ボートラ付きのオリアル7作が廉価再発！

　筒美京平先生がお亡くなりになって、ちょうど丸3年。先生が放ったヒット曲のメロディーは今も巷で流れ続け、レア音源を発掘するOMFの「筒美京平 アーカイブス」シリーズも、１（ こちらで紹介）、２（ こちらで紹介）、３（ こちらで紹介）に続いて４（ こちらで紹介）も商品化決定と、再評価はとどまるところを知りません。
　大衆に最も支持される歌謡曲をメインフィールドに、第一線のヒットメーカーであることにこだわり続けた筒美先生は、音楽シーンでその時々のトレンドを取り入れ、さまざまな作風のナンバーを作ってきましたが、その際の重要なパートナーだったのが松本隆さんでした。
 
　このコンビが強力だったのは、シンガー･ソングライターが主流となっていく1970年代以降、その時々の若者が切り拓いた新しい音楽の流れを、歌謡界に定着させていったこと。
　例えば、フォークが全盛を迎えようとしていた際には太田裕美さん、ロックがお茶の間にまで来た頃には桑名正博さんというように、それぞれのジャンルを大衆向けの歌謡曲と融合させることにいち早く成功。メインストリームへと定着させてきましたが、80年代後半、その後に続くバンドブームに先鞭をつけるように手がけたのがC-C-Bだったのでした。
 
　いまだ根強いファンを持つC-C-Bも、2015年にはリーダーだったベースの渡辺英樹さんが、昨年にはドラムでメインボーカルの笠浩二さんがお亡くなりになってしまい、永遠の存在となっていますが、今年はC-C-Bのデビュー40周年。
　6月にリリースされた初のコンプリートシングルAB面コレクション「C-C-B THE SINGLE COLLECTION」（ こちらで紹介）に続き、オリジナルアルバム7タイトル「 すてきなビート -Plus」「 僕たちNO-NO-NO--Plus」「 冒険のススメ -Plus」「 愛の力コブ -Plus」「 石はやっぱりカタイ -Plus」「 走れ☆バンドマン -Plus」「 信じていれば -Plus」の再発も決定しました！
 
　C-C-Bのオリアルというと、15年に“CoConut Boys”名義を含む9作が当時の最新リマスタリング＆SHM-CD仕様で再発されておりますが、今回ベースとなるのは94年にリリースされた“Plus版”。各アルバムの発売時とリンクしたシングル曲などを、ボーナストラックとして収録したバージョンです。
 
　シングル曲は松本＋筒美コンビで展開したC-C-Bですが、アルバムではメンバーの自作曲も収録されてますし、キャリアを重ねるに連れて増加。
　シングル曲もそのまま収録せず、リミックスや別バージョンなど手を加えており、バンドとしての存在感や方向性がきっちり示されているのも大きな特徴ではないかと思います。
 
　まずはブレイク後の85年5月リリース、「Romanticが止まらない」のオモシロ-MIXを収録した「 すてきなビート -Plus」。
　全曲を松本さんが作詞。筒美先生の書き下ろしは「スクール・ボーイ」「Forever」「浮気なジル」ですが、先生の手腕がC-C-Bで最も発揮されたのは、メンバーの個性をしっかり粒立てさせたB面曲「I SAY, I LOVE YOU」だと思っております。
　ボーナストラックは、「Romanticが止まらない」のシングルバージョンと次のシングル「スクール・ガール／もっとハートフルに愛して」、12インチの「すてきなビート ～ Mega Mix」の4曲となっています。
 
　メンバーによる作品も増え、ノリにのった勢いが感じられる「 僕たちNO-NO-NO--Plus」は、85年12月リリース。
　松本＋筒美コンビの愛情いっぱい、テーマソングといえる「Here Comes The C-C-B」をオープニングに、紅白初出場曲となった大ヒット「Lucky Chanceをもう一度」の別バージョン、最新曲「空想Kiss」の続編にして関口君がボーカルを務めた「空想Kiss-2」、関口くん＆渡辺くんの「リスキー・ゲーム」などを収録。
　ボートラは「Lucky Chanceをもう一度／サーフ・ブレイク」「空想Kiss／御意見無用、花吹雪」の4曲です。
 
　86年6月発売の「 冒険のススメ -Plus」は、「元気なブロークン・ハート」をアルバムミックスでフィーチャー。メンバー作品はさらに増えており、松本＋筒美コンビの書き下ろしは「JOKEじゃなしに I LOVE YOU」「ハードボイルド物語」の2曲。
　ボートラは「元気なブロークン・ハート」のシングルバージョン、「不自然な君が好き／冒険のススメ～Mega Mix」の3曲です。
 
　86年12月リリース、アイドルバンド的な扱いからの脱皮といいますか、メンバー全員の作品を収録するというコンセプトで、アナログ盤ではミニアルバムだった「 愛の力コブ -Plus」。全員がリードボーカルを取れたり、作詞作曲やサウンドメイクができたり、メンバーの音楽的資質が高かったことがわかるアルバムです。
　松本＋筒美作品は「TOO YOUNG」1曲でしたが、CDではシングル「ないものねだりのI Want You／霧のミステイク」も収録となっておりました。
　ボートラはB面曲「スワンの城」と12インチ「ないものねだりのI Want You ～ゼイ肉Mix／ないものねだりのI Want You ～筋肉Mix」の3曲。
 
　今回なぜか型番が前後しておりますが、次作は関口君脱退後の87年7月リリース、バンドらしさをより前面に押し出していくこととなった「 石はやっぱりカタイ -Plus」。メンバーがアレンジも手がけるようになり、サウンドもオリジナルにこだわる姿勢が見られます。
　松本さんは2曲作詞していますが、筒美作品はついにシングルの別バージョン「2 Much, I Love U.（やっぱりカタイ-Mix）」1曲のみに…。
　ボートラは「Much, I Love U.／夢の中でおやすみ」「原色したいね」の3曲です。
 
　続く「 走れ☆バンドマン -Plus」は88年5月。
　松本さんの4曲以外はメンバーの自作ですが、注目は筒美先生や松本さんのトリビュート・コンサートでも定番スタイルだった笠くんと米川くんがツインボーカル曲「Velvet Touch」でしょう。
　ボートラは「恋文(ラブレター)／WALKIN」「抱きしめたい／Inner Mind」の3曲。「抱きしめたい」は筒美作品です。
 
　そして88年12月、ラストアルバムとなった「 信じていれば -Plus」。
　筒美作品は、ボートラのラストシングル「Love Is Magic／約束」のみ。「Love Is Magic」はさすが有終の美といいますか、涙なしに聴くことのできない名曲で、特に松本さんの詞が冴えわたっていますが、セルフ作品だけにこだわった安易なシフトをせず、最後まで松本＋筒美コンビをベースにファンが求めるC-C-B像を貫いたことこそ、C-C-Bが偉大なバンドであった証左のような気がしています。
 
　余談ですが、最近、筒美先生が遺した曲に松本さんが詞をつけたというバラードを聴く機会がありました。
　その曲の「背の高い紳士がピアノを弾くように」というフレーズに、先生のお姿（実際は小柄でいらっしゃいましたが）と「Love Is Magic」の“空中に浮かぶ手品師”が重なり、「君の心の中でぼくは生きているはず」というメッセージが胸に迫ってきたのですが、実はその曲は筒美先生の実弟でC-C-Bのディレクターであった渡辺忠孝さんから松本さんに委ねられたものだったと知って驚いたことを記しておきたいと思います。