マユミティ70年代の名盤、Blu-spec紙ジャケBOX!
先般、待望のシングルコンプリートベスト「 GOLDEN☆BEST deluxe 五輪真弓 コンプリート・シングルコレクション 」が発売され(こちらでも紹介)、再評価や再発への期待が高まっていた五輪真弓さん。
なんと、このたびオーダーメイドファクトリーの廃盤再プレス対象商品として、初期アルバム11枚組のプレミアムCD-BOX「 MAYUMI PREMIUM 1972-1979 」が企画されました!
デビット・キャンベルのプロデュース作など、おそろしく豪華でクオリティの高い名盤を発表してきた天才ですし、CD普及期やCD選書全盛期にはオリジナルアルバムも当然のようにCD化され、いともカンタンに入手できていたのですが、十年ほど前ぐらいにそのほとんどが廃盤になるなど、とても残念な状況が続いていました。
そんな状況を打破するような今回の企画は、五輪さんが70年代にリリースしたアルバム11枚をデジタル・リマスタリングの上、Blu-spec CDで紙ジャケ復刻するというもの。
初期のフォーキー&ソフトロックな名盤から、おフランスの歌謡シャンソン路線へとシフトしていった佳作まで、「恋人よ」以前の作品群が高品質CDで手に入るチャンスなのです。
72年、衝撃のデビューを飾ったファーストアルバム「少女」と73年のセカンド「風のない世界」は、かのキャロル・キングも参加した超豪華なアメリカ録音盤。みずみずしい感性がほとばしる詞や、既に完成されているボーカル、丁寧に作られたサウンドは、和製キャロル・キングの称号そのもの。いや、マユミティの個性はそれを超えているのかも、なんて思ったりします。
「風のない世界」のLPは当時から身近にあったのに、ジャケが怖くて何年も聴かずにいたワタシですが、70年代の天才3人娘と言えばユーミン、アッコちゃん、マユミティの3人。中でも、最も才能豊かで、普遍性を持っていて、なおかつエバーグリーンなのは、実は五輪さんではないかと確信してたりしています。
そのへんは74年リリース、渋谷ジァンジァンでの実況録音盤「冬ざれた街—五輪真弓LIVE」を聴いても顕著ではないでしょうか。スマッシュヒットとなった「煙草のけむり」などのオリジナルもむろん素敵ですが、ジョニ・ミッチェル「青春の光と影」、キャロル・キングの「YOU'VE GOT A FRIEND」「IT'S TOO LATE」、ロバータ・フラックの「やさしく歌って」といったカバーが絶品。ライブ盤とは思えないほどのクオリティです。
歌唱力というか、ボーカリストとしての安定性という点でも、同時代の女性シンガー・ソングライターでは群を抜いています。それは、めったに人を褒めない印象があった淡谷のり子先生に歌唱を絶賛されたことでも分かりますよね。
ラリー・カールトンも参加、ザ・セクションのメンバーが勢ぞろいした74年の「時をみつめて」。そして、そのメンツを呼んで行ったジァンジァンのライブ盤にしてアートワークも素敵な「本当のことを言えば」。
ひとつの世界をスタジオレコーディングで完成させて、それをライブレコーディングで披露する、というのも五輪さんのパターンと言えそうですが、やっぱりブレがないのがスゴイ。世界で一流とされるミュージシャンと臆することなく渡り合うなんて、20代前半の女の子にできることじゃないですよね。ましてあの時代に。
続く75年に発表されたのは、オリジナルアルバムとしては初の国内制作盤「Mayumity うつろな愛」。“八王子の山ごもり生活”で完成された作品ということで、ホソノ御大も参加。いかにコレが最新のサウンドです、みたいな雰囲気もありますが、いかにもティンパンな感じのサウンドに仕上がっています。
そして、この中では唯一、未CD選書化だった中野サンプラザのライブ盤「The SHOW -Best Concert Album ’75」。今回復刻が実現されれば22年ぶりのCD化となりますが、何と言っても洋楽カバー(アナログではA面)が素晴らしい。ジャニス・イアンの「ジェシー」をはじめ、スティーヴィー・ワンダーの「オール・イン・ラブ・イズ・フェアー」、ブレッドの「ベイビー・アイム・ア・ウォント・ユー」、ジョニ・ミッチェルの「ビッグ・イエロー・タクシー」など。
自身のヒットメドレーも圧巻ですし、なんと西田佐知子の「アカシアの雨が止む時」も歌っています。
ここまで順調に進んできた五輪さんですが、大きな岐路にさしかかります。それがおフランスのCBSに認められ、ヨーロッパでもレコードが発売されたという77年のフランス語&日本語アルバム「えとらんぜ」。
パリで録音されフランス語で歌う「少女」「ジャングルジム」「煙草のけむり」には、アメリカンコーティングが消え去っていて、それはまさしく五輪さんの本質があぶり出されたシャンソン。
現地では大ヒットになり、アダモとジョイントリサイタルまで開いたという五輪さんの逸話が残っていますし、向こうではライブ盤も出たらしいですが、もしもその音源が収録されれば言うことないでしょう。
この後、それまでのベクトルの延長線上にあるマユミティ・イン・USA「蒼空(TODAY)」を発売。コラージュジャケットが翔んでいてクロスオーバー、フュージョン系という感じが最も色濃い異色作をリリースするですが、おフランスでの成功は、その後の五輪さんの方向性を決めてしまうのです。
78年にはシングル「さよならだけは言わないで」が大ヒット。これを受けたベスト盤(「MY SONGS」)はそれまでの最高セールスを記録。当時、レコ屋滞店時間が長かった小5のワタシもベスト盤が飛ぶように売れていた現場を目撃しましたが、新たなファンを数多く獲得し、おフランス・シャンソン歌謡路線が決定的となっていくんですね。
この「さよなら〜」を含む暮れに出たオリジナルアルバム「残り火」はもはやフォーク・ニューミュージックというよりモロ歌謡曲寄りと言っても過言ではない仕上がり。シングル「夜汽車」のジャケットを見てたまげた記憶もありますが、ビジュアル面もそっち方向へ行ったのですねえ。
この路線変更で一家言あるコアな音楽ファンが離れ、研ナオコあたりを聴く一般大衆が支持するようになったように言われますけど、どちらの路線も好きなワタシとしてはこれはこれで味わい深くて、大好きな世界なのです。実は「残り火」こそ個人的に最も好きなアルバムだったりします。
そして「えとらんぜ」以来のパリ録音となった79年の「岐路(みち)」は上質度と哀愁度を増し、冬ざれた感いっぱいのマダムチックな傑作となっています。先行シングルとなったオープニングの哀愁歌謡「合鍵」とラストのタイトル曲、リカットされた「約束」など、アダルトな名曲がいっぱいです。
ここまでの11枚が今回の復刻対象アルバムで、翌年の次作「恋人よ」で国民的ヒットを記録してからのことは、きっと皆さんご存じのことでしょう。
あのパブリックイメージが定着してしまって以降は、初期の作品は語られることも少なくなってしまいましたし、歌番組などでひどい扱い方をされたせいで過去の流行歌手みたいに扱われてしまっていて、とても残念に思います。なぜなら、五輪さんは正当に評価されなければならない才能と実績をお持ちのアーティストなのですから。
今回のオーダーメイド復刻、達成されるかどうか正直不安な気持ちもありますので、皆さん、何とかリクエストだけでもお願いいたします。
なお、当時の五輪さんのディレクターは天地の真理ちゃんやキャンディーズ、渡辺真知子さんの担当だったことでも知られる中曽根さんですので、この際、そのよしみでそれぞれのファンの皆さんにもご協力いただければ幸いです。投票だけでも!
(2009.8.6)