名作3枚、アルバム単体としては初の復刻配信！

　デビューから53年目に突入、古希を迎えても変わらずマルチな活躍を続けている研ナオコさん。特に今年は、本業の歌手としての活動やリリースが目立っており、“歌手・研ナオコ”のファンを大いに喜ばせていますよね。
 
　去る10月19日に東京・渋谷のLINE CUBE SHIBUYAで行われたアニバーサリーライブ「デビュー53周年記念ファイナルコンサート ～すっぴん人生 70歳～ みなさんお世話になりました」も大盛況。
　宇崎竜童さん、小椋佳さん、梅沢富美男さんといったゆかりの大物ゲストに加え、シークレットゲストには、弟分として可愛がってきた田原俊彦さんが登場。久方ぶりに大ヒット「夏ざかりほの字組」がデュエットで披露され、会場は沸き立ちましたが（サプライズの模様は YouTube「田原トシちゃんねる!」【トシちゃんが研ナオコにドッキリ】で見られます！）、これと並行するようにキャニオン時代の旧譜リイシューも活発となっております。
 
　まず、8月に出た久々のベストアルバム「オールタイム・ベスト」（ こちらで紹介、解説を担当させていただいております）を皮切りに、10月には未CD化だったオリジナルアルバム 6タイトルのCD復刻と配信（ こちらで紹介）が実現しましたが、本日からはさらに 3タイトルが追加配信。
　楽曲としてはCD化済みでもアルバムとしては復刻されていなかった「 愚図 」「 NAOKO VS AKU YU」と、CD化済みであったものの配信はされていなかった「 Again」という名作 3枚が、配信アルバムとして聴けるようになりました。
 
　簡単にご紹介しますと、75年12月発売の「 愚図 」はキャニオン移籍第１弾アルバム。初のトップ10ヒットを記録し、歌手として認められるきっかけとなったタイトル曲を含む全12曲を収録。
　シングル「愚図／サヨナラは嫌いな言葉」以外はすべてカバーですが、当時ブームとなっていたフォークソングを中心に選曲されていて、「山谷ブルース」「春夏秋冬」などシブイチョイスもグー。おそらくナオコさんが本当に歌いたかった歌ばかりだからかもしれませんが、若く伸びやかな歌声が実に心地好いのです。初期の魅力といいますか、東宝レコード時代から定評のあった歌唱力が花開いた、歌手開眼のアルバムといえるでしょう。
 
　時代は下がって79年6月、独自のナオコ節で歌手としての地位を築き、風格も漂わせるようになった「 NAOKO VS AKU YU」。大ヒットした中島みゆき作品集「NAOKO VS MIYUKI」に連なる企画で、文字通り阿久悠作品集です。
　ナオコさんの東宝時代のシングルはほとんど阿久さんが作詞しており、いずれも阿久さんお得意の企画性に優れたナンバーばかりですが、大ヒットにはつながらなかったせいで、再開の折には阿久さんの思い入れが凄かったそう。シングル「口紅をふきとれ」「陽は昇り 陽は沈み」の力の入れようにもビックリしましたが、LPのライナーに掲載されていた阿久さんからの寄稿エッセイからは、このアルバムが企画されたことへの喜びようが伝わってきます。
　「ざんげの値打ちもない」「さだめのように川は流れる」といった情念系から、「あざやかな場面」「白いサンゴ礁」といった爽やか系まで、カバーの濃淡も素晴らしい。
　なお、ファッショナブルでスタイリッシュなナオコさんですが、このアルバムの写真やアートワークも特に見もの。配信ではジャケットの表紙しかビジュアルがないのが残念です。
 
　そして84年6月の「 Again」は、「NAOKO VS MIYUKI」以来6年ぶりの中島みゆき作品集。
　ナオコさんへの書き下ろし曲のリメイクシングル「ふられた気分」以外はすべてカバーで、他の人への提供曲も入っていますが、注目は「りばいばる」「おもいで河」「かなしみ笑い」「誘惑」といったみゆきサンのアルバム未収録のシングル曲。選曲にはナオコさんの意思も反映されているように思いますが、みゆきサンのシングルは歌謡曲っぽいものが多いので、それもあるでしょうか。
　全般を通して、本来はみゆき作品でもドライだったナオコ節が、かなりウェットになった印象。特に「捨てるほどの愛でいいから」は珍しく嗚咽のごとく感情があふれ出て、驚く人も多そう。元々が情念そのものの歌ですし、みゆきサンのオリジナルも壮絶なので、ナオコさんがこうなるのも当然ではありますが、当時はファンとしてプライベートを心配したことを思い出します…。
　余談ですが、野口さんという良き旦那さんと結ばれ、お子さんにも恵まれ、お孫さんができてリアルにナオコお婆ちゃんになるなんて、この当時、誰が想像したでしょう。生まれたばかりの倹太君の映像を見ていた身としてはホント感慨深いです。
 
　という配信3タイトル。「オールタイム・ベスト」発売時に立ち上がった 特設サイトでは、今回の復刻＆配信アルバムが解説（引き続き担当させていただきました）とともに紹介されていますが、この3タイトルも早速アップされていますので、詳細はぜひそちらでご覧ください！
 
　なお、これら以外のキャニオン時代のアルバム「 中島みゆきを歌う」（NAOKO VS MIYUKI）や「 恋愛論」、「 Deep」 「 Bitter」「 Re NAOKO -悲しい女-」「 Ago あの頃へラブレター」は既に配信されておりますので、今回のCDや配信とともに、併せてお聴きいただければと思います。同じく配信中の最新アルバム「 雨のち晴れ、ときどき涙」（「LOVE LIFE LIVE 弥生」「一途」もAPPLE MUSICでは聴ける模様です）もオススメですので、ひとつよしなに！
　なお、パッケージとして聴きたいという人には「 シングルA面コンプリート 」（ こちらで紹介）や「 シングルB面コンプリート」、「カバー作品コレクション」「 中島みゆき作品コンプリート」（ こちらで紹介）などを、よろしくどうぞ！