80年代、90年代の大ヒットコンピ続編、DVDも!
もはやレコ屋での平積み試聴は当たり前、チャートの常連にもなっている80〜90年代の定番曲コンピ。
メーカーやレーベルの枠を超えて出せる時代ならではの選曲は、当時を考えると夢のようでうれしい限りなのですが、その反面、各社から百花繚乱、続発、乱発ぎみで重複する歌も多く、混迷感もあったりして…。チラ見したぐらいでは、パッケージ以外どこがどう違うのか考え込んでしまったりすることも多いようです。
いわゆる一般的なアラフォー、アラサーをメインターゲットにした王道コンピの場合、切り口やレア音源といった個性が重視されるマニア向けとは違い、いかにバランスがとれているかが是非の分かれ目のような気がします。
そういう点では文句なし、買っても失敗なしなのがソニーミュージックのクライマックス・シリーズではないでしょうか。
各シリーズとも、誰もが知っていて全部歌えて、それぞれの思い出がいっぱい詰まっているであろうナンバーがテンコ盛り。2枚組で収録時間ギリギリまで目一杯詰め込んでいながら、シリーズでは1曲もかぶっていない充実ぶりなのです。
そういうこともあって、どれもオリコントップ10をにぎわせてしまうという大人気。シリーズの続編を待ちこがれる固定ファンさえついていると聞きます。
ということで今回発売されるのは、前回(こちらで紹介)から約8カ月ぶりのリリースとなる続編。赤、黄、青に続く80年代「 クライマックス 80’s GREEN 」と、90年代の「 クライマックス 90’s ファンタスティック・ソングス 」の各2枚組2タイトルです。
今回も名曲ばかりをギッシリ収録、さらに1曲100円を切ってしまうほどのリーズナブルなプライスとなっております。
80年代の前者は、37曲を収録。 オフコース「YES-YES-YES」、井上陽水「いっそセレナーデ」、松山千春「恋 」、中島みゆき「ひとり上手」、CHAGE and ASKA「モーニングムーン」、THE ALFEE「星空のディスタンス」と大御所の皆さんも勢ぞろい。
コンピは難しそうなイメージが強いナイアガラ・トライアングルvol.2(大瀧詠一、杉真理、佐野元春の「A面で恋をして 」も入っていますし、アイドル勢も聖子の「瞳はダイアモンド」や明菜の「DESIRE-情熱- 」という両巨頭を筆頭に、薬師丸ひろ子「探偵物語 」、原田知世「天国にいちばん近い島」の角川組など上質感いっぱい。
ひろみの「哀愁のカサブランカ」やマッチの「愚か者」など、コンピからはワリと漏れてしまうメンツもしっかり入っているほか、キヨシローを悼むRCの「雨あがりの夜空に」も収録と、バラエティー豊かな時代だったかを思い知らされますね。
一方、90年代の後者は31曲。ユニコーン「すばらしい日々」、THE BOOM「風になりたい」とバンドブームを生き残った実力派たちから、シャ乱Q「シングルベッド」、ウルフルズ「ガッツだぜ!!」などの関西系、DEEN「このまま君だけを奪い去りたい」、WANDS「世界が終るまでは…」といったビーイング系、本物のポップを感じさせたL⇔R「KNOCKIN' ON THE DOOR」、社会現象みたくなったThe虎舞竜「ロード」などなど、バンド系男子たちが強い強い。
また、アイドルの系譜が途切れてしまっただけに、それらしきものが少ないのも興味深いところ。もはや自作しアーティストになってしまった聖子の「あなたに逢いたくて〜Missing You〜」や、アイドルと言い切ってしまうには異色の森高「渡良瀬橋」、新しいカタチのパフィー「これが私の生きる道」というあたりしかいないですもんね。
ほかにもMISIAの「つつみ込むように…」、太田裕美もライブで歌ったことのあるYEN TOWN BANDの「Swallowtail Butterfly〜あいのうた〜」と今日まで続くディーバ系が顔をのぞかせたり、今井美樹&布袋寅泰のおしどり夫婦の「Miss You」「スリル」が そろって収録されたりているのも見逃せません。
いずれにしてもタイアップが当たり前で、カラオケで歌うためにシングルCDを買った、なんていう時代だけに、耳なじみのあるメガヒットの多いこと。個人的にはやっぱり80年代に愛着がありますが、90年代もすべてソラで歌えるほどでした。
なお、今回も初回盤は限定仕様として特製スリーブケース付き。スリーブケースにメッセージを書いて贈り物に…というのもオススメです。ただし、すぐ売り切れちゃうと思いますのでお早めに。
余談ですが、先日、大手ショップで初回盤をレジに持って行たはずなのに、家に帰って開けたら通常盤だった…という話を聞きました。これって、おそらくプロとは呼べない店員さんがレジ内のストックを確認せずそのまま出しちゃったせいだと思われます。なので、これに限らず初回盤が欲しい場合は、受け取るまで小姑のようにチェックすることをお忘れなく!
それと、今回大注目したいのが同時リリースとなる待望のコンピDVD「 クライマックス DVD 」。音楽は聴くより見る時代と言われたように、80年代後半からは各アーティストがこぞってビデオクリップに力を注ぎました。ケーブルテレビやBS以外でもプロモーションビデオを丸々流す番組もたくさんありましたし、個人的にもスペースシャワーTVなんかは、BGVとしてよくつけっぱにしていたものです。
今回のDVDはクライマックスシリーズに収録された人気曲の中から厳選して収録されたものだとか。レアなクリップもありそうだし、映像付きで見ると、あの頃が余計にリアルによみがえってきそうですよね。
人って自分がイチバン輝いていた時代を永遠に忘れない生き物だと言いますし、その頃の甘く楽しい思い出や、そばで流れていた歌たちは辛く苦しい時に励ましてくれる存在になってくれますよね。
仕事の責任が大きくなったり、家事育児に忙しくなったりすると、余裕がなくなり、自分自身のことは二の次になってしまうのは必至だし、ますます世知辛い世の中にあっては、歌なんか日常から遠い存在になってしまうのも当たり前かもしれないけれど、やっぱり音楽は美しい力。
もうダメだ、力つきてしまったと思う時でも、耳を傾けるだけで、永遠に枯れない泉のごとく魂の奥底からパワーが湧き上がってくるような、美しい力。
これをお読みの皆さんはもう十二分に実感なさっていると存じますが、もし周りにそうじゃない方がいたら、ぜひこういうコンピをプレゼントしてほしいなと思います。
うたを通じて、あの頃の自分と向き合えば、それぞれに抱えている大変な荷物さえ少しは軽くなるのでは…なんて本気で信じているのです。
(2009.6.10)