ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#1187
田村英里子/SINGLE COLLECTION
2024.3.20発売、UICZ-4673 ¥3,300<税込>)  *SHM-CD2枚組

35周年!80年代最後の筒美系トップアイドル!

 おニャン子クラブの盛衰によって、それまでのアイドルの定義が破壊された1980年代終盤。アイドル冬の時代やアイドル氷河期などと呼ばれるほど正統派アイドル受難の時期でしたが、そんな中にあって大健闘したのが 89年デビューの“えりりん”こと田村英里子さん。
  70年代から続いた正統派アイドル歌手の系譜では、成果面も含めて最後に位置する存在ではないかという気がしますが、このたびデビュー35周年のアニバーサリーイヤーを記念したベストアルバム「 田村英里子 SINGLE COLLECTION」が登場することとなりました!
 
 えりりんの場合、CD時代のアイドルですし、お手軽なシングルA面コンプリート ゴールデン☆ベスト 田村英里子」が何度も廉価再発されていますので、そこまでの飢餓感はない印象ですが、2枚組ベストは98年の「ツイン・ベスト」以来なんと26年ぶり。それもとっくに廃盤になっていますので、このたびのリリースを喜んでいる人は多いことでしょう。
 しかも今回は、デビューシングル「ロコモーション・ドリーム/涙の半分」から95年のラスト「寂しさに壊されても/終わらない 終わらせられない」まで、16枚のシングルをカップリング(インストゥルメンタル・ヴァージョンやカラオケは除く)も含めて網羅と、初のシングル両面コンプリートが実現。さらにボーナストラックとしてデビューシングルのB面「涙の半分」と7枚目のシングル「虹色の涙」の別バージョンを追加した全32曲というボリュームに、ご存じ濱口英樹さんの解説付きという充実ぶりです。
 輪をかけるようにうれしいのが税抜き3千円ポッキリというプライス。ファンでなくてもコレクション欲をそそられるお買い得盤といえるのではないでしょうか。
 
 さて、えりりんといえば、帰国子女らしい自己主張といいますか、最初からアイドルの枠に収まらない気の強さというか、ぶりっこを持て余しているような表情が見え隠れしていましたし、その後の展開を思えば納得するものがありますが、スタート時は、桜田淳子から松田聖子、早見優、岡田有希子、水谷麻里、酒井法子へと続いたサンミュージックの王道アイドル路線。
 ルックスはもちろん、アルトでハリのある声質や安定した歌唱力、タレント性に恵まれている上、バックアップもハンパなく、カネボウ・朝シャンシェイクシャンプーのCMタイアップはもとより、アニメ「アイドル伝説えり子」とのメディアミックス展開を繰り広げるなど、鳴り物入りのデビューでした。
 アニメ本編ではないとはいえ、本人が実写で登場するのは「星の子チョビン」の天地真理以来だったように記憶していますが、それをデビューの段階でやってのけたのは特筆すべきことでしょう。
 
 結果、デビュー曲「ロコモーション・ドリーム」はオリコン初登場9位をマーク。続く「好きよ」は10位、新人賞レース参加曲「真剣(ほんき)」は9位と、順調にヒットを飛ばしましたが、忘れてはならないのが1年目のシングル3枚全てを筒美京平先生が手がけているということ。
 すなわち今回のベストにはその6曲が収録されておりますが、新進気鋭の田口俊さんや小林武史さんといった若手だけでなく、盟友の松本隆さんや船山基紀さんとタッグを組んでおり、そこまでの冒険はないものの、ボーカルも含めて安定の筒美クオリティとなっていますので、フリークの皆さんはチェックをお忘れなく。
 アイドル冬の時代にトップ10ヒットを放ち、月刊明星の表紙を何度も飾った実績からいっても、名実ともに 80年代最後の筒美系トップアイドルといえるでしょうし、成果が出せて先生も満足なさったのではないかと思いますが、先生の25周年時、3曲全曲がトップ10ヒットにもかかわらずBOX「筒美京平 HITSTORY Ultimate Collection」本編ではなく、「筒美京平ウルトラ・ベストトラックス」への収録だったのはちょっぴり残念でした。
 ちなみに、ファーストアルバム「May be Dream」(2003年に必聴名盤シリーズで紙ジャケ復刻済み=と思っていましたが発売中止となっていたそうです。大変失礼しました)では全曲、翌90年2月発表のセカンド「Myself」でも4曲(シングル曲含む)が筒美作品となっていますし、 音楽配信されていますので、このベストでえりりんの魅力を再発見した人は、アルバムへとどうぞ。
 
 さて、レコード大賞の本選では最終優新人賞をめぐってマルシアとの一騎打ち(部門賞ではありますが76年の郷ひろみVSキャンディーズ、77年の清水由貴子VS榊原郁恵に匹敵するデッドヒートではなかったでしょうか)で、画面からもピリピリムードが漂っていましたが、結局はマルシアに僅差で敗れ、悔し涙を飲んだえりりん。
 実際、賞レース中の精神状態は良くなかったようですが、2年目、筒美先生の手を離れてからは吹っ切れたようになった印象でイメージも一新。楽曲も、佐藤健、平松愛理、鈴木康博(元オフコース)、山口未央子、上田知華、辻畑鉄也(元ピカソ)、関口誠人(元C-C-B)、玉置浩二など豪華な作家陣によるナンバーを発表していきます。
 本人も2年目からの楽曲が好きと公言していましたが、中でも平松愛理さんとの相性は抜群で、「Domino」や「リバーシブル」などは、えりりんのキャラクターとも合った名曲です。また、松本さんの作詞曲として再評価されている「リトル・ダーリン」(アニメ「少年ACB」テーマ)なども必聴です。
 
 なお、このところ復刻に力が入っているユニバーサルですが、3月から4月にかけては「ゴールデン☆ベスト」の新ラインアップが登場するとか。アイドル系ではつちやかおり「 ゴールデン☆ベスト つちやかおり」や島崎和歌子「 ゴールデン☆ベスト 島崎和歌子」がお目見えするようですので、アイドルフリークの皆さんは要チェックですぞ!
 
 

(2024.1.12)

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