8年ぶりの続編はアイドル？でファイナル？

　振り返れば2003年、ソニーミュージック、東芝EMI、コロムビアの３社合同による懐かしの“お宝”アイドル復刻CD企画として始まったアイドル･ミラクルバイブルシリーズ。
　80年代を中心に、それまでのメジャーレーベルでは復刻対象にならなかったB級やC級ランクのアイドルでもしっかりコンプリートさせたことから、コアなアイドルファンをたちまち虜にして年末恒例となったものの、後発参加のキングも含め、3年ほどで各メーカー主だったアイドルが復刻されると自然消滅してしまったんですよね。
 
　それを2008年に単独復活させたのがソニーミュージック。市販からオーダーメイドファクトリー（OMF）へと販路を移し、よりマニアックにシリーズを継続。
　これに触発されたのか、2008年にコロムビアがコンピ盤の続編「アイドル・ミラクルバイブル増刊号 最初の2枚〜デビュー＆セカンド・シングルコレクション」（ こちらで紹介）をリリースしたこともありましたが続かず…。結局はアイドルポップスの祖であるソニーの独壇場となったのでありました。
 
　対象はかつてのCBS・ソニーやEPIC・ソニーのみならず、原盤供給のパートナーである渡辺音楽出版に加え、傘下に収めたRCA、アルファ、ファンハウスなどのレーベルを縦断。ソロのガールズアイドル（「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 808182 Girls ～中山圭子・嵯峨聖子・川田あつ子・百瀬まなみ～ 」「 アイドル・ミラクルバイブル　818283 Girls　～和泉友子・大森有里子・ナンシールー・菊地陽子～ 」「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ　80～86Girls 高橋沙羅 ティナ・グレース 天馬ルミ子 川原理加 森村聡美 中林由香 」「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 73～76 Girls 鮎川由美 石井まゆみ 池田ひろ子 景山美紀 」＝ こちらで紹介、「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ　75・76 Girls　青木美冴・秋本圭子・有吉ジュン 」＝ こちらで紹介、「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ　77・78 Girls　久木田美弥・小山セリノ・久我直子 」＝ こちらで紹介、「 アイドル・ミラクルバイブル77～79 Girls　園田ことり・西かおり・西村まゆ子・朝風まり・菅沢恵子 」＝ こちらで紹介など）だけにとどまらず、グループ（「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ　ガール・グループ 」「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ　ガール・グループ 2 」「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ　ガール・グループ３ 」）アクトレス（「 アクトレス・ミラクルバイブル　夏目雅子・早乙女愛・池上季実子・真行寺君枝・古手川祐子 」「 アクトレス・ミラクル・バイブル～新藤恵美・林マキ・高沢順子 」「 アクトレス・ミラクルバイブル　鶴間エリ・朝加真由美・熊谷美由紀・白坂紀子・中島はるみ 」、 こちらで紹介）、ボーイズアイドル（「 ボーイズ・ミラクルバイブル　フラッシュ・未都 由・水谷大輔 」）、アクター（「 アクター・ミラクルバイブルシリーズ　渡辺裕之・新藤栄作・四方堂亘・黒田アーサー・保阪尚輝 」）にまで対象を拡大。
　D級、E級、いや見たことも聞いたこともない“幻”級の無名アイドルまでを、こそげ取るように復刻させていくとともに、市販品時代のアンコールプレス（「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ　沢田富美子・佐東由梨・沢田玉恵　コンプリート・シングル・コレクション 」「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ　高橋美枝・渡辺千秋・村田恵里　シングル・コレクション 」、「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ　優雅　筒美京平を歌う アンド・モア 」＝ こちらで紹介など）も行ってきたのはご存じの通りです。
 
　OMFでは主力商品として、候補に挙がれば瞬殺で商品化が実現するシリーズにまで成長したものの、復刻に差し障りがあるアイドル以外、出尽くした感があったのは確かです。
　対象がアイドル前夜の60年代にまで及び、2015年には、アイドルというには微妙な歌手までを疑問形で括った「アイドル？ミラクルバイブルシリーズ」（「 アイドル？ミラクルバイブルシリーズ 6869 Girls 」「 アイドル？ミラクルバイブルシリーズ 6970 Girls 」）を最後に、ストップした状態が続いていたのでした。
 
　あれから8年、マンパワー的な問題でもう続編や継承は無理ではないかと思っていましたが、最後の最後ということで復活。ソニー盤としてはシリーズ34枚目となる「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ　ファイナル 」の登場です！
 
　収録曲を見て見ますと、今回は「？」マークこそ付いていませんが、アイドルポップスというより元アイドル的存在だった熟女たちの歌謡曲コンピ盤といった様相。
　今は亡きソニーの名プロデューサー・酒井政利さんが得意とした女性歌手のクリーニング集とでも表現した方がいいでしょうか。いずれにしてもマニア待望の初CD化曲が満載となっております。
 
　トップを飾るのは、TBSのアダルトな音楽番組「サウンド・イン“Ｓ”」で大活躍したトリオ、ザ・レイディーズ（今陽子・前田美波里・鹿島とも子）。東京音楽祭国内大会へのエントリー曲にして、東芝から出たシングル「ワン・モア・チャンス／フライ・アップ」です。
 
　今回、ピンキー以外はソロナンバーも入っていて、美波里さんはキングからリリースしたサンレモ音楽祭入賞曲のカバー「恋のベラリンダ」。
　日劇ダンシングチームのトップスターだった鹿島さんは、CBS・ソニーへと移籍し酒井さんの元で大ヒットとなるはずだったシングル「不安のときめき／泣けるうちに泣け」と「愛人／泣くのは似合わない」。「不安のときめき」は、あの松居一代女史がカバーしたことでも知られる楽曲です。
 
　続く朱里エイコさんの「知らせないで／DON'T BE AFRAID」は81年リリース、RCAへ移籍して唯一シングル。朱里エイコ名義のオールタイムベスト「リトル・ダイナマイト～ベスト・オブ・朱里エイコ」でも除外されており、最初で最後のCD化といっても過言ではないほど、CD化が切望されていたナンバーです。
　夏木マリは79年のCBS・ソニー移籍シングル2枚で、中島みゆき作品カバー「さよならの鐘／朝焼け」（「中島みゆきソングライブラリー」シリーズでCD化済み）と、「Gメン'75」のエンディング・テーマをＡ面にした「ウィング／夜汽車に吹かれて」。
 
　今回のラインアップでは最もアイドルっぽい沢チエは、和モノブーム以降、再評価の呼び声が高いアーティストで、収録曲は日本ビクターの1レーベルだった時代のRCAから71年にデビューしたデビュー曲「恋のブガッティ／ふりむいてふりむいて」。コケティッシュなフレンチアイドルのムードが漂いますが、それもそのはず、「Mr.サマータイム」の作者であり、オリジナルアーティストとしても知られるミシェル・フュガンの作品だそうです。
　RCAの71年盤としては、もう1人、日本初のサッカー女性レフリーとして話題を呼んだという木立三香子。移籍シングルとして出した「愛のシンフォニー／誰かに想いを告げたい夜」はいずみたく作品です。
 
　70年発表、RCA・麻丘ゆみの1人GS「悪魔とわたし／冷たいあなた」は小野京子名義による荒木一郎作品。ドラマ「赤い靴」主題歌で知られる中村洋子がCBS・ソニーでリリースした「あなたのいない夜／つまらない日々」のA面も荒木一郎の名曲で、77年には岸本加世子もカバーしています。
 
　そしてラストを飾るのは、小川美希の山口洋子＋三木たかし作品「朝食／夜のページ」。みきめぐみ、岡田みき、小川みきと改名を続け、ポリドール、ビクター、フィリップスへ移籍を繰り返した彼女にとって、これが75年のCBS・ソニー移籍作にして、ラストシングルです。
 
　小川みき時代はマニアの間で「マイ・ロスト・ラブ」が大人気ですが、筒美京平作品も知られており、筒美系ディーバとして熱狂的なファンを持っています。
　浅田美代子とも縁が深く、ミヨちゃんとはドリーミーな筒美作品「愛のキューピッド」をシェアしたほか、「寺内貫太郎一家」では同郷の友人役で、ミヨちゃんが娘役に昇格した「時間ですよ・昭和元年」では従業員役で共演。その後も百恵友和コンビの「赤い疑惑」などに出演し、女優として活動を続けたようですけど、歌声とは全然違うあの何とも言えないユニークな声としゃべり方につき、大成はしませんでした。
　彼女の場合、筒美作品のA面はCD化済みではありますが、B面はまだのため、今後の「筒美京平アーカイブス」シリーズ（ こちらなどで紹介）に期待したいところ。
 
　といいつつ、アレもファイナルへのカウントダウンが始まっている気配がいたしますので、末永い継続を期待される皆さん、熱い思いを リクエストに込めてぜひOMFの方へお伝えください。