初CD化7曲を含む2枚組の筒美作品集、OMFに登場!
全国1000万(?)の筒美フリークと、津々浦々の中原理恵ファンに朗報! 南沙織から始まって朝丘雪路、平山三紀、坂本スミ子、優雅と続いてきた“筒美京平を歌う”シリーズの久々となる新作が、G☆Bそれもオーダーメイドファクトリーのスペシャル企画商品として候補に挙がりました。
それが堂々2枚組の「GOLDEN☆BEST limited 中原理恵 筒美京平を歌う 」!
理恵ちゃんといえば、CBS・ソニー時代のシングル曲はプレデビュー盤を含め2枚のベスト盤でCD化されていますが、アルバムはセカンドの「KILLING ME」がCD選書で、デビューアルバムの「TOUCH ME」とサードの「夢つれづれ」がオーダーメイドで復刻されているだけ。
ファーストなんか山下達郎や吉田美奈子などファンにコレクターの多い作家陣だったにもかかわらず、オーダーメイドでは意外にも伸び悩み、1stステージも2ndステージもクリアするのにかなりの時間がかかったんですよね。
なので、4枚目の「VIVID」以降はもうムリかなあと思っていたところに今度の企画。コレは仕切り直し、あらためての試金石となる可能性も高いので、後期のアルバムを望む皆さんも、これまでのCDでこの音源はほとんど持っているからとスルーを決め込んでいる皆さんも、そしてもちろんユキヒロフリークの皆さんも、ぜひ投票のほどお願いしますね。
さて、北海道はススキノのディスコの翔んでるギャルとしてブイブイいわせてたという理恵ちゃんですが、楽曲制作を手がけたのは太田裕美で大成功を収めたCBS・ソニーの白川隆三ディレクター。
クリームソーダ系で出たRIE名義のプレデビュー曲「ロックンロール・ランデブーのテーマ」はおいといて、78年2月にアルバムデビューを果たしたのですね。和製AORというかクロスオーバーというか、全編早すぎたシティポップス系でカッコよすぎたためシングルカットせず、松本隆+筒美京平のゴールデンコンビにシングル制作を依頼。新たに「東京ららばい」が出来上がったというエピソードが残っています。
そこからの活躍は皆さんご存じの通り。3月に出た「東京ららばい」はサンタ・エスメラルダ的なディスコサウンドとともに、ポマードこってり(ホントはDEPだと思う)のビジュアルインパクトが話題を呼び、またたく間にヒット街道をばく進。新人賞を総ナメし、同期の渡辺真知子や同年ブレイクした庄野真代とともに女性ニューミュージック&シティポップスブームを築きました。
飛び抜けたファッションセンスや、アーバンなミリョクがウリだった理恵ちゃんですが、デビュー曲から、サントリー・デリカワインの「ディスコ・レディー」、壮大なスケールの「マギーへの手紙」などなど、中期までの核をなしたのはもちろん松本+筒美コンビ。日本テレビ音楽祭金の鳩賞ノミネート曲にしてELOのようなサウンドが素晴らしい「SHOW BOAT」を筆頭に、シブイ名曲「寒い国から来た女」や、当時人気の吉祥寺をテーマにノスタルジックなギターサウンド「懐かしのジョージ・タウン」などシングル曲は、詩も曲も傑出していますよね。
コレは筒美作品集ですが、詩は松本さんが大半を占めるので、はすっぱな一面をのぞかせた風街詩集の趣もあったりします。松本さんが理恵ちゃんに書いた作品には、当時最新のトレンドアイテムや話題のスポットがよく出てきますから、そのへんの世相風俗をチェックしてみるのも楽しいかも。
また今回、初CD化もありまして、「BOY HUNT」「卍 Blues」「やさしさの証明」「螺旋階段」というB面曲、シングルとして出るはずだった「くれない小唄」(81年のLP「夢あわせ」)や「想い出ランデブー」「涙のカクテル」(82年のLP「インスピレーション」)といったアルバム収録曲、合わせて7曲がそれにあたるんじゃないでしょうか。
ちなみにこの中でのマイベストは、とっても地味ですけど「やさしさの証明」。詩世界は、松本隆の描く、蓮っ葉で不幸だけどいじらしい女性像の最高峰。曲とのバランスも悲哀のさじ加減が絶妙で、寒い日のミルクティーのような温かさに包まれる佳曲ではないかと思っています。
理恵ちゃんの音楽はまっとうに評価されていないのが残念ですが、コレを機に多くの方が再評価してくださることを祈っております。いつの間にか第一線から退かれたようですが、親友である渡辺まっちゃんのブログでお見かけした姿ではお元気そうでしたし、相変わらずイイ女みたいですよ。
ところで、この筒美時代が終わってひと息ついた後は、田辺エージェンシー所属タレントらしくコメディエンヌ的活動も増え、欽ドンでブレイクした後はコミカルなナンバーも目立っていきますが、やっぱり理恵ちゃんは二のセンがイチバン。
研ナオコみたいに歌とコントのギャップで売っていくには、理恵ちゃんってセンスがあってカッコよすぎるし、器用だからコメディーもできるけど、進むべきはあの道ではなかったような気がしますから。
今回は、筒美先生ファンがこぞって投票してくださるような気もしますが、フリークの皆さんはきっと既に2枚のフルベスト盤やCD化済みのアルバムはお持ちだと思うので、あと7曲のために入手するかどうかが判断の分かれ目かも。でも、何とぞよろしくお願いしますね。復刻が実現したあかつきには、良い妻よし子さんのようにお・み・ご・と〜と拍手いたしますから。
そしてジャケットがイカす「VIVID」や神田広美も詩を書いた「Heart of Gold」をはじめ、ユキヒロ+シティポップスの「LADY麗(REI)[RIE]」、かしぶち哲郎プロデュースの「UN ART DE VIVRE」といった中後期のアルバム復刻へとつながることも期待して。
(2010.4.26)