ナツメロ喫茶店/オススメ復刻盤363

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  ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#363

Bad Friends 〜阿久悠トリビュート〜 

2009.8.19発売、DVD付き初回盤:PCCA-2970、¥3,675/通常盤:PCCA-2971、¥3,150) *発売延期となりました。ご注意ください。
(2009.12.16発売、PCCA-03069、¥3,150)

名シリーズ第3弾は、超豪華なピンク・レディーしばり!

 月日の経つのはホントに早いもので、はや阿久悠さんの3回忌を迎えようとしています。このところ、敬愛している重松清さんが阿久さんの足跡を丹念に辿るドキュメントを連載なさっていて(週刊現代「星をつくった男〜阿久悠と、その時代」)、毎週楽しみに読みながら往時の阿久さんに思いを馳せたりしていますが、そこに山崎一稔さんプロデュースによる阿久悠トリビュート第3弾の知らせが届きました。

 それがポニーキャニオンからの発売となる「Bad Friends〜阿久悠トリビュート〜」。毎度毎度、スゴイ企画力と実行力でファンを唸らせているシリーズ(ユニバーサルミュージックから出た第2弾はこちらで紹介)ですが、なんと今度は、阿久さん最大のヒット作、ピンク・レディーへの提供作品! 復刻盤ではありませんが、やっぱりご紹介させていただくべきですよね。

 当初アナウンスされていた7月29日発売予定から少し延期になってしまいましたが、待った甲斐があって、今回もスゴイメンツが意外な組み合わせて参加するというビッグプロジェクトとなっています。

 子どもの時から阿久さんの詞に触れて、大好きなものもそうでないものもたくさんあるワタシですが、最もたくさん聴き、熱心に口ずさみ、いつ何どきでも暗誦できるほど体に染みついている阿久さんの詞は、まぎれもなくピンク・レディーなのでした。
 アラフォー世代なら誰もがトリコになったであろうPLですから、そういうピンクチルドレンは全国に数えきれないほどいることでしょう。

 近年のPL復活時も、阿久さんが亡くなられた時も、30年近く耳にしてなかった詞でさえ、脳内に刻み込まれているのに気がついて我ながら驚いたことがあります。
 中でも思い出深いのは、小学生の時にはPLらしいただの面白ソングだと思っていた「モンスター」という詞。思春期には余りにも陳腐に思え、歌い踊ったことさえ後悔し、毛嫌いするようになった詞。それが大人になって初めて詞の真の意味に気づき、嗚咽したこともありました。

 と、話がそれてしまいましたが、今回のトリビュート盤では、“Bad Friends”というタイトルにも反映されているように、阿久さんのペンネームの由来でもある“悪友”がテーマ。ミーとケイのデュオだったからこそあそこまでの社会現象を巻き起こしたご本家・PLのスタイルを意識されているようで、基本的にそれぞれ息の合った2人のアーティストが担当するという形式になっています。

 全12曲の収録曲はといいますと、まずはちょっと前から巷で話題になっていた「カメレオン・アーミー」。歌うは、前作に引き続き参加の尾崎亜美ちゃんと、パフィーの大貫亜美というダブルの“カメレオン亜美”。昭和的な一流のダジャレが効いている上、ギターは奥田民生と、なんともゴージャスなコラボです。
 また、土屋アンナと夏木マリの“さくらん”な組み合わせによる「UFO」もスゴイ。年格好は違えども、どこか似たもの同士っぽい過激な雰囲気を持っている2人のUFOがどこまで翔んでしまっているか、コレも聴きものですね。

 お久しぶりな感じの久宝留理子とバービー杏子の「カルメン’77」も往年のエピック系ジョイントのようだし、昔からPLソングを歌ってたシュークリームシュの米米な「ジパング」も理屈抜きに楽しそう。
 リアルでPLにハマったであろう80年代アイドルの代表格・堀ちえみが山咲トオルと歌う「S・O・S」なんていう異色の顔合わせも、怖いもの聴きたさ度バツグンです。

 ほかにも、第1弾では「ペッパー警部」を歌い、シングル化もしたMizrockとFried PrideのShihoによる「ウォンテッド(指名手配)」、NHKの朝ドラをきっかけにカバーづいているソーセージ・茉奈佳奈の「透明人間」に加え、ルーツをたどるとおニャン子を通り越してPLになるであろう渡り廊下走り隊「渚のシンドバッド」や10年ぶりの復活が話題を集めているチェキッ娘「サウスポー」といったフジサンケイ系アイドルグループも登場。
 さらには怪人と戦った「仮面ライダーキバ」の麻生ゆりと麻生恵すなわち高橋優と柳沢ななによる「モンスター」、最近世間を騒がせた来栖あつこと、宮内知美のミニスカポリスが歌う「ペッパー警部」も計算された選曲と言えるでしょう。

 このへん、PLを知らない世代がどういった解釈でやるのか、阿久さんの遺したPLという偉大なるパビリオンの神髄がちゃんと継承されているのか、大いに興味をそそられますね。

 そして今回の目玉と言えるのが、トップシークレット扱いの「河原の石川五右衛門」。ナイアガラフリークにはおなじみだと思いますが、これはそもそもかの大瀧詠一さんによる「渚のシンドバッド」のパロディーソング。御大率いるナイアガラ・フォーリンスターズ78年のアルバム「Let's Ondo Again」に入るはずが、阿久さんからのNGで収録が見送られたといういわく付きのナンバーです。
 当時はPL全盛期でしたし、大瀧さんはまだ理解されないアーティストという立ち位置でしたし、そのアルバム中にはピンク・レディーの「モンスター」ならぬモンスターの「ピンク・レディー」も収録されてるわで、けしからん!という感じだったのでしょうか。

 結局はそれもPLが解散し、ロンバケのブレイク後に無事封印が解かれ、世に出ていますが、2009年になって阿久悠トリビュート盤にこういう形で収録してしまう心憎さよ。本家参入の本歌取りとでも言うべきアイデアに、阿久さんも天国でまたニヤリとなさっていることでしょう。
 なお、初回盤はDVD付きの2枚組でこの歌のビデオクリップと、メイキング映像が収録されるそうなので、やっぱり初回盤を手に入れたいですね。

 ところで、個人的に胸を打たれ、フェイバリットな阿久さんのPLと言えば、こちらでも紹介したPLアニメ主題歌「フレンズ」と、ラストシングルのB面「夢中がいちばん美しい」。メガヒットではないし、今回の収録ナンバーとはむろん無縁ですが、ぜひこの機会に併せてお聴きいただき、ちょっと変わった角度から阿久さんのPLへの思いを感じてもらえればと思っています。

 ともあれ、またまた素晴らしい企画ですし、トリビュート盤が出る前にPLの「 阿久悠作品集 」でメガヒットを復習しておく、というのもいいかもしれませんね。

(2009.7.11)

*残念ながら、諸般の事情により発売がいったん中止となりましたが、品番も新たに「 Bad Friends~阿久悠トリビュート~ 」として、12月16日発売に決定しました。上記の本文は発売延期になる前のものをもとにしていますので、ご注意ください。


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