キャニオン時代の名曲集、貴重なオリカラとの2枚組！

　最近では、コロナ禍で始めた YouTubeチャンネルが大ブレイク。すっぴんからのセルフメイク動画はなんと600万回以上再生、チャンネル登録者数は22万人を超えるなど、“バズる投稿”の常連となっている研ナオコさん。
　今年で古希を迎え、久しぶりとなる著書「 70歳、すっぴん人生」を出版。名コンビ・梅沢富美男さんとの明治座創業150周年記念「梅沢富美男・研ナオコ特別公演　三山ひろし特別出演」も大好評と、またまた精力的な活動期に入っている印象です。
 
　ご本人は無意識だったとおっしゃいますが、コメディエンヌとしての才能はデビュー当初から筋金入り。天性の資質は、森繁久彌さんを筆頭に、三木のり平さんや由利徹さんら共演した昭和の大物喜劇役者たちからも手放しで絶賛されたほどでしたし、兄貴分のマチャアキはもとより、ドリフの面々や55号、やすきよ、タモリ、たけし、さんままで歴代の大御所たちも顔負けだったキャリアを考えれば、YouTubeでバズるなんぞ朝飯前ではないかと思いますが、ナオコさんの本分はあくまでも歌手。
　レコード大賞歌唱賞など数々の受賞歴があり、紅白歌合戦には11回出場。圧倒的な歌唱表現力はもとより、ナオコお婆ちゃんや伊谷見優子などとの大ギャップを感じるシリアスな表情、スタイリッシュな衣装（80年代はコムサ一辺倒でしたね）なんかも相まって、他を寄せつけない研ナオコ独自の世界を確立しています。
 
　近年もマイペースなコンサートを開催しているほか、開催中の明治座公演第二部の「夢の歌謡オンステージ」でもいぶし銀の歌声を聴かせていますが、ここに来て古希記念といえる新ベスト「 オールタイム・ベスト」（ Amazonではメガジャケ付きも！）が登場！
　昨今もてはやされているオールタイム・ベストというと、周年を迎えたアーティストの全キャリアを網羅したものが定石ですので、ナオコさんの場合もそうかと思いきや、今回はキャニオン時代に焦点を合わせたオールタイム・ベストとなっております（僭越ではございますが解説を担当させていただいております）。
 
　ちなみに、1971年に歌手デビューしたナオコさんは、第1号新人となった東宝レコードを振り出しにキャニオン・レコード（ポニーキャニオン）、そして近年の自主レーベルや喝采レコードまで、複数のレコード会社から数多くの作品を発表。
　シングルでいえばデビュー曲「大都会のやさぐれ女」から、2019年のりりィの再カバー「 私は泣いています」（元々はナオコさんのために書かれた曲だったとか！）まで、デュエット盤を含め50作以上。
　オリジナルアルバムでは73年の『女ごころ』から15年の『 雨のち晴れ、ときどき涙』まで、カバー盤を含め20作以上をリリースしていますが、キャニオン時代は最も長く在籍し、数多くのヒットを放ったいわば全盛期。であるからして、これに的を絞ったオールタイム・ベストというのも納得です。
 
　しかも今回は単なるベスト盤ではなく、カラオケ人気ランキングをもとに75年のキャニオン移籍第1弾「愚図」から92年の「悲しい女」までの17曲をセレクトした上、全曲のオリジナル・カラオケを収録したディスクとの2枚組という構成なのです！
　ちなみに、収録曲は 特設サイトでもご確認いただけますが、前述の2曲のほか、「LA-LA-LA」「あばよ／強がりはよせよ」「かもめはかもめ」「窓ガラス」「ひとりぽっちで踊らせて」といった中島みゆきサンからの提供シングルや、サザンのカバー「夏をあきらめて」、作者の小椋佳さんと競作となった「泣かせて」、吉田拓郎作品「六本木レイン」、だぅもありがと！の印象が強い「Tokyo見返り美人」、さらには田原俊彦とのデュエット「夏ざかりほの字組」も含めヒットシングルが中心ですが、みゆき作品はナオコさんのキャリアに欠かせないとあって、カバーも「わかれうた」「時代」「ひとり上手」「りばいばる」の4曲をプラスしています。
 
　歌入りとオリカラという構成は2012年、ポニーキャニオンの70～80年代アイドル全13組を対象にした「ザ・プレミアムベスト」（ こちらで紹介）以来ではないかと思いますが、オリカラファンに大好評を博しそうな予感。
　80年代にはカセットテープ「研ナオコ オリジナルカラオケ」が各種発売されていましたが、CD時代になってからは、93年の「中島みゆきを歌う～あの頃へラブレター」のボートラ（「時代」「かもめはかもめ」の2曲）や、94年のヒット曲をカップリングしたCDシングル「ベストシングルシリーズ」で「あばよ／LA-LA-LA」「かもめはかもめ／ひとりぽっちで踊らせて」「夏をあきらめて／ボサノバ」「愚図／泣かせて」のオマケでしか出ていなかったのですからね。
　今回の収録曲ではあともう1曲、「夏ざかりほの字組」がCD化済みですので、なんと7曲が初CD化になるのだとか！
 
　みゆきファンの中にはカラオケ目当てに購入する人も多そうですが、2014年にはみゆき作品を網羅した3枚組「 中島みゆき作品コンプリート」（ こちらで紹介、「かもめはかもめ」は貴重なアルバムミックスで収録。解説を担当させていただいております）も出ておりますので、未入手の方はぜひこの機会に併せてどうぞ。
 
　なお、もっと深掘りしたい場合はキャニオン時代のBOX「 研ナオコ ～魅力のすべて～」 もいいですが、やっぱり本来のオールタイムベストという意味で、東宝レコード時代から志村けんさんとの「銀座あたりでギン!ギン!ギン! 」やトシちゃんとの「恋すれどシャナナ」までの全シングルを集めた「 シングルA面コンプリート 」（ こちらで紹介）＆「 シングルB面コンプリート」を。せっかくなので、みゆき作品以外のカバー曲を集約した「 カバー作品コレクション」もぜひ揃えてみては。
 
　真のオールタイムベストという点では、自主レーベル以降の作品の補完もお忘れなく。オススメは2008年の「 LOVE LIFE LIVE 弥生」収録の阿木燿子＋宇崎竜童コンビによる「弥生」、15年の最新アルバム『 雨のち晴れ、ときどき涙』に収録の玉置浩二作品「ホームレス」など、作品の世界観とナオコさんの歌唱の壮絶さに思わず嗚咽してしまうほどの仕上がりですぞ。
 
　個人的には歌手のみならず、女優のナオコさんも「時間ですよ」のさゆりちゃん役から大好きで、いまだにDVD-BOX「 時間ですよ1973」を見返したり、結構な頻度で桃井かおり主演の「 ちょっとマイウェイ DVD-BOX」のなつみ＆カツ子コンビを愛でたりしておりますが、ナオコさんの主演作「私はタフな女」の姫＆金魚も見たいのでDVD化を願っております！