未CD化のオリアル6作がついに復刻！

　先月にはめでたく古希を迎え、記念の著書「 70歳、すっぴん人生」を上梓したほか、今月には久々のベストアルバム「オールタイム・ベスト」（ こちらで紹介、僭越ですが解説を担当させていただいております。配信は こちら）をリリース。
 
　さらに10月には、コロナ禍で延期になっていた記念ライブを「 デビュー53周年記念ファイナルコンサート ～すっぴん人生 70歳～ みなさんお世話になりました 」と題して東京・渋谷のLINE CUBE SHIBUYAで開催することになった研ナオコさん。
 
　本業である歌手としても精力的な活動期に入った印象がありますが、ライブ開催に併せ、キャニオン・レコード〜ポニーキャニオン時代の未CD化だったオリジナルアルバム6タイトル「 泣き笑い」「 かもめのように」「 あきれた男たち」「 Naoko Mistone」「 スタンダードに悲しくて」「 名画座」のCD復刻と配信が決定いたしました！（ Amazonではメガジャケ特典付き！）
  
　1971年の歌手デビューから52年、東宝レコードを振り出しに、キャニオン・レコード（ポニーキャニオン）、そして近年の自主レーベルまで、複数のレコード会社から20作以上のオリジナルアルバムを発表してきたナオコさん。
　その中で最も長期間在籍し、数多くのヒットを放ったのがキャニオン時代ですが、オリジナルアルバムでは未CD化のものも多かったのですね。
　2013年から14年にかけて出た「 シングルA面コンプリート 」（ こちらで紹介）や「 シングルB面コンプリート」、「カバー作品コレクション」「 中島みゆき作品コンプリート」（ こちらで紹介）のおかげで、かなりのアルバム収録曲がCD化されましたが、オリアルとして聴きたいという声が多かったのも確かです。
 
　今回初CD化となる6タイトルは、いずれも未CD化曲を含むオリアル。もちろんしっかりとしたコンセプトのもと、アルバムとして楽しめる名盤ばかりです。
 
　簡単にご紹介しますと、まず76年8月リリースの「 泣き笑い」は、A面を先行シングル「LA-LA-LA／雨が空を捨てる日は」を含む中島みゆき作品、B面を阿木燿子＋宇崎竜童作品で構成。この２組は歌手・研ナオコを大成させたアーティストでありますが、ナオコさんのおかげで作家として大成したアーティストでもあります。
　「あばよ」はこのアルバムからシングルカットされて大ヒットされたワケですし、初CD化となる阿木＋宇崎作品も含め、アルバムアーティストとしての力量が存分に味わえるものとなっています。
 
　一時休業中の77年10月にリリースされた「 かもめのように」も同様の構成で、A面が引き続きの中島みゆき作品、B面がシングル「ふられてやるさ」「オヽ神様」を手がけていた杉本真人作品。
　半年後の休業明けには、このアルバムから「かもめはかもめ」がシングルカットされて大ヒット。ヒット後の帯は「かもめのように」から「かもめはかもめ」へと変更され、アルバムタイトルのようになっておりました。
　後年「ふられた気分で」もリメイクしてシングル化されますが、やはりみゆき作品との相性は抜群。翌年のみゆき作品集「NAOKO vs. MIYUKI」は大ヒットを記録、ナオコさんのアルバムの代表作になったことも追記しておきましょうか。
 
　インスト「プロローグ～あばよ～」で始まる「 あきれた男たち」は80年7月発表。そのオープニング曲に、シングル「ひとりぽっちで踊らせて」、カバー曲「海鳴り」と3曲のみゆき作品を含みますが、書き下ろし曲の作家陣は、この年のシングル曲を手がけた荒木一郎 、伊勢正三、西島三重子とミュージックのシンガー･ソングライターの競演に。
　注目すべきは、カバーというか競作っぽい感じでの収録となった2曲。いずれもCD化済みではありますが、1曲目は、おそらくナオコさん自身の希望であったであろう石黒ケイ「憎いあんちくしょうのブルース」。そしてサザンオールスターズ（ボーカルは原坊）「私はピアノ」の別歌詞カバー「あいつのこと」。後者は大ヒットした高田みづえのカバーよりも先のリリースで、これが「夏をあきらめて」へとつながっていきます。
 
　そして83年6月リリースの異色作「 Naoko Mistone」は、日本を代表するビッグバンド・リーダーとして高い評価を受ける三木敏悟プロデュース。ビッグバンドをバックに、古き良きスタンダードナンバーや、戦前の流行歌などを下敷きにしたエンタテインメントを繰り広げる企画盤。
　確固としたコンセプトをもとにしたナオコ流のジャズアルバムとなっていますが、ナオコさんのパフォーマンスは、再評価の高まるブギの女王・笠置シヅ子の系譜を継いでいるように思えます。
　当時プロモーションシングルとしてリカットされた「堕天使メロディ“DOMINO”」がベスト盤でCD化されたほかは、すべて未CD化と、今回最もCD復刻が望まれていたアルバムといえるでしょう。
 
　続く「 スタンダードに悲しくて」は、前作からわずか3カ月後のリリース。
　最新シングルにして、化粧品のイメージキャラクターに抜擢されて世間を驚かせた筒美京平作品「愛、どうじゃ。恋、どうじゃ。／Lonely Star」をフィーチャー。ちなみにアルバムタイトルは、コトバ遊びたっぷりのCMソングの詞から引用されています。
　「ボサノバ」以来の福島邦子作品「不良娼女」や、お気に入りの石黒ケイ作品「旅立つ男」もありますが、森雪之丞、秋元康といった新進のクリエイターをはじめ、ヒットメーカーとしたの地位を確立した来生姉弟、「ペガサスの朝」を大ヒットさせた五十嵐浩晃、アン・ルイスの「ラ・セゾン」で作曲家としての才能も示した沢田研二ら、当時の旬を感じるバラエティーに富んだ作家陣が、研ナオコという恰好の素材を料理したアルバムという印象も。
　後に、小椋佳との競作ヒット「泣かせて」のB面となる「旅立つ男」、その次のA面「夜に蒼ざめて」など、シングルカットされたナンバーも多く、名曲ぞろいのアルバムとなっております。
 
　最後は84年10月発売の「 名画座」 で、スタイリッシュなバラードアルバム。
　代表曲の１つとなった「泣かせて」、シングルカットされて再収録となった「夜に蒼ざめて」、先行シングル「名画座／東京美人」というシングル曲を収録。
　福島邦子や西島三重子らといったおなじみのソングライターに加え、佐藤隆、伊藤銀次、稲葉喜美子らを起用。オープニング曲「旅路の果て」はハウンド・ドッグのメロディー・メーカー、八島順一作曲で、ナオコさん自身も大好きでテレビでも歌われていました。
 
　というナオコさんの初CD化＆配信開始アルバム6タイトル。
　その他のキャニオン時代の未CD化アルバム、「愚図」「NAOKO VS AKU YU」は楽曲としてはCD化済みで、アルバム単位での復刻や配信が待たれるものの、これにて一通りデジタル化が完了した模様。ポニーから出たテープには、依然未CD化の曲も残っているようですが、ずっと待っていたファンにとっては結願といったところでしょうか。
　なお、CD化済みではありましたが経年により廃盤になっていたキャニオン時代のオリジナルアルバム「 Deep」 「 Bitter」「 Re NAOKO - 悲しい女 -」や、カバーアルバム「 NAOKO vs. MIYUKI 研ナオコ、中島みゆきを歌う」「 恋愛論」「 Ago - あの頃へラブレター -」は既に配信されておりますので、所有していなかった人はこの機会にどうぞ。
 
　また、ナオコさんはあくまで現役の歌手。キャニオン以後のオリアル「 LOVE LIFE LIVE 弥生」「 一途」「 雨のち晴れ、ときどき涙」などは秀作ぞろい。前にも申しましたが、オリジナルの「弥生」「ホームレス」などは絶唱と呼ぶしかない名唱ですので、ぜひ併せてお聴きいただければとファンの１人として申し上げたい気分であります。