永遠の少女の成長物語、究極の集大成BOX!
おニャン子クラブのメンバーの中でも根強い人気を誇る会員番号12番、永遠の少女・河合その子。2007年に発売されたDVD-BOXは大好評のうちに完売(オーダーメイドファクトリーで「 コンプリートDVD BOX 」のアンコールプレス受付中!)し、CD-BOXを求めるリクエストは多かったと聞きます。
そんな熱い声に応えるように、CD9枚とDVD1枚をセットにした10枚組のプレミアムBOXセット「 河合その子プレミアム 」がついに登場することになりました。
85年のファースト「その子」から90年のラストベスト「Sonnet」まで、現役時代に残した9枚のアルバムを完全収録。シングル曲などアルバム未収録もボーナストラックとしてプラスした上、なんと未発表音源や初商品化音源も入り、超レア映像集のDVDも付くという、ファン悲願の集大成BOXとなっています。
一般的には、おニャン子イチの美貌で「夕やけニャンニャン」ブームに拍車をかけた立役者として知られていますが、もともとはCBS・ソニーのSD系オーディション出身で、単なるアイドル志向ではなかった彼女。
夕ニャンでもキーボードを弾きながら歌っていたことでも分かるように、他のおニャン子たちとは一線を画す存在だったんですよね。
シナリオ通りの出来レースっぽくはありましたけど、おニャン子の中では先陣を切ってソロデビュー。オリエンタルテイストの「涙の茉莉花LOVE」と、夕ニャンオープニングテーマになったポルナレフ風の「恋のチャプターA to Z」をカップリングしたデビューシングルは、なんとオリコン2週目にして1位を獲得しました。
美声で音楽的素養も高く、後にはシンガー・ソングライターっぽい活動へとシフトしていきましたし、確かなボーカルを聴かせたことを思うと、何だか最初はワザとブリッコして下手くそに歌ったのではないかという気もしてきます。もちろんキンチョーもあったでしょうけどね。
CBS・ソニーでナベプロ、音楽的素養があって、フレンチをはじめとするヨーロッパイメージの楽曲…。今思えば古式ゆかしいアイドルの系譜に乗っ取った、まるで“80年代の天地真理”という感じ。
レコード会社、原盤制作会社ともにアイドルにかけてはパイオニアでしたから、粗製濫造の印象が強いおニャン子には珍しく、とても丁寧に作られた作品がそろっていると言えますね。
肝心のアルバムはと言いますと、むろん最初はアイドル的。85年のファースト「その子」がその骨頂で、いつもはパッパラパーなwith おニャン子でさえ理知的なリセエンヌに思えてくるその子の魅力が満載だぞ、と! ファーストアルバムらしくいろんな方向性が詰め込まれ、最初は秋元さんだと思ったシャレの効いた「向うDEギャルソン」にビックリしたことを覚えています。
卒業記念の超名曲「青いスタスィオン」を含む86年の「シエスタ」は名作ですが、ジレるようなボーカルが濃度を増していて、今聴くと演技過剰かも。
続くバブリーなパリ録音の「Mode de Sonoko」では、プロデュースにも名を連ねるなど、おニャン子の影は薄れ、音楽重視の正統派アイドルと呼べる仕上がりになっています。
4枚目の「Rouge et Bleu」ではぐっと渋くなり、ボーカルの陰影も凄みを増します。夕ニャンでヘラヘラ笑ってたその子ちゃんが想像できないほどで、どこか張りつめた雰囲気も。リカちゃん人形からアンティックドールに変身したみたいに、ある意味非常に退廃的で、クオリティが高い傑作ですね。もう疑うことなく、この人は我が道を行くに違いない、と思ったものです。
そして88年、初期のシングル曲を違う解釈でセルフカバーしつつ新曲も含んだ初ベスト「Dedication」で一度すべてをリセット、満を持して「Colors」をリリースしたその子。
ゴッキーの手を離れ、歌番組などにも出なくなり、アイドルからアーティストへの道を本格的に歩みますが、地味な方へ地味な方へと向かってしまい、アイドル・河合その子に惹かれていた多くのファンは、その孤高さゆえに後ずさりした人も多かったようです。
そのうちアレンジまで手がけてみたり、シングルを切らないようになったり、アーティスティックな活動はますますエスカレート。89年のLA録音盤「Dancin' In The Light」では半分近くが自作曲になって、サウンドの変化も見られる実験作です。今回のリマスタリングでは、このアルバムが一番変わるかもしれませんね。
と言いつつ、シンプルなピアノ1本の「海の足跡」が最も好きです。
そしてついに90年のオリジナルのラスト「Replica」は全曲自作曲によって構成。なんだか肩の力を抜いたというのか、何かを諦めてしまったのか、よく分からないけれど、憑き物が落ちたようにナチュラル。最後ということを決めていたような気がするボーカルに注目です。
このへんの流れは、河合奈保子の後期にも似ているような気がしますが、やや時代も違いますし、奈保子さんみたく基本的なトーン自体を変えたわけではないので、個人的にはそこまでの違和感はまったく感じませんが、皆さんはいかがでしょうか。
このほか、ボックスでは休業直後のベスト盤「sonnet」までをラインアップ。あらためて聴けば、少女の成長物語を見るような展開に、驚く人も多そうです。
こうして振り返れば、彼女の資質に感心するばかりだし、おニャン子がスタートでなければ、名を残せなかったかもしれないけど、きちんとしたシンガー・ソングライターになっていたかもしれませんね。
なお、ボーナストラックとしてはアルバム未収録のシングル曲や2002年の「 GOLDEN☆BEST 」で初お目見えとなったライブ音源はもとより、初商品化音源が6曲も入るようです。
待望の「青いスタスィオン」の元バージョン「もう僕は愛をさがさない」もついに収録されるほか、なんと未発表曲「地上のミルキーウェイ」も発掘されたそうです。昔から管理体制がしっかりしているナベプロ所属だったことに感謝したいものですね。
そしてスペシャルDVDはテレビ歌唱などの映像集。欲を言うなら自社制作著作番組をたくさん持っているナベプロの威力が発揮され、貴重映像がたくさん入ることに期待したいものですが…。
さらには特典としてA2ピンナップポスターも封入されるようですが、驚くのはまだ早い。このボックスのためにご本人の解説もブックレットに記載されるそうなのです。後藤その子さんが語る“河合その子”を早く読んでみたいという人は多いでしょうね。
というプレミアムな集大成ボックス、当然完全生産限定盤となっておりまして、 SonyMusicShop で買うと、先着購入オリジナル特典としてポストカードセットももらえるのだとか。
あの頃、日直おニャン子がカミながら棒読みしてたLP発売告知を思い出しますね。「はい、えーと、お近くのレコード屋さんで、早めに予約してくださいね。会員ナンバー12番、河合その子でした!」
(2009.7.4)