祝40周年!透明感あふれる代表曲を網羅したベスト
トワ・エ・モワとしてのデビューから数えて、今年で40周年を迎えた白鳥英美子さん。V3で活動を共にした森山良子さん、山本潤子さんと並び、抜群の歌唱力と安定した人気を兼ね備えたフォーク三人娘として数えられることも多いですよね。
そんな白鳥さんの40周年を祝うかのようなベストアルバム「 GOLDEN☆BEST 白鳥英美子 with トワ・エ・モワ 」が、ご存じレコード会社共同企画・GOLDEN☆BESTシリーズにラインアップ。このシリーズの中では、EMIからトワ・エ・モワとしての「 ゴールデン☆ベスト 」も出ていますが、ソロとしては2005年に徳間ジャパンから発売された「 ゴールデン☆ベスト 」以来のリリースとなります。
前回は82、3年のジャパンレコード時代の音源がほとんどでしたが、今回は90年代後半のファンハウス音源がメイン。と言ってもソロだけでなく、再結成されたトワ・エ・モワのニューバージョンに加え、キング音源などの代表曲もしっかり収録。録音は新しくても、白鳥さんが40年もの間にわたって歌い続けてきたうたたちがギッシリ詰まったおトク盤。これまで各社から出ているいろんなベストでは太刀打ちできないような、一家に一枚の必携盤と言えるでしょう。
デビアス・ダイアモンドのCMで脚光を浴びた「アメイジング・グレイス」、“姉さん、事件です!”でおなじみ高嶋政伸主演のドラマ「HOTEL」の主題歌でもおなじみの「LET THE RIVER RUN」。伊藤つかさのポスターが印象に残っている映画「未完の対局」の主題歌にして作者の五輪真弓さんとの競作が話題となった「愛は夢のように」、「ファイナルファンタジーIX」のテーマソングとしてソロ初のオリコンベスト10入りした「Melodies Of Life」などなど、タイアップ曲がずらり。
73年にトワ・エ・モワを解散し、ソロシンガー山室英美子として活動していくかと思いきや、保育の道を志され世間を驚かせた白鳥さん。その間もCMソングを歌ったり、ジャパンレコードを離れた後、CMのお仕事が多かったと聞きます。白鳥さんの歌声がもてはやされるのはなぜなのか、その答えもこのCDに詰まっているような気がします。
また、トワ・エ・モワの名義で発表されたナンバーは、98年の再結成第1弾アルバムとして発表された「HARVEST—はじめに愛があった—」から9曲を収録。
再結成後にシングルとしても発売された「虹と雪のバラード/地球は回るよ」「はじめに愛があった/初恋の人に似ている」をはじめ、山上路夫+村井邦彦というトワ・エ・モワの世界を創出したコンビによるデビューヒット「或る日突然」、NHK「あなたのメロディー」から生まれた「空よ」、 トワ・エ・モワサウンドには欠かせない存在だった東海林修さん作の「地球は回るよ」、「きみの友だち」にソックリなヤマハ・合歓ポピュラーフェスティバル'71の入賞曲「友だちならば」など、数々の大ヒットはもちろんソフトロックファンの若い世代にも再評価されたナンバーがしっかり入っています。
いずれも'98バージョンとして新録音されたものなのですが、久方ぶりだったという芥川澄夫さんとのデュエットは、オトナの余裕というか、おおらかさというか、懐の深さが感じられる仕上がり。であるからして、オリジナルよりいいなあと思うのもたくさんあります。白鳥さんはソロでも素晴らしいですが、芥川さんの声と重なると、余計に引き立ちますね。
トワ・エ・モワって、最初は無理にくっつけられたデュオだったそうですが、こうして聴いていると、それも必然だったことが確信できます。
そして、ボーナストラックのように収録されている「海の街角」にも注目! アメリカから帰ってきて、マイカちゃんを出産した後の英美子さんがボーカルを務めた鴉鷺(あろ)名義で、77年11月に発表したファーストアルバムからのナンバー。
ちなみに、鴉鷺はご主人の白鳥澄夫さんが中心となった男女4人組で、和テイストの音楽を展開した伝説のグループ。白鳥さんの思いとしては声という楽器として参加したそうで、この曲は今回めでたく初CD化となっています。
という魅力凝縮の40周年ベスト。キャリアからすれば当然ですけど、来年還暦を迎えられるという白鳥さん。衰えを知らない確かな歌声に驚きますね。歌声から感じられるのは、マイペースの自然体でありながら、確固とした意志とスタイルを持ち、自分を律してきた人ならではの美しいストイックさ。歌を愛し、歌えることを喜んでいるのでしょうね。
もちろん、デビュー前からずっと一緒だったというご主人や、愛娘の白鳥マイカさんら家族との絆も大きく影響していることは間違いないと思います。
「アメイジング・グレイス」のヒットの後だったか、20年ほど前に白鳥さん自らが半生を正直に綴った「 風たちの輪舞(ロンド) 」というエッセイが出ていましたが、最近読み返してみたところ、彼女のまっすぐな性格やブレない生き方にあらためて共感を覚えました。そして、白鳥さんの歌声がなぜにここまで素晴らしいのかという秘密が少し分かったような気がしました。
読んでから聴くとあの歌声がさらに味わい深くなること請け合いですので、白鳥さんのファンでまだお読みになってない方がいらっしゃいましたら、ぜひご一読なさることをオススメします。
(2009.9.5)