40周年記念ワーナー復刻も、ついにフィナーレへ！

　先月リリースされた林哲司トリビュートアルバム「 50th Anniversary Special A Tribute of Hayashi Tetsuji - Saudade -」では新録による「北ウイング-CLASSIC-」で久々の歌声を披露。今月放送されたニッポン放送の特番「中森明菜オールタイムリクエスト」では肉声メッセージがオンエアされるなど、1枚1枚ベールを脱ぎ捨てるがごとく、復活への歩みを進めている中森明菜さん。
　表舞台への登場を待ちわびていたファンにとって、もはや期待は高まるばかりですが、まるで新たな展開のスタートへとバトンタッチするように、ワーナー時代の復刻企画「中森明菜デビュー40周年記念 ワーナーイヤーズ・全アルバム復刻シリーズ」（第1弾は こちら、第2弾は こちら、第3弾は こちら、第4弾は こちら、第5弾は こちら、第6弾は こちら、第7弾は こちら、第8弾は こちらで紹介）はついに第9弾にして、フィナーレを迎えます！
 
　昨年7月から続いてきたこの企画は、ワーナー在籍期の全アルバムおよびミニアルバム23作をオリジナル・カラオケ付きで復刻するというものですが、ファイナルとなる今回は、ワーナーラストのアルバム「CRUISE」とベストシリーズ第３弾の「BEST III」。
　これまで通りCD「 CRUISE +7【オリジナル・カラオケ付】＜2024ラッカーマスターサウンド＞」「 BEST III 【オリジナル・カラオケ付】＜2024ラッカーマスターサウンド＞」のみならずアナログ盤「 CRUISE ［LP+ポートレート+歌詩カード］＜完全生産限定盤/Color Vinyl＞」「 BEST III＜完全生産限定盤/Color Vinyl＞」としても復刻されるほか、「BEST III」はCD、アナログ盤、カセットテープを収めたコンプリートセット「 BEST III COMPLETE BOX ［2CD+2LP+Cassette］＜完全生産限定盤＞」もリリースされるとのことです。
 
　ワーナー最後のオリジナルアルバムとなった「CRUISE」というと、NY録音かつ同名のファッションブックとのメディアミックス展開。ファッションでも孤高のセンスを発揮していた明菜の立体的な魅力が浮かび上がる…というような触れ込みだった記憶がありますが、リリースは89年7月、あの事件があった直後。
　当時の最新曲であり、インクルードシングルの「LIAR」（収録されているのはアルバムバージョンです）は、当日の様子を繰り返し伝えるワイドショーなどでしつこくリフレインされていましたので、リアルタイムを知る人はどうしても先入観といいますか、純粋に楽曲だけを堪能できず、アルバムの悲恋な歌の世界を当時の明菜自身と重ね合わせてしまっていたように思います。
　もちろん収録曲は「Stock」と同じく、シングル候補曲でありながらもボツになったナンバーで構成されたというだけあって粒より。明菜のコンディションも素晴らしく、テクニックのみならず録音やミックスの関係もあるのか、前作までの展開と比べるとボーカルに芯が出て輪郭ができ、特徴であるウイスパーの余韻もより艶っぽく効果的。
　いろんな面で抜きん出ていたと思えるだけに、残念ではありますが、ユッコ以来の衝撃となった出来事の前にはどうしても別物として聴くことはできなくなったというのが当時のファン心理でしょう。
　バラード集というのも余計な勘繰りを誘ったのかもしれませんし、そういう意味では、やっぱりアーバンシックなサウンドやメロディーよりも歌詞の方が気になって、絶唱に思えてしまったのですよね…。
　明菜は昭和ポップス好きな今の若者に絶大な支持を受けているそうですが、色眼鏡なしに、１枚のアルバムとして純粋に聴ける彼らの感想を聞いてみたいものです。
　ちなみに、ボーナストラックはシングル「LIAR／Blue On Pink」と、96年のBOX「Collection 1982-1991」に収録されていた別ミックス音源5曲。ポートレート２種類と歌詞カードが復刻封入されるそうです。
 
　一方、「BEST III」は、おなじみのシリーズ第3弾ですが、ワーナーを離れた後の92年11月にリリース。
　89年の「LIAR／Blue On Pink」から、翌年に復帰してからの「Dear Friend／CARIBBEAN」「水に挿した花／Angel Eyes」、91年の「二人静（ふたりしずか）—『天河伝説殺人事件』より／忘れて…」までのシングル4枚を中心に、12インチシングル「赤い鳥逃げた」、「駅」「OH NO, OH YES!」といったアルバム曲、そして人気のカップリング曲「LA BOHEME」の全12曲が収録されています。
　前2作と比べてしまうと、やっぱり「Dear Friend」以降のボーカルが別物に聴こえ、パワーダウンしている感は否めませんが、それはそれで儚さや諦めといった他の誰にも出せない、正直で繊細な明菜だからこその魅力が漂っていると思います。
 
　LP、カセットテープ、CDをワンパッケージし完全生産限定BOX「 BEST III COMPLETE BOX ［2CD+2LP+Cassette］＜完全生産限定盤＞」もリリースは、2CD、2LP（イエロー＆オレンジ）、カセットの5枚組。今回も封入特典として当時の特典ポスターがセットされますので、前2作同様コレクションされたい方は早めのご予約をお忘れなく！
 
　なお、ユニバーサルのオリアルやカバーアルバムも続々 アナログ化が進行中。全部をコンプしたいコアなファンの皆さんは大変でしょうが、旧譜再発であろうが推しの新発売ほどうれしいことはないように思いますし、ずっと休業していて復活が近づいているなら、なおさらでしょう。
　今回のワーナー復刻シリーズの完結が何かしらの力となって、新たな展開へとつながりますように…１ファンとしてそう願ってやみません。