ちあきなおみ幻の2曲を含むサントラ！

　2005年4月、紙ジャケット仕様で突如復刻された1980年のアルバム「象物語 オリジナル・サウンドトラック」。川口真さんが音楽を担当、萩田光雄さんもアレンジャーとして参加し、東京交響楽団やSHOGUNが演奏というサントラアルバムです。
 
　根強いファンのいる劇伴音楽のジャンルではありますが、映画本編ではなくサントラだけが一人歩きして、丸ごと復刻されたことが大きな話題を呼びましたが、実はコレ、長いこと封印されていた、ちあきなおみ幻の名曲「風の大地の子守り唄／アフリカン・ナイト」が入っていたことがその理由でした。
　ちなみに、発売日もコロムビアから出ていた「ちあきなおみアーカイブス アルバム復刻・これくしょん」シリーズの第2弾4タイトルと同じであり、事情を知らない人からは唐突なサントラ単体復刻のように見えても、ちあき関連アイテムとして連動リリースの形が取られていたのですね。
 
　当時の復刻に狂喜乱舞し、感涙にむせび泣いたちあきファンは相当数いたように記憶しておりますが、完全生産限定盤だったため、すぐに入手困難になり、復刻から18年経った現在では中古市場で高騰しているのだとか。
 　という背景もあり、今回、オーダーメイドファクトリーで通常商品「 象物語 オリジナル・サウンドトラック 」としてエントリーの運びとなりました！
 
　さて、このサントラに収録されているちあきの2曲の事情については、以前からウシオさん主宰のファンサイト「 ちあきの部屋」でも考察されているように、そもそもはCBS・ソニーの酒井政利プロデューサーによる、ちあきなおみカムバック計画が発端。
 
　ご存じコロムビア出身の辣腕プロデューサー・酒井さんはフォーリーブスから始まって南沙織、郷ひろみ、山口百恵など、70年代のアイドルポップスを開拓した第一人者ですが、低迷している歌手のイメージを一新して復活させる、いわゆるアダルトシンガーのクリーニングも得意技。70年代だけでも、朝丘雪路、坂本スミ子、金井克子、大信田礼子、内田あかり、ジュディ・オング、梓みちよなどなど、成功事例も枚挙にいとまがないほどでした。
　そんな酒井さんの目に止まったのが、当時レコード会社との契約がなかったちあきさん。盟友である阿木燿子＋宇崎竜童コンビの手を借り、映画のテーマソングとしてシングル用の楽曲「風の大地の子守り唄／アフリカン・ナイト」を制作します。
　酒井さんにとっては、CBS・ソニーに初のレコード大賞をもたらしたジュディ・オングのエーゲ海のテーマ、驚異的な速さでミリオンセラーを達成した新人・久保田早紀のシルクロードのテーマに次ぐ、アフリカのテーマという位置づけ。当然映画のみならず、CMの大型タイアップも付け、メディアミックスでの大プッシュを予定していたといいます。
 
　大ヒットが約束されたようなシチュエーションであり、それにふさわしく楽曲もスケールの大きな名曲で、ボーカルのテクニックはもちろんのこと、懐の深さというか、ちあきの情の厚さまでを感じる仕上がりです。
　公開された映画ではちあきの歌が流れ、サントラLPにもちあきの歌が収録されたのに、いろいろあって、同時発売のシングルでは黛ジュンに急きょ交代…。結局、ちあきなおみの大々的な歌手カムバックは見送られ、予定されていた各種プロモーションも黛ジュンに差し替わっていった…といういわく付きのナンバーなのですね。
　余談ですが、酒井さんは天中殺だったのか、同時期、期待の二世新人秘蔵っ子・中山圭子の鳴り物入りデビューでも超大型タイアップが頓挫する事態に見舞われるなど（この事件を機に中山圭子に取って代わったのが松田聖子なのは有名な話ですよね）、百恵ちゃん引退も含め80年代はことごとく裏目に出ていくのですが、そのきっかけがこの出来事だったといえるでしょう。
 
　そういう経緯もあってか、ちあきなおみの「風の大地の子守り唄」は長らくCD化されず、2005年にCD化されてもすぐ入手困難となり、後進のちあきファンが渇望する音源に…。よって、紙ジャケ盤はどんどん高騰し、今回のOMFにつながったというワケなのです。
　ちなみに、映画のイメージソングとしてリリースされた黛ジュンのバージョンは「 GOLDEN☆BEST 黛ジュン2」でCD化された後、コンピ盤にも収録。現在はアレンジャー・船山基紀さんのBOX「 船山基紀サウンドストーリー～時代のイントロダクション～」（ こちらで紹介）で聞く事ができます。
 
　ともあれ、今回のOMF盤は、紙ジャケに比べ1000円ほどプライスアップしておりますが、Blu-specCD2の高品質盤ですし、なんと、ちあきの2曲のオリジナルカラオケ付き。
　紙ジャケ盤を持っている人もそそられる新復刻盤となっておりますぞ！