ヒットメーカーの作品集&トップギャランのシングル集!
前世紀末に出た筒美京平BOXを皮切りに、近年も各社から相次ぐ職業作家さんたちのアンソロジー。プロならではのお仕事が光る作品集は、作家さんの個性と才能、時代との関係性が刻まれていて、おなじみのナンバーでもまた違った味わいが深まること請け合いです。
たまに自家製で先生方の作品集などを作って楽しんでいるワタシではありますが、あの先生のはまだかな?とか、不謹慎ながらお亡くなりになる前にちゃんと出てほしい!などと思うコトが多々あります。
70年代屈指のヒットメーカーで、今年作曲家生活40周年をお迎えになった森田公一さんもその1人。CMでの実績もスゴイのになぜか出てなかったんですよね。と思っていましたら、このたびGOLDEN☆BESTシリーズに初の作品集が登場することになりました。それが2枚組の「 GOLDEN☆BEST 森田公一 」。
作品集と言っても、森田さんの場合は自作自演もなさっておられますので、他の作家さんのベストとは趣を異にする構成。1枚目がヒットコレクション、2枚目が自身が率いた森田公一とトップギャランのシングルコレクションとなっています。
森田先生のつくったうたを思い出すとき、誰でも気軽に口ずさめるキャッチーなメロディーといいますか、明るくほのぼのとした親しみやすいものが多いのですが、それはやっぱり天地真理ちゃんに書いた一連のヒット曲のせいでしょうか。
彼女のデビュー作「時間ですよ」で真理ちゃんを育てた久世光彦さんとコンビを組んだ最大ヒット「ひとりじゃないの」を筆頭に「虹をわたって」「恋する夏の日」など、真理ちゃんが記録したオリコン1位獲得作5曲のうち実に4曲の作曲を担当。
何かと制約が多かったという白雪姫としてのイメージを堅持しただけでなく中期の大ヒット「想い出のセレナーデ」などの哀愁路線も手がけるなど、オリジナル曲の多くを書き、真理ちゃんを押しも押されもしない国民的アイドルへと導いた功績は今さらいうまでもないでしょう。
今回は入っていませんが、ワタシの場合「恋人たちの港」「木枯しの舗道」「愛のアルバム」などの哀愁系が大好きだったりします。
そういえば真理ちゃんの最初のカムバックを応援し、自らのラジオ番組にレギュラー出演させたり、記者会見に同席(森光子さんも一緒だったっけか?)されていたことも懐かしく思い出されます。
真理ちゃん路線を継承したアグネス・チャンや桜田淳子にも「小さな恋の物語」「はじめての出来事」と、それぞれ唯一のナンバー1ヒットを提供。森田さんは初期のキャンディーズなども含め、70年代中盤のアイドルポップスを支えていくワケです。
あの優しい笑顔とかチリチリパーマも印象的ですが、それは「明星」の歌本ヤンソンの連載コーナーのお写真や、「スター誕生!」の審査員として目にしたお姿でした。きっとあの番組で職業作家陣のご尊顔を拝見し、親しみを覚えた人も多いのではないでしょうか。
前述の淳子はもちろん、同じ中3トリオの森昌子「記念樹」など、スタ誕から巣立ったアイドルに提供した作品もかなりの数に上りますよね。石野真子の最大ヒット「春ラ!ラ!ラ!」もそうですし、そのアイドルの代表作となるケースが多いのも森田さんならでは。
その歌手のチャーミングな部分をわかりすい形でクローズアップさせ、誰にでも愛される魔法をかける天才的な才能に感服することしきりです。
思えば小学校低学年の遠足のとき、バスでみんなが歌ったうたは、森田さんの作品が多かった気がします。
当時はどれも単調に思えたりして、すぐ飽きてしまうように誤解していましたが、それって実は歌いうたとしての完成度がスゴかったことの証明ですよね。
それと、ここには収録されていませんが、スタ誕出身・浦部雅美の「少し遠出をしてみませんか」「ふるさとは春です」みたいに心がホッコリするような、ほのぼのとしたフォーク&カントリータッチの佳曲も森田さんの十八番でした。
明星募集歌の岡田奈々「青春の坂道」などは今もって愛唱歌ですし、ワタシはその最高峰にあたるのがアグネスの「恋人たちの午後」だとずっと思っています。
スタ誕といえば、同じく審査員を務めた盟友・阿久さんとのコンビが多いことも忘れてはなりませんね。ともにメイン作家となった淳子らアイドル勢とはかなり毛色の違ったナンバーもお得意で、和田アキ子「あの鐘を鳴らすのはあなた」や河島英五「時代おくれ」といった、今や昭和の名曲と呼ばれるようになった曲たちがそれにあたります。
このように、ちょっと指を折るだけでもヒット作が多く、とても1枚じゃ収まりきらない感じですが、それはまたBOXが出ることにでも期待しましょうか。
栗田ひろみ「太陽のくちづけ」、リリーズの「水色のときめき」、榊原郁恵の初期「バス通学」や「わがまま金曜日」、80年代に珍しくトップ10ヒットを記録した石川秀美「恋はサマー・フィーリング」など、かわいくてシンプルなアイドルポップはいっぱいですしね。
なお、森田さんによる膨大なCMソングの代表的ナンバーとして、カオーフェザーの「さわやか律子さんの歌」がボーナス収録されているのもウレシイところ。
ホント流行りましたし、ボウリングのポーズとともに何度となく歌った記憶がありますが、後にコレが森田さんの作品だったことを知って驚いたものです。
さて、2枚目のトップギャランのシングルコレクションは、初のシングルベスト。創世記のトップ・ギャラン名義だった「恋のグァム島」「時は変る(キープ・クリーン)」といったCMソングから、ラストシングルにしてジュリーへの提供作のカバー「ある青春」などなど、レア音源や初CD化曲もてんこ盛りです。
そんな貴重音源も楽しみですが、必聴はやはり森田公一とトップギャランになってから、阿久さんとのコンビによる作品でしょう。
スゴイ設定の「アフリカの雪」や、コーラスが素敵で阿久さんも愛しい歌として挙げている「長距離バス」も素敵ですが、骨頂はCBS・ソニー時代、75年のレコ大作曲賞受賞曲「下宿屋」以降といえるでしょう。
この年のレコ大は、菅原洋一がカバーした「乳母車」も作詩賞を受賞、さらに淳子は「十七の夏」などで大衆賞に輝くなど、森田さんづくしのレコ大というムードでした。そして、それが翌年のNO.1ヒット「青春時代」へとつながっていったのですね。
「人間はひとりの方がいい」「想い出のピアノ」「過ぎてしまえば」などなど、阿久さんの詞はいつもとはまた違った思いやメッセージが強く綴られていて、ホントに胸を打たれる名曲ぞろい。後期の初CD化曲「北国放浪」「沿線名画座」などもシブイ作品です。
余談ですが、トップギャランに関して個人的には太田裕美さんと全国を回ったジョイントコンサートの印象が強く、“まごころ”と“ふれあい”がワンセットというスタイルが強烈に残ってたりして。
太田さんへの提供作「翔び立つ私」が、ファンの方のご協力でCD化された時はホントに感謝の気持ちでいっぱいになりましたっけ。世に出たものでは太田さん唯一の森田オリジナルですしね。
なお、今回のCDでは、解散後のソロシングル「愚か者の詩」や、30周年の時に結成された森田公一&トップギャランIIのシングル曲、モリケンこと森田健作千葉県知事とデュエットした異色作などシングルとして出た作品をめいっぱい収録。
おまけとして、もしかしたら全国民が知っていると言っても過言ではないロングランCM曲「青雲のうた」も入っております。
という森田さんの足跡を追った初の2枚組ベスト。森田さんの作品やトップギャランのファンだけでなく、70年代のうたがお好きな人ならば必携と言えるCDになるはずです。真理ちゃんファン、淳子ファンのあなたも、ぜひコレクションに加えてみてはいかがでしょうか。
(2009.11.4)