聖子のブルー…今度はなんと主演映画のサントラBOX!
松田聖子デビュー30周年。現在所属するユニバーサルの追随を許さず、古巣のソニーでは昨年からさまざまな記念商品のリリースが相次いでいますが、ツアービデオのBlu-ray Disc化を皮切りに、オリジナルアルバム&新バイブル(こちらで紹介)、シングル(こちらで紹介)のBlu-spec CD化へと続いてきた聖子のブルー化がまたまた進みました!
それが、コアな聖子ファンが切望していた未CD化を含むサントラ集、それも今回コンプリートとなる8枚組BOX「 松田聖子オリジナル・サウンドトラック集 1981~1985 」!
予定によると構成は、81年の初主演映画「野菊の墓」から、83年の「プルメリアの伝説 天国のキッス」、84年の「夏服のイヴ」、85年の「カリブ・愛のシンフォニー」という主演映画に、主題歌と挿入歌を担当したアニメ「ペンギンズメモリー 幸福物語」を加えた全5タイトル7枚。これにTV-CMの編集音源(予定)を含むスペシャル特典ディスクをプラスした計8枚になるのだとか。
いずれも新たなデジタル・リマスタリングによるBlu-spec CD仕様で、コンプリートBOXとしてのリリースになるのだそうです。
サントラBOXといって真っ先に思い出すのは2000年に出た百恵ちゃんの「女優伝説」ですが、そういえば聖子は映画でも第二の百恵ちゃんとして大きな期待を受け、完全に百恵ちゃんを踏襲したんですよね。
鳴り物入りの第1作こそ東映制作でしたが2作目以降は東宝、サントラはもちろんCBS・ソニー。「野菊の墓」の製作手法も「伊豆の踊子」と同じだし、文芸もので相手役は公募、主題歌はシングルB面というスタイル。同じ事務所の桜田淳子ではなく、やっぱり山口百恵の成功をなぞっていた感じがします。2作目以降の現代劇も、淳子の青春文芸生真面目映画ではなく、百恵ちゃんの「ふりむけば愛」とか「ホワイト・ラブ」の路線と言えそう。
しかし、演技力は言わずもがな、スクリーンへの収まりもツラかったし、何より歌と演技のギャップが大きかった…。
とはいえ、公開初日に見に行った「野菊の墓」は、大好きな加藤治子さんや樹木希林さんらが脇を固め聖子の演技に爆笑しながらもかなり感動した記憶があります…。サントラは買いませんでしたけど。
でも、ヅラの似合わなさと演技を酷評されようが「野菊の墓」が大きな注目を浴びたことは事実だし、当時「政夫さんっ!」というモノマネが流行ったり、「民さんは野菊のようだ」と言われたら前髪を上げオデコ全開にするギャグが流行したり、まったく似合わなかった時代物が別な意味でウケたのも事実ですからね。
結局、文芸大作はこの1作だけで映画出演をイヤがっていた聖子ですが、1年おいて現代劇へとシフト。東宝で中井貴一との「プルメリアの伝説 天国のキッス」を再スタートに、羽賀健二との「夏服のイヴ」、聖輝の結婚へとつながった神田正輝との「カリブ・愛のシンフォニー」と、豪華な海外ロケを重ねていくんですね。
相手役に恵まれ、友和さんみたいな固定したコンビでやっていればまた話は違っていたのかもしれませんし、個人的には中井貴一とゴールデンコンビになっていれば、女優としてももっとイケてたのかもしれない、なんて思います。
と、動員数はさておき、百恵ちゃんと比較され惨敗扱いされることの多かった聖子にとって、唯一勝っていたのがサントラのセールス。80年代という時代もありますし、アイドルでありながらアルバムアーティストの異名をとった聖子のことですから、最初からトップ10入りを果たしていますが、「プルメリアの伝説 天国のキッス」は強力でした。人気絶頂期だった上「プルメリアの花」「天国のキッス(extra version) 」「パシフィック」という映画用の新曲が入ったせいもあり、2枚組にもかかわらずオリコンアルバムチャートNo.1に輝いているんですよね。
今回「野菊の墓」とともに初CD化となりますが、歌入りのナンバーが久々のCD化となったのは喜ばしいことですし、BOXとはいえ名曲「パシフィック」がちゃんと流通されるのは個人的にとってもウレシイです。
サントラ特有のセリフやSEをイヤがる人も多いようですが、そんな方には「ペンギンズメモリー 幸福物語」がオススメ(ってバラ売りじゃないのが痛いですけど)。
主役はもちろん、サントリーのCMから生まれたキャラクター。ご存じ「SWEET MEMORIES」のヒットを生み出したあのペンギンです。若い聖子ファンでも「SWEET MEMORIES」の新装ジャケットに載っているのできっとおなじみのことでしょう。
このサントラ盤の帯には聖子の写真が入り、“聖子が歌いあげる愛のストーリー”というコピーも載っていたんで、すわ全編聖子が歌っているか!と思われがちですが、実際の歌入りは「ボーイの季節」のほか「Caribbean Wind」「SWEET MEMORIES」のバージョン違いと、新録の「Musical Life」です。
「Musical Life」はお子様コーラスがカワイイし、聖子の声もめちゃくちゃいいので未聴のかたがいらっしゃいましたらぜひ(ってバラ売りじゃないのが痛いですけど)。今回もし「Blue Love Letter」の歌入りがボートラに入れば言うことないですね。
というサントラBOX。同じ音源のリニューアルよりも初復刻、初CD化となるこちらの方がソソられ度は高そう。でも、百恵ちゃんの「女優伝説」もそうでしたけど、聖子の場合もコンプリートしたいと思うファンじゃないとなかなか食指が伸びないのかもしれません。かくいうワタシもどうしようか迷う前に、発売中止となったプレミアム・ボックスに思いを馳せて、ため息をついたりして…。
だって、あのボックスの20枚目は「Cinema」で、サントラのみに入っていた歌唱曲(「野の花にそよ風〜サブテーマ『雲』〜」「プルメリアの花」「天国のキッス(extra version) 」「パシフィック」「Caribbean Wind(Mixヴァージョン)」「Musical Life」「SWEET MEMORIES(Cinema Version) 」「SWEET MEMORIES(Re-Mix Version)」)がまとめられていたのです。しかもサントラからインストゥルメンタルのみが収録された特典ディスクも付くはずだったんですから。
と、相変わらずのVSOP(ベリー・スペシャル・ワン・パターン)、もはや執着以外の何ものでもないんですけど、プレミアム・ボックス企画の復活を同じように熱烈に望んでる人って、さほどいないのかなあ…。
(2010.4.30)