ヨーコ・ナガヤマ、壮大なアイドル時代BOX
ぼくの青春(とき)を止める少女がいた——今年でデビュー25周年。目下、6月に出た「瀬戸の挽夏」に全力投球の長山洋子さん。コレは「愛のままで…」の作家として再び脚光を浴びた音つばめの花岡さん書き下ろしということで、紅白への返り咲きを狙っている感じが見え隠れ。新曲発表会でもかなり力が入っていた様子でした。
で、その場で秋口に出ると本人の口から発表された、アイドル時代BOX。ちょっと遅れましたけど、無事リリースが決まったようです。それが「 25th ANNIVERSARY 長山洋子アイドルBOX(仮) 」。
84年のデビューから90年まで、いわゆるアイドル時代のシングル、アルバム曲を含む全85曲を完全収録ということですが、蓋を開ければなんだかすごいボリューム。今拝見している資料では、なんとCD10枚にDVDをプラスした11枚組なんですと!もっと気軽な感じを想像していたのでちょっとオドロキ。
なんだか間違いのような気もするし、内訳はまだ発表されていませんが、11枚のうち2枚は特典ディスクのような感じで、現役ならでは代表曲の新録バージョンを特別収録したボーナスCDと、初DVD化となる貴重な映像が入ったスペシャルライブDVDなのだとか。
となると残り9枚に、84年のデビュー曲「春はSA・RA・SA・RA/夢の色」から、90年のアイドル時代最後のシングル「If We Hold On Together/終わらないセレナーデ」までのシングル、「ときめき…アイ・ラブ・ユー」「ヴィーナス」「オンディーヌ」「トーキョー・メニュー」「F-1」といったオリジナルアルバム、さらにはベスト「ニューヨーコ・タイムス」のみ収録のナンバーや、いろいろ多いらしい各種バージョン違いなどを振り分けるのでしょーか。シングル集が3枚とすれば、6枚でアルバム集というのは辻褄が合いますかね。
念のためご予約の場合は、詳細をご確認ください。どうなるにしても、この枚数であるばらば、ブックレットなど付帯物の方にも期待したいところです。
もちろん大ファンにとっては念願のアイドル時代BOXでしょうし、コンプならではの魅力がいっぱいだと思いますが、そこまでコアじゃないという人や一般的なアイドルファンにとっては、敷居が高い感じでしょうか。シングル集のCD FILEシリーズ初期の2枚「 CDファイル 長山洋子1 」「 CDファイル 長山洋子2 」はまだ入手できるようですが、アイドル卒業後はこの時代のベストが一切出ていませんしね。
そういう意味で言えば今後、「ゴールデン☆ベスト デラックス」とかのラインアップに加わることを期待したいですね。シングルコンプみたいな、「CD FILE」の代わりにカタログに残るような集大成盤が手軽に買えるようになればイイなあと思います。
さて、ここでちょこっとアイドル時代のヨーコ・ナガヤマを振り返ってみましょうか。
ビクター少年民謡会出身というキャリアでも分かるように、当初からアイドル志向ではなかったヨーコさん。演歌でのデビューが決まっていたのに、美少女ぶりといろんな歌が歌いこなせる器用さからまずはアイドルで、ということなったというのはよく知られていますよね。演歌転向時のインタビューでも、何度も何度もその理由として答えていたように思います。
ただ、80年代半ばのアイドル界では、群を抜く歌唱力が逆にデメリットになった感も否めません。安定した歌声を武器に、いろんな路線に挑戦していきましたし、2年目からはレッツヤンでサンデーズのメンバーに仲間入りしたのだけど、なんとなく精彩を欠いていたし、伸び悩んだんですよね。バーニングの先輩・高田みづえのような路線がウケる時代ならもっと早くブレイクしていたのかもしれませんが…。
でも、カバーがとても多かったという点では、みづえ路線と言えますよね。事実、外国曲のカバーだというデビュー曲のB面はみづえ作品「乳白色のプリズム」のリメイクですし、第2弾もサザンオールスターズのカバー「シャボン」。バーニング&ビクターの先輩石野真子の名曲「ぽろぽろと」も歌っていますし、やっと上昇気流に乗ったシングルは黛ジュンのカバー「雲にのりたい」でした。
そして皆さんご存じ、同じビクターに所属しデビュー同期の荻野目ちゃんの後を追うようにユーロビートの波に乗ってブレイクした「ヴィーナス」をはじめとする一連のユーロビートは言うまでもないでしょう。また、アイドル時代ラストシングルの「If We Hold On Together」は、トレンディードラマの主題歌にもなったダイアナ・ロスの日本語カバーでした。
というように、カバーソングが多かったヨーコさん。ヒットをめざして試行錯誤した部分も確かにあろうかと思いますが、安定した歌唱力を持っていたからこそですよね。同い年という親近感はあるものの、個人的にさほど惹かれるアイドルではなかったのですが、レコードを買わせる歌手でしたね。
テレビで初めて聴いたクールな「シャボン」は、ハラ坊のオリジナルよりも切なさ度合いが高くて胸キュン。サザンファンの同級生にはバカにされましたが、発売前日に買いに行きました。また、大好きな久世ドラマ「花嫁人形は眠らない」の主題歌「雲にのりたい」も買いましたね。余談ですが長山ちゃんのこの歌を聴くと、キョンキョンの「小中市太郎くんかぁ」といういたずらっぽい声がオーバーラップします。
「ヴィーナス」はショッキング・ブルーのオリジナルが子どもの時から大好きでしたのでとても応援しましたし、次作の「ユア・マイ・ラブ/ミスター・マンデー」も良かった。カバーにしろ、オリジナルにしろ、聞き惚れてしまうほどの歌唱ですし、後期は特にいい曲が多いですよね。遠藤京子作「悲しき恋人たち」の素晴らしいこと。中島みゆき+筒美先生のコラボ「肩幅の未来/な・ま・い・き」も長山ちゃんのクールさが生きていますね。アルバムも「ヴィーナス」「トーキョー・メニュー」というユーロビート集はへヴィロテでした。荻野目ちゃんと共通のナンバーも多く、聴き比べをしたこともあったりして。
通して見るとカバー&オリジナル半々の「オンディーヌ」がアイドル・長山洋子を象徴していますね。
アイドル時代を封印してしばらく経った後、ザ・ベストテンの特番だったかで弾けるヨーコさんを見たのですが、居場所がある強みとでも言いましょうか、もともとすわってた根性がオープンになったせいでしょうか、自信たっぷりに歌い踊る姿に感動したものでした。
このボックス発売を機にアイドル時代が再評価され、今回のオマケのように企画物でもいいからたまにはポップスも歌っていってほしい、なんて思っています。
なお、演歌時代のボックスは2007年に演歌時代15周年を記念した「 長山洋子スペシャルCDボックス~長山洋子・歌心の旅路~ 」(こちらでも紹介)がリリースされています。
(2009.9.2)