ナツメロ喫茶店/オススメ復刻盤431

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  ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#431

歌鬼(Ga-ki)3〜阿久悠×青春のハーモニー〜

(2010.7.14発売、UPCH-20201、¥3,000)

全編アカペラによる、阿久悠トリビュートの新作!

 亡くなられて丸3年。6月には作品集BOXの新 編「新・人間万葉歌〜阿久悠作詞集」(こちらで紹介)の発売も決まり、今もなおこの世に生き続け、人々の心と唇を動かし続ける阿久悠さん。
 いくつもの時代をあざやかに彩り、時には鋭くえぐり、そして時代さえも創り上げた阿久さんの詞の数々は、忘れようと意識しても忘れられるはずがありません。

 過去の音源を編んだアンソロジーだけでなく、新たな命が吹き込まれる作業も行われ続けるのが阿久さんのすごいところ。もうすっかりおなじみになった、山崎一稔さんプロデュースによる阿久悠トリビュート・シリーズの新作「 歌鬼3〜阿久悠×青春のハーモニー〜 」もお目見えすることになりました。

 むろん復刻盤ではありませんが、阿久さんが遺した詞の数々に、また新たな命が与えられていくのですから、やっぱりご紹介させていただくべきでしょう。
 シリーズを振り返ってみると、皮切りは、2008年に発売され日本レコード大賞企画賞に輝いた「歌鬼(Ga-Ki)〜阿久悠トリビュート〜 」。次は、あっと驚くフォーク勢との組み合わせでナツメロファンを驚かせた「歌鬼(Ga-ki)2〜阿久悠 vs.フォーク〜」(こちらで紹介)。そして諸事情によりいったん発売中止となったものの一部変更され無事リリースとなったピンク・レディー集「Bad Friends 〜阿久悠トリビュート〜」(こちらで紹介)が出まして、新作はこれに続く4作目となります。

 ユニバーサルの歌鬼(Ga-Ki)シリーズとしては第3弾になりますが、今回はなんと全編アカペラで構成。人の声だけで表現することで、詞の純粋な世界を浮かび上がらせるという演出が施されたような、好企画盤となっています。

 オリジナルはその時代を孕んだものだし、カバーもその時々のサウンドにくるまれてしまうものですから、それらをそぎ落とした時にこそ、阿久さんの詞、すなわちうたいうたとしての個性がより引き立つと考えるのは当然といえば当然かもしれません。とはいえ、またまた巧妙な切り口に感心、これは否が応でも興味津々で耳を傾けたくなってしまいますね。

 うたを担当するのは、昔からアカペラのコーラスワークにも定評があるStardust Revueをはじめ、日本のアカペラブームに先鞭を付けたゴスペラーズ、“ハモネプ”生まれのRAG FAIRとINSPi、“泣け歌”でもクローズアップされたJULEPS、TRY-TONE、AJI、そして中西圭三という8組。

 気になる選曲は、スターダストレビューが尾崎紀世彦の「また逢う日まで」とズー・ニー・ブーの「白いサンゴ礁」の2曲。「また逢う日まで」はもともとはズー・ニー・ブーの「ひとりの悲しみ」ですから、どちらも町田義人さんのボーカルがオリジナルということになりますね。
 一方、ゴスペラーズはモリケンの「さらば涙と言おう」、和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」という71、2年のヒットで、よりメッセージ性の高い感動作を取り上げています。
 またナベプロ系、RAG FAIRはリンダの「狙いうち」、INSPiはペドロ&カプリシャスの「五番街のマリーへ」を歌い、この2組で「宇宙戦艦ヤマト」をコラボするというスリリングな展開も。
 そして、ちょっと久しぶりな感じのAJIは森田公一とトップギャラン「青春時代」とジュリーの「勝手にしやがれ」といった男の美学系。JULEPSは西田敏行の「もしもピアノが弾けたなら」と杉田かおるの「鳥の詩」という池中玄太ペア。TRY-TONEはフィンガー5の「学園天国」となっています。

 さらに、今回の目玉といえるのが中西圭三による「泣き方を知らなかった」。阿久さんが“ 多夢星人(たむせいじん)”のペンネームで書き、お蔵入りになっていた詞に、一稔さんが曲をつけた未発表曲とのこと。
 90年代、谷村チンペイや堀内ベーヤンらと組んだ作品や、ご子息の太郎さんとの共作でこの名前を使っていたという阿久さんですが、歌謡曲ファンには坂本冬美、内田あかり、西田敏行らの楽曲で知った人も多そう。阿久ファンにはご自分の小説から取ったというペンネームに特別な思いを感じた人も多いのではないでしょうか。

 というアカペラ・カバーのトリビュート。その時代を特定したものであったにもかかわらず、今となっては黙示録にも思える阿久さんの詞が、どうよみがえるのか。人の声という最高の楽器で、どう伝わってくるのか。2010年の夏だからこそ受け止められるメッセージに、耳をすませたいと思っています。

 なおジャケットのイラストは、前作のピンク・レディー編に続き、銅版画家・小松美羽さんが担当。初期の阿久さんの詞のようなカオス的時代の濃さといいますか、無垢な欲望と美しい毒に満ちていたような70年代の雰囲気がとても出ているようでちょっとハッとしてしまいました。飽くなき夢を見続けたモンスターだった阿久さんと日本を象徴しているかのようにも思えますね。

(2010.5.31)

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