これぞオトナのお愉しみ、センチな昭和の秋うたコンピ!
ちょっと異常な猛暑が続く毎日ですが、カレンダーの上ではもうとっくに秋。立秋もお盆も過ぎ、あとは秋の足音に耳をすませるだけと相成りました。
涼しくなるのを待ちわびつつ、気分だけでも秋じたくを始めなきゃということで、このシーズンコンピ最新作をご紹介しましょう。おなじみとなりましたオトナのためのシリーズ、ほぼ昭和の秋うたを集めた「 秋色空間 」。
秋うたコンピといえば、2004年発売で虫の音のSEが入っていた「 秋の夜長と上手につきあう17の知恵 」や、選曲の幅が広い05年の「 秋歌 」などが思い浮かびますが、今回はそれらをベースにしながらも、ほぼ70年代でまとめ直した雰囲気。
劇画調でノスタルジックなジャケットとのミスマッチも、そこはかとなくよい感じで、大ヒット曲からちょっとシブイ隠れた名曲まで18曲が収録されています。
年代的にみると、最古は70年のトワ・エ・モワ「誰もいない海」で、最新は97年の河島英五「晩秋」。五輪真弓「恋人よ」、松田聖子「風立ちぬ」、高田みづえ「秋冬」という80年代ヒットも入っておりますが、基本的には70年代がメインです。
我らがシンシア・南沙織の三拍子そろった傑作「色づく街」や、清水ミチコではないけれど歌っていると知らぬ間に悦っちゃん口になってしまうチェリッシュ「白いギター」、史上最年少のシンガー・ソングライターという触れ込みで仲雅美ファンだった天才姉妹デュオ・チューインガムの「風と落葉と旅びと」とか、ファッショナブルな梓みちよ兄貴(!)の拓郎作品「メランコリー」とか、長時間にわたるナツメロ番組でもあまりかからなかったり、世に数多あるコンピ盤にもなかなか入らなかったりするナンバーなので、余計にしみじみしてしまいます。
それと、このコンピの特長として挙げられるのが、昭和52年、1977年の秋うた。狩人「コスモス街道」、太田裕美「九月の雨」、岩崎宏美「思秋期」、そして山口百恵「秋桜」。8月末から10月頭にかけてリリースされ、ヒットチャートを賑わせた4曲が揃い踏みしています。
どれもホントに名曲ですけど、百恵ちゃんとヒロリンの場合は、押しも押されもしない実力派歌手へと成長するターニングポイントだったことも見逃せません。それにつけても、こういうナンバーがごく当たり前にアイドルの新曲としてリリースされ、ベストテンでしのぎを削っていたというのがやっぱりスゴイ時代だったと思います。
筒美、阿久、松本、三木、都倉の各先生は職業作家としての技量を見せつけていますし、それとは別のアプローチだったにしても並べられても全く引けを取らないさださんの才能もお見事ですね。
ほかにも五木寛之先生作、同名映画のテーマだったハイ・ファイ・セット「燃える秋」、横山みゆきのカバーもスマッシュヒットしたアリスの「秋止符」などそのものズバリのおセンチな秋があったり、ガロ「学生街の喫茶店」や因幡晃「わかって下さい」など、ヒットした時季のイメージが強く、コレは秋うただったんだ!とあらためて気づかされるものもあったり。
どれも個人的に大好きなうたばかりで、思い出もいっぱい詰まっていますから、余計に味わい深いのかもしれません。ワタシはシンシアが歌う大好きな秋うたナンバー1「秋の午後」を自分で勝手にプラスして、あらためて聴こうかななんて思っています。
夏が夏らしいほど、秋の寂しさは募るもの。狂わんばかりの猛暑さえ、秋風が吹く頃にはいとおしい。そんな普遍的な感情を味わえるのも、美しい四季のある国にいてこそ。こんなコンピを聴いて、そんなことに感謝できるのも大人ならではの愉しみですね。
(2010.8.27)