87年の未発表曲を含む55周年ベスト！

　歌謡曲歌手・由紀さおりとして「夜明けのスキャット」でデビューしたのが1969年5月。であるからして、2024年の今年がデビュー55周年のアニバーサリーイヤーとなる由紀さおりさん。
 
　どんなにキャリアを重ねても芸の研鑚を怠ることなく、常に新しい自分でいたいと言い切り、近年もYouTubeで 由紀チャンネルを始めたり、三味線の弾き唄いをレパートリーに加えたり、新しいことにも果敢に挑戦する一方、幼稚園に歌を届ける「童謡で伝える会」の活動なども継続されておられます。
　まさに一日一日を「生ききる」という姿勢には頭が下がるばかりですが、4月からは記念のコンサート「55thコンサート～新しいわたし～」がスタート。 大阪・新歌舞伎座 のほか、5月にはフランス・パリでも開催されるなど、ますます意欲的にアグレッシブな活動を続けていますが、記念の新曲「 人生は素晴らしい」とベスト盤「 由紀さおりベストオブベスト～ 55th anniversary」のリリースも決定しました！
 
　まず、集大成といえるニューシングル「 人生は素晴らしい」は、55周年の集大成とパリ公演にちなんだものになるようで、タイトル曲はフランス人の作曲家、ジオアッキーノ・モリシの書き下ろし（作詞は松井五郎さん）。カップリング「シャンソン」は文字通りシャンソン系歌謡曲（木暮みき＋美樹克彦夫妻の作だそうです）と、また新境地を開拓するようです。
 
　ベスト盤の方は、3枚組「 由紀さおりベストオブベスト～ 55th anniversary」。
　由紀さんの3枚組ベストというと、歌謡曲歌手に回帰した40周年時（09年）のシングルA面集「由紀さおり COMPLETE SINGLE BOX」（ こちらで紹介）や、50周年時（19年）の50曲入りお買い得ベスト「 PASSING POINT」がありますが、今回は由紀さんとしては初となるSHM-CD。
　シングル曲を中心にした代表曲とカバー曲を、55周年にちなんで55曲収録するという趣向です。
 
　構成はDisc1と2の2枚が、デビュー曲「夜明けのスキャット」から22年の「初めての今日を」まで、シングル曲を中心にセレクトされた代表曲集ですが、なんとビクター時代の未発表曲1曲が収録されるとのこと！
　それは、87年に「 お先にどうぞ」がシングルになる際、候補曲としてレコーディングされたもののお蔵入りになっていた「ふられ上手」(山上路夫＋吉田正)という曲だそうですが、この1曲のために入手するコアファンは多そうです。
 
　Disc3のカバー集は、パリ公演を意識してか「パリのめぐり逢い」で幕開け。「男と女」 「オ・シャンゼリゼ」などのフレンチ系が目立ちますが、「1969」（ こちらで紹介）での再ブレイク後に多数発売されたカバーアルバム（「 由紀さおり カバーBOX 70」としてBOX化されています）からのセレクトになっているようです。
　古今東西、ソロの名唱だけでなく、ピンク・マルティーニのティモシー・ニシモトさんとの「さらば夏の日」、川口大輔さんとの「愛は傷つきやすく」、坂本冬美さんとの「ラストダンスは私に」、平原綾香さんとの「知りたくないの」などのデュエットも聴きどころでしょう。
 
　アニバーサリー感漂うジャケットを含め、記念コンサートの物販用という印象もありますが、由紀さんの軌跡と魅力をざっくりと追うにはもってこいのベスト。
　特に由紀さんのファンというワケではないけれど、和モノ再評価の流れとヴァイナルブームでアナログ復刻された「こころもち 気まぐれ」（ こちらで紹介）などをきっかけに由紀ワールドへと足を踏み入れた…という人にもオススメしたいと思います。
　いきなり3枚組は…という人は、1枚ものの定番曲集「ゴールデン☆ベスト」（ こちらで紹介、 期間限定スペシャル・プライスの廉価盤や SACDハイブリッド盤も出ています）や、2枚組で新旧をバランス良く対比させた「プレミアム ベスト」（ こちらで紹介）など、お手軽なものをお選びください。
 
　また、由紀さんの場合、アルバムも名作ぞろいにつき、ベストでシングル曲を追った後は、オリジナルアルバムもお忘れなく。
　東芝時代のオリアル復刻は、EMI純正による紙ジャケ（ こちらや こちらで紹介）のみならず、タワレコ限定（ こちらで紹介）でも進んでおりますし、歌謡曲回帰の「いきる」（ こちらで紹介）や、若手とコラボした最新オリアル「BEGINNING ～あなたにとって～」（ こちらで紹介）など近作も秀逸ですからね。
 
　なお、歌唱パフォーマンスや話芸も一流の由紀さんの場合、音源だけでは不十分なのも事実。一昨年にはNHKの映像集「由紀さおり NHKアーカイブスBOX 1969-2022」（ こちらで紹介）が出ていますので、CDの後はDVDへとお進みください！