シリーズ最新作は70年代２ペア！輝くうたの宝石コンピ！
うたにもアーティストにも強烈な個性があり、圧倒的なパワーと輝きを放つ70年代のヒットナンバー。その中でも、現在まで歌い継がれる名曲をメーカーやレーベルの枠を超えてズラリとそろえた２枚組、それも収録時間ギリギリまで入って超がつくほどお得な２タイトルが同時発売となります。
70年代を振り返ると、前半にはテレビを中心に親しまれお茶の間で一家そろって覚えた、職業作家さんたちによる歌謡曲やアイドルポップス。あるいはラジオを中心にヤングの間に浸透していったシンガー・ソングライターのフォークやニューミュージック。そして後半にはその２つが融合し80年代へと続く新しい流れのスタイルが思い浮かびますが、それらはすべて、時代というものを如実に映した流行歌でした。
こういうシリーズではどうしても演歌寄りの歌謡曲がスルーされてしまいますが、タイトルも素敵なこの２タイトルを手に入れれば、地上波テレビの名曲特番などの出てくるラインアップはほぼ網羅できると言っても過言ではないでしょう。
まずはなんと40曲を収録、どちらかといえばフォーク中心のイメージが強い“静”の「 クライマックス 70’s サファイア
」。今となっては涙なくしては聴けない加藤和彦と北山修「あの素晴らしい愛をもう一度」や、よしだたくろうの「結婚しようよ」「落陽」、かぐや姫の「神田川」に井上陽水「心もよう」、グレープの「精霊流し」といった70年代前半の私小説フォークが目立ちますが、オープニングを飾るのは太田裕美の「木綿のハンカチーフ」。
ファンの欲目もありますが、アイドルポップス、歌謡曲、フォークの中道を切り開き、ニューミュージックという流れの中心にいた彼女こそ、70年代の流行歌を象徴する存在です。
渡辺真知子「かもめが翔んだ日」や八神純子「みずいろの雨」をそれに連なるものとして聴くのも面白いのではないかと思いますし、ゴダイゴ「ガンダーラ」、アリス「チャンピオン」などと併せて、ＴＢＳザ・ベストテンの隆盛を支えに到達点を迎えた70年代歌謡曲というものを堪能するのもいいでしょう。
例のベストテン中継以外、ほとんど歌謡番組出演のなかった松山千春「季節の中で」にしてもCMから生まれたヒット曲であったワケですし、うたから流行語を生んだダウン・タウン・ブギウギ・バンド「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」なんかもテレビを通してあっという間に全国へと広まっていきましたっけ。
トップメディアへと成長した70年代のテレビの絶大な威力をひしひしと感じますね。
テレビを舞台に成長したと言えば、筆頭はやはりアイドル勢。その代表格が社会現象となったモンスター、ピンク・レディーです。最もお色気度が高いデビュー曲「ペッパー警部」がチョイスされていますが、見逃せないのが次に収録されたキャンディーズ。本質はＰＬと異なるもののメディアからライバル扱いされてしまった３人のナンバーが、唯一追随したようなパフォーマンスの拓郎作品「やさしい悪魔」というのも一興です。
ほかに南沙織「色づく街」、郷ひろみ「よろしく哀愁」、岩崎宏美「ロマンス」など筒美先生のエバーグリーンな名曲や、百恵ちゃんのまさしんぐわーるど「秋桜」もしっかり入っていますが、アイドルでもシブイ路線が選ばれております。
また80年代にはヒット曲の必要条件になってしまうCMやドラマ主題歌も、中村雅俊「ふれあい」、サーカス「Mr.サマータイム」、水谷豊「カリフォルニア・コネクション」、海援隊「贈る言葉」（ヒットしたのは80年ですが）などこの時代の成功があってこそでしょう。
そのほか、布施明「シクラメンのかほり」とジュディ・オング「魅せられて」のレコード大賞受賞曲くらべや、みゆきVSユーミンの図式を中島みゆき「わかれうた」と、ユーミンソング（バンバン「『いちご白書』をもう一度」、ハイ・ファイ・セット「卒業写真 」）で確認したり、いろんな楽しみ方もできそうですね。
一方、歌謡曲寄りの選曲が“動”を感じる「 クライマックス 70’s ルビー
」はテレビとの関係性がもっと顕著で、ビジュアル露出も重要な要素でなったエンタメ系ナンバーが中心。こちらも40曲めいっぱい収録となっております。西城秀樹の最大ヒット「YOUNG MAN (Y.M.C.A.) 」や、ピンク・レディーの「サウスポー」なんか、みんなマネしましたよね。今もなおイントロを聴くだけで条件反射的に体が動きだしたりして。そういう人、絶対多いですよね。この２曲はともに歌謡大賞受賞曲だったりします。
「サウスポー」と78年つながりでいえば百恵ちゃんのツッパリ路線「プレイバック part 2」、郷ひろみ・樹木希林の「ムー一族」な「林檎殺人事件」、キャンディーズ現役最後のシングル「微笑がえし」と、これまたビジュアルとともに鮮烈に記憶されている名曲たちがズラリ。
一部を挙げるだけでもいかにスゴイ時代であったかが納得できるはずですし、その時代に生きられたことに感謝の念は尽きません。
さらに、タイアップものもギッシリ。CM戦争と呼ばれた化粧品業界はニューミュージック起用率が高く、ツイスト「燃えろいい女」、堀内孝雄「君のひとみは10000ボルト」、尾崎亜美「マイ ピュア レディ」、桑名正博「セクシャルバイオレット No.1」、ゴダイゴのミッキーさんによる布施明「君は薔薇より美しい」、桑江知子「私のハートはストップモーション」と枚挙にいとまがありません。
加えて中村雅俊「俺たちの旅」、松崎しげる「愛のメモリー」、山口百恵「いい日 旅立ち」、岸田智史「きみの朝」、甲斐バンド「HERO（ヒーローになる時、それは今）」、財津和夫「Wake Up」もCMやドラマなど、テレビを媒介してヒットしていったナンバーといえますね。
ほかにもフィンガー5「学園天国 」、田中星児「ビューティフル・サンデー」、ゴダイゴ「ビューティフル・ネーム」など、アラフォーがチビッコ時代に愛したであろう曲もテンコ盛り。
いずれもレコードを買わない人でもテレビで全部覚えられたのではないでしょうか。
なお、泉谷しげる「春夏秋冬」、よしだたくろう「今日までそして明日から」などアラカン世代のお父さんも泣いて喜ぶフォークの名曲や、日本語ロックのルーツ・はっぴいえんどの「風をあつめて」、さらにはアイドルにも愛された大瀧御大の音壁サウンド・吉田美奈子「夢で逢えたら」、尾崎紀世彦のレコ大受賞曲「また逢う日まで」と和田アキ子の最優秀歌唱賞「あの鐘を鳴らすのはあなた」といった昭和歌謡の不朽の名作も入っており、バランスもしっかりとれていますぞ。
という、時を超えて輝き続ける宝石のようなコンピ。発売がクリスマス直前ですし、プレゼントにも最適なアイテムとしてオススメしたいと思います。
いろんな背景や要素はあるものの、地上波テレビの音楽番組も今や70〜80年代のナツメロが主流ですし、特番だけでなくレギュラーでもその色合いは濃くなっている昨今。
昔をただ懐かしむ必要はないし、過去が素晴らしいことばかりではないけど、これを機に同時代に生きる人みんなが共有していたヒット曲、すなわち流行歌の偉大さを再認識して、そういう意味の新しい流行歌がたくさん生まれればいいなあ。
ナツメロファンとしてはこういうブームはウレシイ限りですが、これ以上流行歌がなくなることをホントに心配しているのです。だって流行歌は時代を映す鏡だし、歌は世に連れ人に連れ。それがなくなるってことは、どういうことなのか。ワタシには家族や組織、社会、そして国家まで、個以外のものが成立し得ないってことに思えてならないのです。
（2009.11.4）
