに先駆けて「50th Anniversary 松任谷由実コンサートツアー The Journey」の映像ソフト（ブルーレイは「 THE JOURNEY 50TH ANNIVERSARY コンサートツアー＜Blu-ray Disc＞ 」、DVDは「 THE JOURNEY 50TH ANNIVERSARY コンサートツアー＜DVD＞ 」）がリリース決定とのこと。
　このツアー、モチーフに既視感はあっても、ユーミンがまた別な次元へと歩みを進めたといえる完成度の高さに右脳と左脳が刺激を受け、また見たい、また見たいとつい遠征を繰り返しましたが、WOWOWでのオンエアを見てちょっとガッカリ。最初の「シャングリラ」のビデオと同様、アングルや編集、余計な効果のせいというか、会場で体感した感覚の再現が全くできずちょっとフラストレーションがたまっております。「THE CITY IN THE DEEP SEA 深海の街」ツアーは映像も実際と負けず劣らず素晴らしかったので、仕掛けと見どころの多いアリーナツアーの映像化の限界なのかもしれませんが…。
　といっても、生の感動の再現を求めるというこちらの要望が高すぎるだけで映像作品としては一流。ユーミンならではのビジュアライブの真髄が結晶化した、“もののあはれ”のスペクタクルとでも言いましょうか。
　セットリストからパフォーマンスまで、ユーミンのテーマである無垢と老成、フィジカルとメンタル、西洋と東洋、ファンタジーとリアルという、相反する陰陽のバランスが醸すわびさび感が得もいわれない感じだと思いますので、未見の方はぜひ。
　WOWOWでは放送されなかった横浜会場恒例のトリプルコール「海を見ていた午後」も収録されるようですし、特典映像のドキュメンタリー「1057 days of "The Journey”」や、プロデューサー・マンタさんから見たツアーの記録「DIRECTOR’S NOTE」が掲載されたブックレットなど、パッケージとして貴重であることに間違いはありません！
 
 

＊LPの発売に先駆け、5月29日に能登半島地震災害義援金チャリティーCDシングル「acacia[アカシア] / 春よ、来い (Nina Kraviz Remix)＜期間限定販売(チャリティシングル)＞」がリリース決定！