第5弾は、オリカラ集を含む90年代までの4枚組！

　シングル総売り上げ日本一の偉大なる作曲家、筒美京平先生。手がけた作品の中からレア音源だけに特化した企画として一昨年からスタートしたのが、ソニーミュージック・オーダーメイドファクトリーの「筒美京平 アーカイブス」シリーズです。
　コンセプトは「筒美京平ウルトラ・ベスト・トラックス」シリーズをはじめ「筒美京平作品集 GOLDEN HITSTORY」シリーズなど、過去にリリースされた筒美作品集に収録されなかったレア曲のみを、レコード会社の垣根を超えて集めるというもので、多くの筒美フリークを狂喜乱舞させています。
 
　第1弾「筒美京平 アーカイブス 1」（ こちらで紹介）以来、第2弾「筒美京平 アーカイブス 2」（ こちらで紹介）、第3弾「筒美京平 アーカイブス 3」（ こちらで紹介）、第4弾「筒美京平 アーカイブス 4」（ こちらで紹介）と、先生が作曲家デビューなさった1967年から少しずつ地道な歩みで進んでおりましたが、今回の第5弾「 筒美京平アーカイブス 5 」はなんと一挙4枚組！。
　しかも70年代、80年代、90年代を3枚の各ディスクにまとめた上、4枚目は筒美アレンジのオリジナル・カラオケで、それも70年代女性歌手に特化した24曲を収録という変則仕様。
　今回はソニー系の作品ばかりなので、これまでとは趣旨が異なる模様ですが、そのおかげか税抜き６千円という超お買い得なプライスが実現しております。
 
　内容を簡単に紹介しておきますと、まずDISC１は基本74年からで４からの続きという感じもしますが、CBS・ソニーのマニアックな筒美系男性陣総ざらえといった印象。
　松本隆さんとのコンビのスタートだった桑原一郎は、小松左京「日本沈没」のレコード化というCBS・ソニーが得意とした文芸シリーズ「ここより永遠に／鳥たちはどこへ」（A面は後のヒストリー版もイイです！）に加え、松本コンビ草創期のB面曲「ミルクティーの午後」。
　今回最もボリューミーな三浜鉄平は、有馬三恵子先生とのシンシアコンビによるデビューシングル「愛のかけら／君が欲しいよ」のほか、ファーストアルバム「懐かしいひと」から「破局」「ふるさとの人へ」というオリジナルに、レーベルメイトの福沢良「雨が降る」、尾崎紀世彦の「君と生きる」「自由であれば」といったカバーも含め大量収録となっています。
 
　個人的にウレシイのは「ぎんざNOW！」でもおなじみだったハリケーンの77年のデビューシングル「やさしいならず者／キスから始まる」と、同じく「ぎんざNOW！」出身でハリケーンの岸ヨシキから提供を受けたこともあるシミケンこと清水健太郎のサードアルバム「MR.LONELY」から「ブルー・ハレーション」「サザーン（南行き・逃避行）」。
　ほかに、ブレッド＆バターの変名・Le Mistral「SING ALONG」、ビリー・バンバンの弟・菅原進「マイ・ジャーニー・ソー・ロング」、石沢清幸「親友」といったコアなB面曲もありますが、以上すべてCBS・ソニーのアーティストとなっています。
 
　RCAからは、後に個性派シンガー・ソングライターとなる石黒ケイが、77年のデビューシングル「恋人時間／だからやさしく」と、ファーストアルバムの「ものがたり」から矢野顕子が在籍したザリバの 「或る日」とオフコースの「忘れ雪」。
　内山田洋とクール・ファイブは、B面曲「涙はやめて」と、今回最古となる72年のアルバム「長崎慕情」からいしだあゆみのカバー「おもいでの長崎」がチョイスされております。
 
　DISC2は80年代で、たのきん前のジャニーズ事務所所属だった川﨑麻世は同郷の桑名正博をカバーした「哀愁トゥナイト」とB面曲「目をさませ！仲間なら！」。
　沖縄出身のロッカー、マリーはwith メデューサとして出した81年のシングル「狂い咲きライラック／ブラディ・マリー」とデビューライブアルバムから「ムッシュSOLONG（ライブ）」。さらにMarieとして出した84年のセカンドアルバム「TIME FLOW ～時の流れに～ 」から「MAMMY MOO MEMORIES」「あなたなしでは生きてゆけない」。
　85年の東京JAP「熱風ラプソディ／シーサイド・エレジー」、石井明美87年の名曲「JOY」のB面にして大橋純子のカバーだった唯一の未CD化曲「やさしい人」、A面すらオムニバス盤だけでしかCD化されていなかった奥田圭子「Single Woman／青い蜜蜂」と、マニアから切望されていたナンバーも押さえられております。
 
　以上がCBS・ソニーで、達郎も所属していたRVC・Airからは、クールスの水口晴幸のソロアルバム「…ing」より「やりきれないぜ」「今は、おやすみ…」。
　ファンハウスからはアイドルバンドとして話題を呼んだXIE-XIE「恋するBilly the Kid」、平山みきのB面曲「バラの奇跡」という87年作品に加え、C-C-Bの弟分バンド・OKsによる88年のキリンビールCMソング「聖五月～光に恋して～／サンパティック・ラブ」、89年の「シャレた嘘／THROUGH THE NIGHT」が選ばれています。
 
　DISC3は90年代で、CD時代につきCD化済みですが、今となっては入手困難となったナンバーがずらり。
　BMGビクターのRA＄H with Hip Bone & Tee's「PEACE & EXTASY(EDITED MIX)」やRicardo「夢の棲む場所／君の為にできる事」はもちろん、92年の内藤やす子・クララ(EVE)「ヒーローに逢いたくて／愛の鳥」、93年神崎まきのアルバム曲「さよなら、Congratulations !」「月光夜想曲」「PUMPS A GO ! GO !」「ALL I WANT IS YOU」、GAOのソニー移籍第１弾シングル「愛をつかもうよ／風・今日・自由~To love is to be free」とソニー勢も多彩。
　ファンハウスは、ブレッド＆バターがデビュー曲以来橋本淳＋筒美コンビに委ねた96年の「トゥルー・ラブ」。これは、翌年以降に活発となる太田裕美、岩崎宏美、郷ひろみらかつての筒美系アーティストへの復活提供につながるムーブメントととらえると、新たな発見がありそうです。
 
　とはいえ、常に最新トレンドを追求した筒美先生のこと、90年代にそれを象徴するのがEPICのモデル勢でしょう。最も力を注いだのが、97年に歌手デビューした櫻田宗久で、怒濤のシングル三連発「愛の奴隷」「恋の呪文はヤムヤムヤム」「純情ハートブレイク」は圧巻（ムネムネは作詞の三浦徳子さん主導だったとか）。そして99年に大瀧詠一プロデュースで歌手デビューした市川実和子「愛の干物」。
　筒美先生のある意味最後のトレンド追求といいますか、まだまだ攻めの姿勢だった飽くなき創作意欲をあらためて実感できるのではないかと思います。
　昨年のベストアルバムで未発表の筒美作品を新録（ こちらで紹介）した鈴木蘭々も筒美先生が相当力を入れたアーティスト。今や貴重なデビューシングルのB面曲「叱られたくて」も必聴です。
 
　そしてDISC4は、今回ボーナスディスクという位置づけのオリジナル・カラオケ。
　筒美アレンジということで、どうしても70年代となりますが、注目はやっぱりシンシアこと南沙織でしょう。　「17才」はCD化済みですが、「哀愁のページ」「傷つく世代」「夏の感情」の3曲が初CD化。
　浅田美代子「赤い風船」も喜ばしいですし、優雅に至っては「処女航海」「胸さわぎ」のほか岡崎友紀をフィリーソウルにアレンジした「私は忘れない」も収録。オリカラマニア以外も待望の初CD化が満載です。
　太田裕美の「九月の雨」「ドール」はCD化済みですがBOXを買わないと聴けませんし、中原理恵「ディスコ・レディー」やジュディ・オング「惑いの午後」など、大ヒット曲以外のオリカラもウレシイですよね。
　個人的には筒美先生がアレンジだけ担当した野口五郎作品や、ケン田村「わすれておしまい」のシングルバージョンなどのカラオケも聴いてみたいな…。
 
　ということで、大ボリュームに大満足なものの、 こちらでも触れたように、企画担当プロデューサーの加納糾さんがファイナルカウントダウンの段階という現実を突きつけられた思いですが、シリーズの末永い存続を願う方々はきっと多いと思います。同感の皆さんは、ぜひ OMFへのリクエストをお願いいたします！