うたのココロは母心、聴けば命の泉湧く!?コンピ2作!
うたは、一生の友だち。どんなときも寄り添って、時には励まし、時には慰め、人生という長く険しい道のりをともに歩んでくれる存在です。そう子どもの頃から確信し、胸を張って言い切ることができると思っていますが、それは自分自身がうたによって救われてきたことを実感しているからなのです。
うたという、目には見えないけどやさしくて強い力のおかげで、これまでたくさんの困難をどうにか乗り越えることができたし、この先もなんとかやっていけそう。皆さんにもきっとそういう経験があるのではないでしょうか。
例えば、気持ちがへこんでしまった自分をどうにかして奮い立たせたい時には、すべてを肯定してくれる励ましソングや自分応援歌を。
あるいは、今日だけはと悲劇の主人公を気取って悲しみにひたっていたい時には、ドロドロした気持ちさえ美化し昇華してくれるバラードを。
そんな時にうってつけ、アラフォー青春時代のJ-POP、80年代から90年代のうたたちを中心に集めた2枚組コンピ2タイトルが登場。いずれも初回盤はスリーヴ仕様、ペアでそろえておきたい充実の内容といなっています。
まずは、“ヴァイタミン・サプリ”のような元気ソングを33曲収録した「 オーライ! 元気になれるうた 」。
プリプリの「GROWING UP-ode to my buddy-」から始まって、ハウンド・ドッグ「ff (フォルティシモ)」、Qちゃんの愛唱歌としてもおなじみのhitomi「LOVE2000」、徳永英明「夢を信じて」、THE 真心ブラザーズの「どか〜ん」、ウルフルズ「ええねん」、佐野元春「約束の橋」、岡本真夜「TOMORROW」などなど、懐かしのメガヒットだけでなく新旧の名曲がいっぱいです。
ラインアップ中、個人的に昔から聴くだけで元気になれるのは、イントロから勇気づけられる渡辺美里「My Revolution」とTM NETWORK「Self Control(方舟に曳かれて)」。2曲ともライブで泣いたことがあったりして…。TRF「CRAZY GONNA CRAZY」も収録されていますけど、何だかんだ言ってもコムロサウンドと若き日々がしっかりリンクしていることを実感します。
今回の収録曲の中で最も好きなのは、レベッカの「Maybe Tomorrow」。85年、高3の晩秋にみんなで回し聴き、ダビングし合ったLPのラスト曲。以来、ずっと寄り添ってくれているうたで、当時の友人たちとカラオケに行ったら、必ずと言っていいほど誰からとなく歌い始め、最後はみんなで合唱するうたです。
ほかにも、CKBの「あ、やるときゃやらなきゃダメなのよ。」は隣国の子どもみたいな体操がしたくなりますし、先ごろ旅立たれた川村かおりさんの「翼をください」は命の尊さをあらためて実感しそう。
須藤晃プロデューサーと共作した詩にブルッとくる玉置浩二「田園」も、よく聴いたナンバーです。またKANくんの「愛は勝つ」や東野純直「君は僕の勇気」、ジュンスカの「START」、田村直美「ゆずれない願い」など久々に聴くナンバーも心に響きそうな気がします。
一方、涙の浄化作用が期待できる“泣ける唄”コンピ「 メモリーズ〜涙あふれても 」には、32曲のバラードを収録。
プリプリ「M」、沢田知可子「会いたい」、BEGIN「涙そうそう」といった誰もが認める王道の泣け歌ももちろん入っておりますが、こちらは選曲が絶妙な上に甘い声のメンズが充実。
バラード屈指の名曲、TUBE「十年先のラブストーリー」を筆頭に、保志の「最後の雨」、圭三の「眠れぬ想い」という中西コンビや、崎谷健次郎「もう一度夜を止めて」、徳永の「レイニーブルー」やヒロミゴーの「僕がどんなに好きか、君は知らない」、T-BOLAN「離したくはない」などなど、90年代にはカラオケで多くのメンズたち酔いしれて歌ってたナンバーがてんこ盛り。
いやいや、カラオケの場合は「この人何曲続けて歌うつもり!」と青筋を立ててしまうところですが、ホンモノならばしんみりと聴き入ってしまいそうです。
また、意識したのかしないのか、鈴木聖美おねーちゃんの「Taxi」と弟マーチンの達郎ソング「おやすみロージー」といったセットでの収録も見逃せません。その中で目を引くのは、やっぱり聖子&明菜。記念すべきセルフ聖子のスタート作「きっと、また逢える…」は、正輝さんの胸によよともたれかかって涙する幻影が見えそうだし、明菜の「難波船」ではあの希有な情念に同化できるかもしれません。
なお、個人的にはFLYING KIDSの「幸せであるように」がナンバー1。社会人になったばかりの頃、いろんなことで毎日がしんどくかった時期に聴いて、オイオイ泣きじゃくったことを覚えていますが、マジで魂を揺さぶるような浜崎さんの歌と詩に大いに救われたのです。
そういう風に、傷ついた心を「大丈夫だから元気出しなよ」と優しく癒やし、「思い切り泣いてもいいよ」と抱きしめてくれる、うたたち。冒頭で一生の友だちみたいだと書きましたが、それを超え、生を与えてくれる母のような存在と言えるかもしれませんね。
そうやって悲しみに淀んだ心を涙で洗い流したら、雲間から差し込むひとすじの光が見えてきそう。それはきっと、明日を生きていけるパワーであり、自分が見失っていた進むべき道なのかもしれません。そんな奇跡のようなうたの力を、この2つのコンピなら実感できるような気がします。
(2009.8.14)