昭和の名曲が、あのナレーション入りでよみがえる!
「1週間のご無沙汰でした。司会の玉置宏でございます」——そんなお決まりの名ゼリフで、昭和のお茶の間ではおなじみの存在だった名司会者・玉置宏さん。今年の2月にお亡くなりになられましたが、あの名調子はいろんな名曲のイントロとともに多くの人の耳に焼き付いていることでしょう。
このサイト的には、重なる時代はあるもののちょっとジャンルや全盛期がズレていますけど、玉置さんがレギュラーだったテレビやラジオはホントに長寿番組が多かったので、覚えているという皆さんは多いはずですよね。
中でもスターが総出演していた「ロッテ 歌のアルバム」や、数々の名人芸を生んだ「象印スターものまね大合戦」なんか、ホントに印象的でしたが、個人的にはやっぱりスターものまね大合戦。象印賞の常連・マコ(森昌子)が真理ちゃんやシンシア、アグネスやミヨちゃんをソックリにモノマネした場面とか、お腹をかかえて笑ったピーターの形態模写とか、今もしっかり覚えています。
さて、そんな玉置さんのナレーションとともに、古き良き時代の歌謡曲を綴った追悼コンピがリリースされることになりました。当初は「玉置宏で綴るヒット曲大全集」として6月に発売予定だったようですが、延期の末満を持して出ることになった「名調子!玉置宏の昭和ヒットコレクション」シリーズ。
「 名調子!玉置宏の昭和ヒットコレクション Vol.1 」「 名調子!玉置宏の昭和ヒットコレクション Vol.2 」「 名調子!玉置宏の昭和ヒットコレクション Vol.3 」「 名調子!玉置宏の昭和ヒットコレクション Vol.4 」「 名調子!玉置宏の昭和ヒットコレクション Vol.5 」の5タイトルに18曲ずつ収録し、全部あわせて90曲となるそうです。
玉置さんの司会入りCDと言えば、オープニングやエンディングにナレーションをはさんで構成した「ロッテ 歌のアルバム」シリーズが2003年に出ていましたし、翌年には食玩ブームに追随する形でそのミニ版といえるCD付き食玩(ガーナミルクチョコレート発売40周年記念「ロッテ歌のアルバム ガーナミルク」)も発売されていました。
後者の場合は収録内容が復刻モノのターゲットとは年代がビミョーにずれていたせいか、グリコ 「タイムスリップグリコ 青春のメロディーチョコレート」ほどには話題にならなかったようで残念でしたけど、今回のシリーズはやはり追悼盤ですし、哀悼の意を表しつつ拝聴したいものです。
しかも今回は前出のものとは異なり、1曲1曲、原曲のイントロに玉置さんのナレーションが重なって入るという、まさに全編を通して名調子が楽しめる内容。70年代後半、玉置さんが膨大なナレーションを録音したカラオケレコードの音源をもとに、曲頭のナレーションのみを抜き取り、オリジナル音源にかぶせるという手の込んだ編集盤になっているようです。
ところでこのナレーション音源、“1週間のご無沙汰、カラオケひろしでございます”っていうCMで話題になった家庭用カラオケセットが出た頃でしょうか。今や欧米にも広がったカラオケという大衆文化。その本格的なスタートになった昭和52、3年はすごいブームでした。当時カラオケ機に参入したビクターなどは力の入れようがすごくて、淳子もヒロリンもピンク・レディーもカラオケLPを出していたほどです。
我が身を振り返りましても、いろいろ思い出はありまして…。結局我が家には導入されなかったんですが、カラオケ機が鎮座してた両親の実家や親戚宅に行っては歌いたがったものです。しかし、そこは8トラ時代、演歌ばっかりで歌えるカラオケは百恵ちゃんか石川さゆりぐらいしかありませんでした。そんなこんなで、お年玉でミニカラオケを買おうか本気で悩んだりして。そう、“お父さんも歌手になれます”という高田みづえがCMをしてたナショナルのヤツです…。
また脱線しましたが、今回のシリーズ。コンピとはいえどうしても発売元のキング音源が中心になっていたり、カラオケレコード最盛期の録音ゆえ最新曲でも78(昭和53)年になってしまうのが悩ましいところですけど、それを言及してしまうと本末転倒になってしまうのでこの際よしとして…。
5タイトル中、70年代が中心なのは2タイトル。「 名調子!玉置宏の昭和ヒットコレクション Vol.3 」も捨てがたいですが、ここではやっぱりヤングポップス中心の「 名調子!玉置宏の昭和ヒットコレクション Vol.4 」をオススメします。
郷ひろみ「ハリウッド・スキャンダル 」、西城秀樹「ブルースカイブルー」 、野口五郎「グッド・ラック」 という新御三家による78年秋の勝負曲やジュリーの「勝手にしやがれ」「サムライ」「LOVE(抱きしめたい)」に加え、この年に絶頂期を迎えたピンク・レディーの「サウスポー」や「ウォンテッド(指名手配)」も収録。
「ウォンテッド(指名手配)」の紹介では「女の心の秘密の園に、妖(あや)しく揺れる恋の炎!逃がさないわよぉ〜っ!ウォンテッド!」とおっしゃっております。最後のフレーズなんか、玉置さんがPLのアクションをマネするところも思い浮かびますよね。
では、ここで問題です。玉置さんが「青春のすべてを燃焼させ尽くしたような、長〜い、長〜い1日でした。あすからは期待と不安の入り交じった、ひとり暮らしの始まりです。ひとつの青春が過ぎ去りました」というのは何の曲でしょう?
そう、ご名答! 正解はこの年に解散したキャンディーズの「微笑がえし」でした。
Vol.3と4を見てみると、渡辺真知子の「かもめが翔んだ日」や「迷い道」、中原理恵「東京ららばい」さとう宗幸「青葉城恋唄」という78年の新人賞レースを競った面々や、ツイスト、アリスといったニューミュージック勢も入っているものの、ヤング路線であってもオトナにもよく歌われたものに限られているので、ティーンアイドルでは支持層が厚かった高田みづえ「硝子坂」あたりしか入ってないのが、やっぱり残念です。
新3人娘だって、花の中3トリオだって、玉置さんとはよく共演していましたからね。
ところで、当時はまだワンマンショーが珍しかった時代。歌番組だけでなく、70年代半ばまではアイドル歌手のリサイタルや歌謡ショーといった興業には必ず専属の司会者がいましたし、漫談師や漫才師との営業がセットになっている場合は彼らが担当するケースも多々あったように記憶しています。
そういえば、平凡愛読者の祭典、ニッポン放送「平凡アワー スターハイライトショー」のメイン司会も玉置さんでした。何年か前には玉置さん司会で復活コンサートもありましたが、出演者はやはり微妙に世代がズレておりましたっけ。
そういう意味では、我々世代には本誌と同様にライバルの明星、すなわち文化放送「明星 ヤングソングショー」の方をヒイキにする人が多かったはずですが、それには夏木ゆたかさんの力が大きかったと思います。
スポーツ刈りではなく長髪、背広ではなくブレザーを颯爽と着た夏木さん独特のノリ、例えば「ヤングのアイドル、エキゾチック・セブンティーン!その名も南沙織ちゃん、『17才』!イエーイ!」みたいな、ナウいMCは、とってもカックイー感じでしたから。
これらをはじめ、いろんなテレビ・ラジオの番組は頻繁に公開録音を行っていて、1回で2週分を録るのが常でしたから、司会付きで何人ものスターが一堂に集ったものです。
公録にはホントによく出かけましたが、スポンサーにも媒体にもあり余るほど元気があって、今思うとホントに古き良き時代だったなあという感じがします。
そういう昭和50年代前半あたりまでの歌番組やステージの雰囲気が、玉置さんの名調子によって十二分に味わえるであろうこのシリーズ。よく耳にする懐かしのヒット曲でさえ、また違った思い出や今を生きる力をよみがえらせてくれるかもしれませんよ。
あ、PLやキャンディーズの大ファンの方の中には、玉置Naバージョンとしてコレクションする人もいそうだし、コレクターの皆さんもチェックをお忘れなく。
(2010.7.27)