昭和を代表する作詞家、大スケールの作品集！

　佐良直美の日本レコード大賞受賞曲「世界は二人のために」を代表曲の筆頭として、歌謡曲からGS、アイドルポップス、フォーク・ニューミュージック、演歌まで、実に幅広い作風で詩情豊かな歌詞を数多く残してこられた作詞家・山上路夫さん。
 
　戦前の愛国流行歌「荒鷲の歌」や終戦直後の流行歌「港が見える丘」で知られる東辰三さんをお父さまに持つサラブレッドで、ビクター専属作家としてキャリアをスタートさせた後、フリーに転向。
　最初にコンビを組んだいずみたくさん、共にアルファミュージックを立ち上げゴールデンコンビとなった村井邦彦さん、すぎやまこういちさん、鈴木邦彦さん、平尾昌晃さん、森田公一さん、三木たかしさん、都倉俊一さん、筒美京平先生まで、さまざまな作曲家の先生方とのタッグで、さまざまな名曲を世に送り出しています。
 
　オリコン１位獲得曲だけを挙げてみても、由紀さおり「夜明けのスキャット」、森山良子「禁じられた恋」、小柳ルミ子「瀬戸の花嫁」、天地真理「虹をわたって」「若葉のささやき」「恋する夏の日」、ガロ「学生街の喫茶店」、アグネス・チャン「小さな恋の物語」、野口五郎「甘い生活」「私鉄沿線」などなど。まさに昭和を代表するヒットメーカーのお1人です。
 
　山上さんの作品集としては、2012年に出た東芝発の2枚組精選曲集「山上路夫作品集～翼をください～」を皮切りに、17年には盟友・村井邦彦さんとの新旧のコンビ作を集めた3枚組「『翼をください』を作った男たち～山上路夫・村井邦彦作品集～」（ こちらで紹介）が発売済み。
　昨年には、かの濱田髙志さんの監修・選曲・解説で初期からのビクター時代にスポットを当てた2枚組「 山上路夫 ビクター・イヤーズ」が発売されたところですが、今度は同じく濱田さんの手によって全キャリアが網羅された5枚組のCD-BOX「 山上路夫Song Book」がリリースされる運びとなりました！
 
　今回は、ご本人が全面協力、5枚組という大スケールのBOXということで、集大成的な内容になる模様。
　収録曲はまだ発表されていませんが、80曲前後が収録の予定だそうでヒット曲はもちろんレア曲、番組テーマ曲、CM曲などなど、期待は高まるばかりです。
 
　せっかくなので、個人的に心打たれた山上作品を列挙してみますと、メジャーどころでは歌詞が福音に思えるゴダイゴ「ホーリー＆ブライト」を筆頭に、ザ・タイガース「廃墟の鳩」、森山良子「雨上がりのサンバ」、由紀さおり「生きがい」、かまやつひろし「どうにかなるさ」、赤い鳥「忘れていた朝」、堺正章「恋人時代」、井上順「お世話になりました」、小柳ルミ子「漁火恋唄」、朱里エイコ「白い小鳩」、山本コウタローとウィークエンド「岬めぐり」、天地真理「想い出のセレナーデ」、アグネス・チャン「恋人たちの午後」、野口五郎「きらめき」、石川ひとみ「夢番地一丁目」、井上望「ルフラン」、倉田まり子「いつかあなたの歌が」など。
　子ども向けのテーマ曲では、フィンガー５「名犬ラッシー」や鈴木宏子「愛の光と影」も外せません。
 
　隠れた名曲では、6才から偏愛しているガロ「二人だけの昼下り」をはじめ、江利チエミ「明日に生きる女」（神野美伽の完コピカバーもイイ出来です）、堺正章「田舎の教会で」、水沢アキ「あなたのことでいっぱい」、ハイ・ファイ・セット「胸のぬくもり」、岩崎良美「東海岸（イースト・コースト）」、そして近作ではナンバー1だと思うトワ・エ・モワ「お早う」など。 
　こうして名曲の歌詞を指折り、たぐり寄せて思うのは、山上さんの歌詞は奇をてらったり、技巧に凝ったりしたものではなく、素直で美しい世界。良家で育った人特有の優しい人柄が作品にじみ出ているように思いますが、人間らしい希望に満ちた言葉と品格に、心洗われる思いがします。
 
　アルファの50周年記念コンサート「ALFA MUSIC LIVE」（記念CDは こちら、ブルーレイは こちらで紹介）のために書かれた小坂忠＆Asiahの「音楽を信じる（We believe in music）」を聴いたり、BSフジの人気番組「HIT SONG MAKERS 栄光のJ-POP伝説」シリーズなどを併せて鑑賞したりしながら、リリースを待ちたいと思います。