“愛しい歌”の音源も完結! 阿久さんの名BOX新編登場!
光陰矢のごとしとはよく言ったもので、阿久さんがお亡くなりになってからもう3年になるのですね。
むろん年端もゆかぬ頃から聴いてきた阿久さんの詞の数々は、忘れることなどできないほど心の奥深くに染み付いていますし、さほど好きでなかったうたでさえもふとした時によく口をついて出てきます。
また、大好きな重松清さんによる傑作「星をつくった男〜阿久悠と、その時代」の単行本などは、昨年の発刊以来枕元の本棚にしっかり鎮座していたりして、やっぱり昔と何ら変わることなく阿久さんの遺したうたに囲まれているのでした。
さて、今年は阿久悠作詞生活45周年にあたるということで、以前こちらで紹介したことのあるあの名ボックス、青盤、赤盤と続いた人間万葉歌シリーズの続々編、白盤となる「 新・人間万葉歌 阿久悠 作詞集 」のリリースが決まったそうです!
今回は3枚組全57曲という予定の内容で、前2作(「 人間万葉歌~阿久悠作詞集 」「 続・人間万葉歌~阿久悠 作詞集 」)とのダブりは1曲もないそうですからウレシイじゃありませんか。
ただ、テーマは“未来へと歌い継ぐ、阿久悠大全集・新編”とのことですので、シリーズを持っている人や、フリークの方にオススメ。阿久さんビギナーは、やっぱり順を追ってそろえていくのをオススメします。
今回は“阿久悠の愛しい歌”と、恒例の“新・人間万葉歌〜阿久悠トリビュートPart2”という構成ですが、マニアにとっての目玉は、やはり何と言っても阿久さんの思い入れがたっぷり詰まったあの曲たちの収録。
そう、オフィシャルサイト・あんでぱんだんで「あまり売れなかったがなぜか愛しい歌」として連載され、単行本「なぜか売れなかったが 愛しい歌」として河出書房新社から出版されたエッセイ(文庫化の際に「なぜか売れなかったぼくの愛しい歌」と改題)に登場する50曲のうち、シリーズ前作2作に収録されなかった25曲の完全収録です。
ザ・モップス「ベラよ急げ」、和田アキ子「その時わたしに何が起こったの?」、北原ミレイ「棄てるものがあるうちはいい」、いしだあゆみ「渚にて」、山本リンダ「真赤な鞄」、森田公一とトップギャラン「地球最後の日」、ダーク・ダックス「二十二歳まで」、井上忠夫「青春三文オペラ」、左とん平「 秋田から来た先生」、江利チエミ「夜ふかし気分」、茶木みやこ「あざみの如く棘あれば」、宮前ユキ「GIVE UP」、橋幸夫「股旅'78」、沢田研二「探偵—哀しきチェイサー」、Char「 ブルークリスマス」、研ナオコ「口紅をふきとれ」、SHOT GUN「愛は心のフルコース」、草刈正雄「デューク」、オール・ジャパン・デビル・バンド「トゥモロー」、黛ジュン「 夢追いびとよ」、ジュン(井上順)「お茶の水えれじい」、田原俊彦「ベルエポックによろしく」、桑名正博「回転木馬」、香田晋「酒場の金魚」、すがはらやすのり「D-51(でこいち)」など、なぜか収録されなかった愛しい歌が、日の目を見るのですね。
さらに阿久さんのラストメッセージが凝縮されているという晩年(90年代後半〜2000年代)の代表曲も網羅した内容になっているそうです。
中には初CD化となるものもありますし、個人的に音源を持っていないのも多いので、めちゃくちゃ楽しみ。
エッセイを読みながら聴くとさらに味わい深くなると思いますし、文章はまだネットでも読めると思いますので、未読の方もぜひこの機会に、そんな贅沢な楽しみ方をなさってみては。
そして恒例の阿久悠トリビュート盤も充実。
古内東子による「九時からのリリィ」や石川さゆりの「ペッパー警部」、ちあきなおみ「五番街のマリーへ」、ザ・ピーナッツ「また逢う日まで」など新旧のカバーや近年の阿久さんカバーアルバムやトリビュート盤からチョイスされたリメイクも。さらに新録も2曲ほど入るのだとか。
もちろん、いつも通り北沢夏音さんの読み応えたっぷりの解説のほか、今回はなんと重松清さんの寄稿も入るそうで、聴いて楽しい、読んで楽しい充実ボックスに仕上がる模様です。
今回はきっとマニアックな分、阿久さんの詞の黙示録度合いが高いのではないかと思っています。
世も末と言われるこの時代を、いかにして生きればいいのか。このボックスにはなんだかその答えが隠されているような気がして、貪るように聴いてしまいそうな、そんな気持ちでいます。
(2010.5.20)